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イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について  作者: のびろう。
第5章 イケボの向こうに、本当の“僕”がいる

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エピローグ「それぞれの夜、ひとつの灯」

――天城ひより

お兄ちゃんの、配信を見終えたあと――

わたしは、イヤホンを外せなかった。まだ、鼓膜に残る“あの声”を、手放したくなかった。


《……今日から、君の夜を照らす灯りになる。レイ=アマギです》


最初に聞いたとき、震えた。心が。体が。

だってそれは――


(わたしが、誰よりも先に知ってた声だったから)


そう、“ひよこまる♪”の中の人として、代わりに配信してくれてたあの頃。

お兄ちゃんの声は、わたしの声だった。でも、今日は違った。


あの声は、“お兄ちゃん”のものだった。

誰の中でもない。誰の影でもない。

天城コウとして、レイ=アマギとして――ちゃんと前を向いて、歩き始めてた。


(……すごいなあ、お兄ちゃん)


ちょっとだけ、悔しい。

ちょっとだけ、寂しい。


わたしが、一番近くで知ってると思ってたのに。


でも。


(でも、やっぱり……)


かっこよかった。

何度だって、好きになれるくらい。


だから、次に名前を呼ばれるときは――

“妹”じゃなくて、“ひより”として、呼ばれたいなって思った。


……ねえ、お兄ちゃん。わたし、頑張るよ。

ちゃんと、隣に立てるように。


 


――不知火夜々

「……ふぅ」


スマホの画面をスリープにして、静かにソファに身を沈めた。

レイ=アマギ。初回配信。


冷静に見れば、演出は王道で、言葉選びも安定していた。

コメント欄の盛り上がりも上々、想定以上の初動。


――でも。


(あの笑顔、あんなに素直にできるんだ……)


普段、私たちの前ではちょっと気を遣いすぎて、遠慮して、間を読んで、…そういうとこばかりだったのに。


ルイさんと話してるときの表情は、少しだけ違って見えた。


(ほんとは、ずるい人なのかもね)


たくさんの女の子に好かれて、全部に優しくして。

でも、肝心なときにはちゃんと、自分の道を選ぶ。


……それでも。


そんなまっすぐな背中が、悔しいくらい好きだった。


「……次は、わたしの番かな」


ひよりちゃんも、みなとも、メグも、きっと同じ気持ち。

だからこそ――負けたくない。


レイの隣で、夜を一緒に作れる存在。

“灯”なんかじゃなく、もっと近くで“支える”存在。


それに、私はもう知ってるから。


あの人の“迷った声”と、“覚悟の声”の違いを。


 


――真白みなと

(すごかった)


素直に、そう思った。


一音目から、空気が変わった。

沈黙の“間”も、声の震えも、全部が計算じゃなくて――生きてた。


(もう、“演技”じゃなかったね)


初めて見た、“彼自身”の配信。

どんなに完璧な音声処理よりも、整えられた演出よりも、そこには“感情”があった。


(あれは、私ができないことだ)


私は、声の構成を理論で捉える。抑揚、周波数、リスナーとの心理的距離。

でも、コウくんは――それを“想い”で飛び越えた。


……羨ましい。


でも、だからこそ。


(負けたくない)


誰よりも“論理的”に、彼の“心”に迫りたい。

技術でも、努力でも、“感情”に届く配信を目指す。


そして、気づいてしまったから。


あの声を、もっと聞きたいって思ってる自分に。


 


――葛城メグ

「おっっっっしゃああああああ!!!」

夜中の自室で、思わずガッツポーズ。


レイくんのデビュー、最高だった。


あのテンポ! あのトーン! あの挨拶のセリフ!

あれ、絶対バズるやつ! いやもうバズってる!!


『君の夜を照らす灯りになる』

なんだよその告白セリフ!! 尊死!!!


(ってか中の人、ガチで中身の人すぎてヤバい……)


私の編集案、OPナレーション、一部採用されてたよね!?

超うれしい!!


――けど。


「……あれ、ルイさん経由で決まったんだよね」


あの人、かっこよすぎん!?

レイくんの背中押してくれて、アドバイスしてくれて、最後には飯誘うとか……ズルすぎだろ!!


なんか……私たち、置いてかれてる気がする。


(いや、ダメだ!)


恋も勝負だもん!


私も、レイくんに“灯”って呼ばれるだけじゃなくて――

“お前の隣、私が一番似合うだろ?”って言いたい!!


だから今度のコラボ、絶対私も出る!!


ルイさんに負けてらんないし、他の子たちにも絶対負けないっ!!


ぜーんぶ、推し活で鍛えてきたから!

あとは、ぶつかるだけ――だよね?


 


* * *


それぞれの部屋、それぞれの夜、それぞれの気持ち。


“レイ=アマギ”の声は、確かに届いていた。

けれど、それは“始まり”を告げる鐘。


彼の配信は、ただのスタートではない。

恋の、友情の、未来の、交錯点。


そして――


次に配信のカメラが回るとき。

ヒロインたちの想いは、もっと近く、もっと強く、もっと複雑に――

彼に迫っていくことになる。


 


――彼の灯を、一番近くで照らすのは、誰か。


 


それは、まだ誰にもわからない。


けれど、それぞれが信じている。


“次”は、自分の番だと。

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