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イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について【7万PV感謝】  作者: のびろう。
第18章『ボクとイケボと恋心と!』〜恋愛シミュ実況が修羅場すぎて泣けてきた〜
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配信開始――想定外のときめき

「マイクチェック入ります。レイさん、橘さん、スタンバイOKです」


スタッフさんの声がモーションキャプチャールームに響いて、ボクの背筋がびくっと跳ねた。


VR用の全身スーツに着替えて、ヘッドマウントディスプレイをセットする。手足のセンサーを確認しながら、深呼吸。何度しても、心臓のバクバクは止まらなかった。


「……ど、どうしよう。足が震えてる……」


「大丈夫だよ、いのりちゃん。ほら、手、貸す」


不意に差し出された手は、あたたかくて、やさしくて、落ち着いた声と一緒にボクの耳に届いた。


「レ……レイ、くん……」


正面に立つ彼は、黒髪で、長身で、イケボで……って、それは“アバター”の話だけど、リアルのレイくん――天城コウさんも、背が高くて、無駄に爽やかで、しかも笑顔が反則レベルでやさしい。


「緊張してる? でも、今日は“彼氏役”でしょ? 君をリードしなきゃね」


「~~~~っ! ふ、不意打ちはズルいってばぁ……!」


恥ずかしくて俯いてしまう。なのに、VRゴーグルの内側から聞こえる“あの声”がまた、反則。


この人、声だけでヒロイン量産できるって、マジで……!


「では、本番三秒前です。3、2――」


ディスプレイの中で、観客席のライトがパッと灯った。コメント欄が一気に流れ始める。


「うわ、ついにこのコラボきた!」

「レイくん×いのりちゃん=最高」

「この身長差、公式案件でしょ」

「合法で甘やかしたい……」


開始直後からリスナーの熱が高すぎて、ボクの汗腺も全開だった。


「みんなーこんにちはっ! 《Inori∞Link》(いのりんく)ですっ! 今日はなんとなんと! 初の、レイくんとのコラボ配信でぇ〜〜すっ!」


ぎこちなくも、なんとか元気に挨拶を決めるボク。


続いて、隣でレイくんがマイク越しに、あの低音ボイスで静かに挨拶した。


「やあ、こんにちは。《レイ》だよ。今日は特別なコラボということで、ちょっと緊張してるかも。でも――いのりちゃんと一緒なら、きっと楽しくなる。ね?」


「しょっぱなから破壊力やば」

「いのりちゃん照れてるwww」

「レイ、ガチ彼氏ムーブじゃん」


「はわわ……っ! そ、そんなこと言われたら……その……ボクの心臓が先にゲームオーバーに……!」


うわあああ、今のセリフ、何点!? 配信者的にアウトじゃない!? むしろリスナーの反応がどんどん盛り上がってる!


ゲームがスタートすると、背景は静かな学園の放課後。ボクが演じる“ヒロイン”は、転校してきたばかりの内気な女の子。レイくんの役は、同じクラスの完璧系先輩キャラ。


レイ:「……よう、新入生。君、ひとり? ここ、誰もいないよ。……ああ、ごめん。脅かすつもりはなかったんだ。ただ、気になっただけ」


う、う、うそでしょ……その声……。


「初期イベントの破壊力えげつな」

「耳が幸せ……」

「こんなん告白される準備しとけってやつじゃん」


心臓が跳ねた。耳が熱くなる。背中に汗がにじむ。


「え、ちょ、今の……心臓止まるかと思った……!」


自分でも驚くくらい、声が裏返った。


隣で笑い声がする。


「ふふ、ごめん。でも、演技だから。ね?」


……それが一番ズルいんだよ、レイくん。


“演技”って言いながら、そんな風に笑うの、反則だから。


イベントは進行し、学校帰りのコンビニデート、文化祭の準備、告白イベントへの伏線など、次々と“甘酸っぱいイベント”が展開されていく。


レイ:「……君の笑顔、初めて見た気がする。なんか、嬉しいな」


レイ:「手、出して。……ほら、冷たい。ちゃんと、温めてあげる」


レイ:「“付き合う”って、たぶん、こういう時間を重ねることだと思うんだ。……違うかな?」


やばい、全部が刺さる。突き刺さってくる。


ボク、乙女ゲームなのに、ほんとに恋しそうになってるって……どうするの!?


(っていうかこれ、演技……なんだよね? レイくん、全部“仕事”でやってるんだよね?)


わかってるのに、苦しい。


そして事件は起きた。


「選択肢イベント、入ります!」


スタッフの声で一瞬だけ映像が切り替わる。


画面には、選択肢が3つ。


1:「ずっと、そばにいてもいいですか?」

2:「今の気持ち……伝えてもいいですか?」

3:「これって、恋……なんですか?」


コメント欄がざわつく。配信上の視聴者アンケートで、1が急上昇していく。


「1一択!!」

「1しか勝たん」

「レイの返事が気になる……!」


「……いのりちゃん、選択肢はどれにする?」


「えっ、ボクが、ですか!?」


「うん。いのりちゃんなら、どれを選ぶ?」


レイくんの声が、まっすぐで、優しくて――怖いくらいに、ボクを見ていた。


(えっ、ちょっと待って……レイくん、今の声……演技、じゃなかった気がする……?)


胸の奥が、ざわりと揺れた。


――この恋、ゲームの中だけじゃ、終わらないかもしれない。

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