『灼熱!焼きそば戦線異状アリ!?』
「よし……今度こそ、ちゃんと焼くぞ。普通の、ちゃんとした焼きそばを……!」
煙が目にしみる中、レイは懸命に鉄板と格闘していた。
豚肉、キャベツ、そして謎ナルト(今回は封印した)を乗せ、ジュウウッと焼き色がつく。ソースをかければ、香ばしい匂いが一気にVR空間に拡散。
「……いいぞ、今回はまともだ。これぞ、祭りの主役……」
しかし、その瞬間。
——ブイィィィンッ!
画面右上に、システム通知が浮かび上がる。
【★観客アンケート機能:起動しました★】
【“焼きそばに何を入れたい?” 現在集計中……】
【1位:チョコバナナ(37%)】
「待て待て待て待て待て!!なんで!?なんで焼きそばに甘味を求めるの!?!」
慌てて操作を止めようとしたが、時すでに遅し。
鉄板の上に、バナナの皮が舞い降り——その上からチョコソースが豪快に滴る。
「ギャアアアア!?バナナ、跳ねてる跳ねてる!焦げてるし跳ねてるし甘い匂いするしぃぃぃ!!」
しかも観客アバターたちは、なぜか大興奮。
「やべぇ!革命だ!」「あまじょっぱい系の未来、来てる!」「レイさん、天才!」
「違うんだよぉおおお!?俺、そんな気は一切ないのにィィィィ!!」
一方その頃。
LinkLive村・中央エリア。そこに、白銀の小さな影がゆっくりと姿を現す。
「ふっふっふ……“るる式しゃてき・完全体”のデビューなのっ♪」
それは《るる☆るん!》の進化系屋台。いや、もう“屋台”というか“メカ”。
四足歩行型の移動式射的台に、後部には煙突から泡が噴き出し、屋根には風鈴とアンテナ。そして前方には——ミサイル型(※実際は花火エフェクト)“スーパー弾”が。
「るるは考えたの。お客さんが“待つ”んじゃなくて、“屋台が行けばいい”って!」
「なるほどね!って違うわ!!」
通りすがりのアバターが全力でツッコむが、もう止まらない。
「さあ、るる式しゃてき!モード2、れっつ・ばーすとっ☆」
——ズガガガン!!
移動式射的屋台が、煙を吹きながら広場を爆走。
その弾道が何を破壊するかというと、なんと真白みなとの輪投げ屋。
「きゃっ!?るるちゃん!?そこ、輪の回収ポイントなのぉぉぉ!?」
輪が衝撃で吹っ飛び、代わりにメグのヨーヨー釣りスペースへダイヴ。
「わあっ!?お客さーん、ヨーヨーじゃなくて“浮き輪”釣ってますよぉ!?サイズ違いッスぅ!」
ドタバタの連鎖反応が続く中で、観客のボイスチャットが次々に炸裂する。
「焼きそばが甘い!」「射的が自走する!」「ヨーヨーが爆発した!!」「もしかして、これが芸術……?」
LinkLive村は、もはや芸術の域に達していた(※混沌という名の)。
「ひよりちゃん、金魚どうなってる?」
「えっと……“水槽から旅立って野生化”してる」
「ええええ!?野生化ってなに!?バーチャルで!?VRなのに!?」
水槽の外でピチピチと跳ねまわる金魚アバターたち。それらは自我を持ったかのように、まるで“第二の夏”を謳歌していた。
「……この村、絶対バグってるよね……」
レイは焼きそばにバナナを追加しながら、遠い目でつぶやいた。
すると、カオルマネージャーから音声通話が飛んでくる。
《あのぉ……焼きそばのカメラ、視聴者数が現在トップです。3万超えてます》
「いやいやいや!?なんで!?どの層に刺さってんの!?」
《“甘い焼きそば”っていう新ジャンルの切り口が斬新すぎて、“バズってる”らしいです》
「バズらなくていいんだよぉおおおぉおお!!!」
その声が、LinkLive村の祭囃子にかき消されていく中——
「さて、つぎは“空飛ぶしゃてきモード”を実装するの♪」
天才系(物理)キッズV、《るる☆るん!》の無謀なアップデートが……こっそり始まろうとしていた。
LinkLive村、崩壊まであと……カウントダウン、開始!