表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について【7万PV感謝】  作者: のびろう。
第15章『ドジっ子夜々、バイノーラルで恋を囁く!?』
118/177

エピローグ「……ねえ、“演技”って、どこまでが?」

夜の配信が終わったあと、私はひとりで事務所の喫茶室にいた。


冷めかけた紅茶を、スプーンでくるくると回す。

耳にはまだ、**さっきの“彼の囁き”**が残ってた。


 


——「……僕も、甘えていいですか?」


 


甘やかす側だったくせに、

最後の最後にそんなこと言って、

視聴者はコメントで「尊死」とか「結婚式いつ」だの騒ぎ始めて、

エンディングトークはほぼ成り立たなかった。


私も私で、しどろもどろになってたし。


(ほんと、プロとしてどうなのよ……)


そう自分にツッコミ入れながらも、頬はにやけていた。


もう隠せない。

あの子の声に、私の感情は“共鳴”してしまってる。


 


……数ヶ月前まで、あの子はただの後輩だった。

義妹の代役なんて、おかしな理由でVデビューして、

最初のコラボで空気壊しかけたくせに。


でも。


気づけば、一緒に配信して、

一緒にトラブルに巻き込まれて、

そして、一緒に“声で伝え合う”ようになっていた。


 


スマホを開くと、通知が止まらない。


ファンからのコメント。

「夜々様ガチ恋です」

「ノワール様の囁き、今夜もリピ確定」

「レイ×ノワール、公式になった瞬間を目撃しました」


……もう、そういう目で見られてるんだ。


けど、不思議と悪い気はしない。


むしろ、心のどこかが、あったかくなる。


 


そこに、ディスコードの通知。


「レイ」からのDMだった。


 


『今日の配信、おつかれさまでした』

『すごく、すごく楽しかったです』

『もし迷惑じゃなければ……今度、ふたりだけの“非公開配信”しませんか?』


 


……“非公開”。


そう書かれてるのに、

その一文は、**今までで一番“心に届いた声”**だった。


私は、ゆっくりと返信を打つ。


 


『……いいわよ。でも』

『次は“台本なし”でいくから、覚悟して』


 


送信ボタンを押して、スマホを伏せる。


喉が、少しだけ震えていた。


でも、それは恐怖じゃなくて——期待。


 


演技と本音の境界線なんて、もうとうに曖昧だった。


それでも、あえて問いかけてみる。


自分に。彼に。マイクの向こうの誰かに。


 


「……ねえ、“演技”って、どこまでが?」


 


誰も答えてくれない問いだけど、

きっとそれは、これからの“ふたり”で探していくことになる。


 


紅茶を一口飲む。

夜はまだ、終わらない。


声を届けたい人がいる限り、私たちは——


“好き”を、マイクに乗せて囁いていく。


 


その先にあるのが、演技でも、恋でも。

……たとえ、どっちだっていいじゃない。


だって、今日の私は、

“本気で好き”って、言っちゃったんだから。


 


——Fin.

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ