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イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について  作者: のびろう。
第7章《るる☆るん!》の初恋研究レポート

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『好きになっちゃダメ?――るるの覚悟と、コウの声』

「それじゃ、今回のコラボ内容――“おままごと恋人ごっこ配信”でいきましょうか」


神代マネージャーが軽く眼鏡を押し上げて、プロジェクト資料をテーブルに並べる。

ひよりの事務所《LinkLive》と、わたしの所属する《PiyoPiyo Production》の合同企画。

ターゲットはキッズ層~ライト層のV視聴者。コンセプトは“日常にひそむドキドキ”!


「おままごと、ですか……?」


思わず声が裏返ってしまった。

会議室の長机の向こう側には――


「ひさしぶり、るるちゃん」


あの人が、いた。天城コウさん。

“レイ”としての姿じゃなくて、また“コウさん”として、わたしの前にいてくれた。


(うわ、ダメ……またドキドキする……)


「恋人ごっこ」とか言われたら、なおさら。

しかも演じる相手が“あの声”の持ち主だなんて、もう心臓がもたないよ。


「台本は大まかな流れだけにして、あとはアドリブでやってもらう予定です。二人とも即興得意ですし」


神代マネの言葉に、ひよりちゃんがニヤっとする。


「ねぇねぇ、るるちゃん。コウとおままごと、楽しみ?」


「えっ、あっ、えっと、あの、はいっ……た、たのしみですっ」


「めっちゃかしこまってるじゃん……かわいい~!」


「ひより、それやめろ」


笑いながら注意するコウさん。その声にまた、胸がきゅってなる。


 


――そして、いよいよ配信当日。


「じゃ、テスト音声入りまーす。マイクチェックどうぞ」


「るる、いきまーすっ。マシュマロチェック、わるくなーいっ☆」


「レイです。問題なし。……それじゃ、今日もよろしく」


……その声。

やっぱり、鼓膜にふれた瞬間、体が反応しちゃう。


(やば……これ、もう“反射”じゃん)


キッズ枠のるると、癒し系イケボV“レイ”との特別コラボ。


企画名は――《もしも、Vカップルがルームシェアしていたら。》


セットはピンクのクッションだらけのリビング。

うさ耳パジャマのるると、だるけたスウェット姿のレイくん。

開始5分で視聴者コメントが溢れ返る。


「るるちゃんのテンションとレイくんの声の温度差やば」

「初手“おかえり”はズルい」

「あれガチで耳が溶ける声」

「うさぎハンバーグ尊い」


「……ただいま、るる」


「お、おかえりなさいっ! るるね、今日は頑張ってご飯作ったの!」


「ほんと? うれしい。……なに作ったの?」


「うさぎハンバーグと、にんじんのきんぴらと、お味噌汁っ!」


「レイくん、表情変えずに甘い台詞言うのやめて」

「もう結婚して」

「コウじゃなくてレイくんだってのに恋しそう……」


泡ハンドソープのくだり、レイの膝枕シーン、

寝息の音までシンクロする“お昼寝ごっこ”ではコメント欄が暴走。


「これASMRタグつけていいレベル」

「BGM消して、心臓の音聞かせて……」

「子どもにこんなガチ恋されてたら死ぬ」

「トレンド入り確定」


そして“プロポーズごっこ”で――


「もし、10年後もこうしてたら……ほんとに、結婚しちゃう?」


「……うん。絶対する」


「????(語彙力喪失)」

「心臓が止まった」

「結婚式の実況もこの2人でやってくれ」


その夜――X(旧Twitter)で《#レイるる恋人ごっこ》が世界トレンド5位入り。

切り抜きは5分で10万回再生、同接はピークで6.2万。


配信終了後のスタジオ控室。


「……はぁ。なんで、あんな自然にできちゃったんだろ」


自分でもわからなかった。

演技のはずなのに、心がそのまま言葉に出てしまっていた気がする。


そこへ、PiyoPiyo事務所のマネージャーからチャットが飛んでくる。


《おつかれさま。事務所LINE、今すごいことになってるよ》

《るるの自然体、過去一って絶賛されてる。動画チームが即切り抜き出すって》

《でもなにより、視聴者が“素で恋してる感”に反応してるのがすごい……》


(素、かぁ……)


そして、ひよりちゃんからもメッセージ。


《正直、やられた感ある。うちのコウ、あんな顔初めて見たもん》

《でも、すごかったよ。るるちゃん、マジでヒロインだった》


ヒロイン、なんて。

照れくさいけど……ちょっとだけ、うれしかった。


 


その夜。わたしは、ベッドの中でもう一度通知を開いた。

震える指で、あの人にメッセージを送る。


《るる:今日、ほんとに楽しかったです……少しだけ、話せますか?》


――ピッ。


「……コウさん?」


「うん。るるちゃん、大丈夫?」


「うん……あのね、今日の配信……ずっと、ドキドキしてた」


「即興だったのに、すごく自然だったね。るるちゃん、演技力すごい」


「……違うの。あれ、演技じゃなかった」


「……うん?」


「“おかえり”って言われたとき、ほんとに嬉しかった。

“好き”って言われたとき、胸がぎゅってなった。

だから、気づいちゃったんだよ。るるね、たぶん……コウさんのこと、好きだって」


夜の通話は、静かに響いていた。

でもその静けさが、ちゃんと気持ちを受け止めてくれているようで――


「……でも、今は言わない。まだ“るる”は子供かもしれないから。

でもいつか、ぜったい……ぜったいに追いつくから。そのときは、ちゃんと聞いてね」


「うん。待ってるよ」


その一言で、また鼓動が跳ねた。

恋は、始まったばかり。


そして、わたしの“初恋研究”は――もう、後戻りできないところまで来ていた。

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