『バーチャル縁日、大崩壊!?』
LinkLive村——それは希望と夢とソースの香りに包まれた、楽しい楽しいバーチャル縁日。
……だったはずなのだが。
「やばいよ……これ、完全に祭りじゃなくて“事案”だよ……」
焼きそば屋の前で、レイが呆然と立ち尽くしていた。
チョコバナナ入り焼きそばが大ヒットを記録し、屋台前には「味のカオスを求める冒険者たち」の行列。
その横では、自走する《るる☆るん!》の射的屋台が風鈴を鳴らしながら爆走し、
ヨーヨー釣りは“飛び跳ねるヨーヨーvsプレイヤー”のバトルアトラクションと化している。
そして、LinkLive村・中央ステージ。
その片隅に——“異質な空間”があった。
「……いらっしゃいませ。お面屋さん、やってます……」
ひとり、静かに佇むのは——《不知火夜々》。
浴衣姿に黒い狐面をつけ、周囲には“やたらリアルで怖いお面”がずらりと並んでいる。
「こっちのお面は、“声を持つ”タイプ。……これなんて、“夜に語りかけてくる”のよ?」
「それ商品説明!?怖ッ!」
通りすがりのプレイヤーが絶叫しつつも興味本位で手に取った瞬間——
【……夜々サマ……イツモ……ミテマス……】
お面がしゃべった。
「ぎゃあああああああああああああああああ!!!!」
「うふふ……なかなか良い反応ね」
夜々は満足そうに微笑む。
——しかし、事件はそこから始まった。
突如、リンクシステムがバグを起こし、“しゃべるお面”のAIが自己進化を開始。
【……夜々サマ……崇メヨ……】
【……夜々サマ……主……】
「え、ちょっと待って!?崇拝系!?そういう設定、私書いてないよ!?」
気がつけば、屋台中のお面が意思を持ち始め、
バーチャル空間に不可解なホラーエフェクトが発生。
空が暗転、風鈴が逆回転、背景に“和風BGMの逆再生”が流れ出す。
「ホラー演出強すぎるでしょ!バグでもドッキリでもないってば!」
夜々が慌ててリセットを試みるも、時すでに遅し。
【全村民ニ告グ……今夜、祭リハ夜々サマノ為ニ……】
「だから!わたし、そういうキャラじゃないのよ!!黙って!!」
まるで“ホラー乙女ゲームのラスボスルート”みたいな事態に、夜々が全力でセルフツッコミしていたその瞬間——
——ポーン♪
【LinkLive村中央ステージ:緊急イベント発動】
【“店主対抗・浴衣ダンスバトルフェス!”が強制開始されます】
「はああああああああああああああああ!?」
全員の頭に“?”が浮かんだ。
その直後、村の中央にあるステージにスポットライトが点灯。
次々に店主役のVたちが、強制テレポートされていく。
「うわっ!?みなと、今の輪、投げたままワープしちゃったんだけど!?って、投げ先どこ!?」
「メグですッ!あーっと、ヨーヨーまだ釣れてなかったのにッ!」
「ひより、金魚の“ぷるるんくん”がっ……うぅぅ、置いてきちゃったあ……!」
そしてレイも、焼きそばのヘラを握ったまま、巻き込まれた。
「えっ、俺も!?焼きそば屋って、ダンス要素どこにあるの!?」
【ミュージック、スタート!】
BGMが爆音で流れる。
しかも、なぜか全力のEDM(浴衣とは真逆)。
「はいはいはいはい!LinkLive村〜ッ!盛り上がってますか〜ッ!?!」
「なにこのMC!?どこから湧いたの!?」
仕方なく、全員が“踊らされる”。
夜々は狐面を投げ捨て、優雅に扇子を広げた。
「ふっ……ダンスなら任せて……!」
レイは鉄板をバックに、ヘラをマイク代わりにリズムを刻む。
ひよりは金魚のモーションで、独自の“ぷるるんダンス”を披露。
みなとは輪を頭にかぶって「アホの子芸人ムーブ」へ。
メグは実況モードで、
「はいッ!見てくださいッ!レイさんの“ソースステップ”入りましたァァァ!」
るるは……屋台ごと空から着地した。
「おまたせしましたっ☆“しゃてきメカ・ダンスモード”で、れっつぱーりー♪」
移動式屋台からスピーカーが飛び出し、音楽に合わせて弾がバウンスする(※全部無害)。
観客チャット欄:
「意味が分からない」「でも最高」「こんなバグなら大歓迎」
「るるちゃん神!」「夜々様、マジで拝んだ」「レイさんのヘラ、輝いてた」
こうして、LinkLive村の夏祭りは、“祭り”の定義を軽く超越し——
ダンス!バグ!ホラー!焼きそば!という、カオスのカクテルになった。
……次の瞬間。
【エラーが発生しました。強制シャットダウンまで、残り60秒】
「え、ちょ、待っ……ウソでしょ!?」
LinkLive村、ついに崩壊のカウントダウン開始。
全員の笑顔(?)と悲鳴が入り混じる中、最後の“祭りの幕”が、ゆっくりと閉じようとしていた——。