建築は、愛の戦場!?花嫁ポジション争奪戦
「レイくん、新郎役、お願いね♡」
夜々の一言で、すべてが始まった。
LinkLive村コラボ――マイクラで理想の村生活を作るというはずだったのに。
気づけば俺は、村の中心で結婚式の準備をさせられていた。
「えっ、俺が新郎役? いやいや、せめて牧師とか、せめて参列者Aとか……!」
「レイさん、抵抗は無意味です。タキシード、着用確認♡」
夜々のドヤ顔スキンが画面にドアップになる。
「いや、それ誰得……!」
だが、それに火をつけたのは――意外にも、俺の“妹”。
『お兄ちゃんの花嫁が他の人って……だめ、絶対だめ!』
ひよりが即座に、村の北側にブロックを積み始めた。
「ここに、お兄ちゃんと私の**“兄妹新婚部屋”**を建てるの! 広さは5LDKで、リビングは二人きりでも寂しくないようにオープン仕様。ベッドはもちろんダブルで……♡」
「おい待て、色々と重すぎる!」
だが止まらない。
メグ:「だったら私は、**“推し婚式場”+“実況席”**で対抗! これがオタクの全力……! ていうか結婚式を実況するって、夢じゃない!?」
ドドンと建つのは、壁一面がレイのファンアートで埋め尽くされた結婚式場。
祭壇の横には実況ブースが完備され、マイクラ内とは思えぬ設備。
「こっちレイくんの“イケボ発声席”もあるからね! 低音で誓って!! 誓ってくださいぃぃぃっ!!」
「実況が情緒不安定なんよ!」
さらに南側では、みなとの建築が静かに始まっていた。
みなと:「私は……“愛のキッチン”付き式場を作るよ。ほら、レイくんには温かいご飯が似合うから」
音もなく組み上がっていく和風のリハーサル会場。
敷地の中心には本格的なかまどと囲炉裏が設置され、なぜか味噌と大根が置いてある。
「って、これ完全に家庭の味じゃん……!」
そして次に現れたのは、るる。
可愛い系ビジュアルが売りの天才スキン職人――その手には、ド派手な“純白ドレススキン”。
「るるは思ったの。“花嫁”って、誰よりも輝いてなきゃダメだよね?」
その瞬間、画面上に爆誕する“ウルトラ花嫁”。
ブロックとは思えぬ滑らかさ、透け感、装飾。
まるで三次元のモデリングと錯覚するレベル。
「るるちゃん!? それMODで召喚された女神じゃない!?」
「ううん、これ……手作り♡」
「強すぎるって!!」
そして極めつけは、橘いのり。
彼女は建築すらせず、静かに天を仰ぐとこう呟いた。
いのり:「……神よ、どうか私に“神託”を……」
ピカーン!
なんと空から“花嫁の聖域”と名づけられた浮遊神殿が降ってきた。
(※実際は雲ブロックで自作したものらしい)
「これが……神が選んだ、運命の花嫁の領域です」
「物理で降ってきた神託は初めて見たよ!」
チャット欄はすでにパニック。
《え、みんな本気すぎ》《花嫁スキン強すぎる》《てか村どこ行った》《これもう戦争》《レイ逃げて》《レイくん新郎なら私も立候補させてくれ!》
Twitterトレンドには早くも
#LinkLive婚バトル
#花嫁は誰だ選手権
#レイくん逃げて
がランクイン。
「……ねぇ、これ、ホントに配信企画だよな?」
気がつけば、俺の周囲には5人の“花嫁候補”が囲んでいた。
ひより:「お兄ちゃん、選ぶならやっぱり妹でしょ? わたし、毎日でも添い寝できるよ♡」
メグ:「オタク嫁とか一番コスパいいよ! 推しの夢、全部叶えてみせるから!」
みなと:「……私は、レイくんが帰ってきたときに、ただいまって言ってくれれば、それでいい」
るる:「一緒にゲームして、夜はASMRで寝かしつけてあげる♡」
いのり:「神が言いました。レイ様の魂は……私と共鳴していると……!」
「どこを向いても逃げ場がない……!」
それでも俺は、思わず笑ってしまった。
目の前の画面が、誰よりもキラキラしていたから。
これが……バーチャルの恋ってやつか。
「わかったよ、俺、新郎役、ちゃんとやる。だけどそのかわり……」
視聴者が、震えるコメントを打ち込む。
「……ちゃんと“本物の花嫁”を、見つけられるかは分かんないけど」
「少なくとも、全員に“ありがとう”って言いたいんだ」
その言葉に、一瞬だけ配信が静まる。
次の瞬間、
**爆発音(TNT)**と共に夜々が叫ぶ。
「え? ちょ、なにこれ!? 誰、式場に火薬仕込んだの!!?」
「ちょっと待って!? 私の新婚部屋が燃えてるぅぅぅ!!」
「るるのドレスが……ああああ、透けた!?///」
配信は、混沌と化した。
こうして、マイクラ婚争奪戦は幕を開けたのである。