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イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について【7万PV感謝】  作者: のびろう。
第18章『ボクとイケボと恋心と!』〜恋愛シミュ実況が修羅場すぎて泣けてきた〜
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プロローグ:恋愛ゲームって、そういう意味じゃないから!

「……で、今回の企画なんだけど――いのりちゃん。君と、レイのコラボでいくわ」


LinkLiveの会議室に響いたそのひと言が、ボク――橘いのりの心を見事に凍らせた。


「えっ、レ……レイくんと!? ど、どどどんなコラボですか!? 歌? トーク? それとも――」


思わず早口が暴走する。対する神代マネージャーは、持っていた資料をパタンとテーブルに置くと、あのクールな笑みで言った。


「恋愛ゲーム実況。《君に、もう一度恋をする》。恋愛シミュレーションの金字塔ね。乙女ゲームの王道中の王道。二人でプレイして、進行も台詞も全部リアルに“演じて”もらうわ」


「………………はい?」


一瞬、脳が再起動した。


「こ、こいれん……いえ、こいあい……えっと、れんあい、げぇむ……?」


「そう。プレイヤーキャラはもちろんいのりちゃん。そして相手役のボイスをレイが担当。舞台はLinkLiveのモーションキャプチャースタジオで撮るから、リアルな動きも拾って“動くカップル”として配信できるわ」


終わった。


いや、始まったんだ。ボクの、人生最大の危機が。


「で、でもっ……それ、すごく人気あるゲームですよね!? めちゃくちゃリアルだって聞いたことありますけど、演技も……キスシーンとか……あ、あったような……!?」


「あるわよ? もちろんそこは“視聴者の選択次第”で分岐するけど」


神代さんは、それはもう楽しそうに笑ってる。ズルい、完全に仕掛けてきてる顔だ。


「ちょ……ちょっと待ってください……レイくんって、あの、レイくんですよ!? 超イケボで、いつも穏やかで、なんか近くにいると心拍数バグるし、それで、しかも……リアルで“演技”なんて……!」


「演技でしょ?」


「そ、それはそうなんですけどぉおおおお!!」


心の中で叫んで、うつむいたまま資料を受け取った。


“中学生にやらせる仕事じゃないですぅ……”と涙目で抗議したかった。でも、プロとして受けなきゃ。うん、ボクは“演者”なんだから。


「やります……」


小さく、でもはっきりと、答えた。


その瞬間、神代さんの笑顔が“最高に面白いことが起きる”って顔に変わった気がしたのは……多分、気のせいじゃない。


収録前夜。


帰り道。電車の中で、ボクはスマホのイヤホンをつけたまま、何度もある音声を聴いていた。


《――君が笑ってくれるなら、それでいいんだ。ボクは、ずっとそばにいる》


ああああああああああああああああ!!


耳が! 心臓が! 脳が!


全部がレイくんに持っていかれるぅうううう!!


これは、前にLinkLiveの合同ドラマCDでボクとレイくんが共演したときのセリフ。ほんとは練習用だったけど、こっそり保存してしまった。


レイくんの声は……甘くて、優しくて、あたたかくて、でもどこか寂しげで。


まるで、ボクだけを見てるみたいな、そんな響きがする。


「……ボク、耐えられるかな。演技で、ずっと“彼氏役”のレイくんと、ふたりきり……?」


呟いた自分の声が、ひどく震えていた。


“ただの演技”。そう思いたいのに。


でも、どうしよう。


もしかしたら、ほんとに“好きになっちゃう”かもしれない――


翌日、LinkLiveスタジオ本館の地下。


モーションキャプチャールームには、二体のアバターがテスト表示されていた。


ひとつは、うさ耳付きの小柄な女のボク。もうひとつは、黒髪で長身、スーツをびしっと着こなした、理想の彼氏感100%の王子様レイくん


控室でスーツ姿のコウくん(※本人)を見た瞬間、もう無理かと思った。


「よ、よろしく……お願いします……」


「こっちこそ、楽しみだね。いのりちゃん」


優しく微笑まないでぇぇえええ!!


どうしよう。ボク、まだ収録前なのに……もうすでに、心臓が、爆発しそうなんですけど……!


まさか、ここから“人生初の告白イベント”が始まるなんて――その時は、まだ知らなかったんだ。


演技のはずの恋が、“ほんもの”になるなんて。

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