表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について  作者: のびろう。
第6章 イケボ男子とお嬢様V?ドキドキ即興コラボ朗読劇!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/195

幕間デート?:真白 みなと編 『泡の向こうに、君がいた』

大学の昼休み、講義の終わったキャンパスの中庭。私は芝生に座ってイヤホンをつけたまま、ぼんやり空を見上げてた。


「よっ、みなと」


「ん、コウ?」


声の主は、同じ大学の男子――天城コウ。Vの裏側じゃ、あんなイケボでみんなを虜にしてるくせに、リアルじゃふつーの大学生してる。


……いや、ふつーよりは、ちょっとだけ、カッコよすぎるかも。


「この前の配信、助かった。ほんとありがとな」


「べ、別に? あたしも楽しかったし」


って、ちょっと待って。なに急に改まってお礼とか。顔、見られたくない。今、ぜったいニヤけてる。


「でな、なんかお礼したくて。何がいい?」


「――え」


……やば。言うチャンスきた。ずっと前から、これを言おうか迷ってて、でも勇気出なくて、でも今逃したら一生後悔するってやつじゃん。


「えーと、その……お台場の、ナイトプール。行ってみたいなーって……」


「プール?」


「……ダメ?」


コウはちょっと驚いた顔をしたけど、すぐに笑った。


「いや、いいよ。じゃあ週末、行くか」


その返事を聞いて、私はイヤホン外すのも忘れて、心の中でガッツポーズした。


──やった。ついに、ふたりで、お出かけ。


週末。お台場のシティホテル。

ルーフトップのナイトプールは、想像以上にロマンチックだった。


ライトアップされた水面、ゆらめく照明、静かな音楽……まるで映画の中の世界。


「……おまたせ」


私が選んだのは、ちょっと大胆すぎるかもしれないビキニ。ホルターで背中がぱっくり開いてて、ウエストも思いきって出してみた。


鏡の前ではめちゃくちゃ悩んだけど、でも――


(見てほしい。……コウに)


「お、おお……」


その反応、悪くない。ていうか、目そらした?


(え、照れてる? かわい……いや違う違う、私なに考えてんの)


「似合ってる」


小さな声でそう言ってくれたその一言で、胸の奥がきゅっとなった。


プールサイドでしばらく足を水につけて話したあと、ふたりでジャグジーに入った。


泡がぽこぽこと音を立てて、視界が柔らかく曇っていく。


コウの隣に座ると、ちょっとだけ肩が触れる。

それだけで、鼓動が跳ねた。


(近い。……やば、どうしよう)


「静かだな」


「うん。でも……なんか、こういうのもいいかも」


コウと話してると、いつもより素直になれる気がする。配信とか、Vの話とか、どんな悩みでも、彼にはつい話しちゃう。


だから今日も、ちょっとだけ本音を言ってみた。


「ねえ、コウ。こういうの、またやってもいい?」


「うん。俺も楽しいし」


(ズルいなぁ、そういうとこ……ちゃんと返事くれるから、もっと期待しちゃうじゃん)


そして、事件は起きた。


ジャグジーの泡が一瞬強くなったなって思った、その瞬間――


「え、あ、やば……!」


背中のホルターが、外れた。

ビキニの上が、ずるっと下がる感覚。


パニックになって、反射的にコウの胸に飛び込んだ。


「わ、ちょっ……!」


「み、見ないでっ!! おねがい、ほんと、やばいから!!」


泡の中で、胸を押し付けたまま抱きついてるって状況に気づいて、顔が一瞬で真っ赤になる。


(なにやってんの私っっ!!)


でも、コウは動かず、穏やかな声で言った。


「大丈夫。見てないし……動かないから」


その言葉が、静かに胸に染みた。


(……ほんとに、ズルい)


ふるえる声で、私は言った。


「……このままでも、いい?」


「……うん」


泡の音が、耳の奥で遠くなる。


こんなふうに人と寄り添ったの、初めてかもしれない。


ドキドキして、息もできなくて、でも逃げたくなかった。


(もっと、そばにいたいって思った。もっと、知ってほしいって思った)


更衣室を出て、ロビーのソファに座った。

夜景がきらきらして、現実じゃないみたいだった。


「……今日は、ありがとね」


私がそう言うと、コウはいつもの調子で「こちらこそ」と笑った。


なんか、ずるいな、ってまた思った。いつも通りで、優しくて、だけどこっちの気持ちには気づいてない。


でも――だからこそ、言ってみた。


「今度また来るときはさ。……ふたりじゃないとヤだ」


言いながら、手のひらが汗ばむ。


「じゃあ、またふたりで来ようか」


その返事を聞いたとき、私の中で何かがぽとりと溶けた。


(泡の中で隠した気持ちが、ちゃんと届いた気がした)


立ち上がる彼の背中を追いながら、小さく呟く。


「今日のこと、夢ってことにしてもいいけど……次の夢も、あんたと一緒がいい」


その声が届いたかどうかはわからない。

でも、コウはふり返って、ほんの少しだけ微笑んだ気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ