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敵は悪獣だけではない

「さて、今日の授業はいつもと趣旨を変えて、少し話をしよう。」


如月教官は、いつもの訓練場に立つ隊員たちを前に、落ち着いたトーンで語り始めた。


「これまで、君たちは悪獣との戦い方を訓練してきた。


だが、悪獣だけが私たちの敵ではないということを理解しておく必要がある。」


隊員たちの視線が一点に集まる。


「近年、世界中で悪獣の素材が貴重な資源として注目されている。私たちの国の発展にも、悪獣の素材は欠かせない存在だ。しかし、そのために、他の国との間で資源争奪が激化している。」


教官は、ゆっくりと口を開いた。


「つまり、これから君たちが戦う相手は、悪獣だけとは限らない。他の国の兵士と遭遇する可能性もある。その際は、冷静に対処し、任務を遂行することが求められる。」


教室内に、静まりかえった空気が流れる。


「え、まさか…」

「他の国の人を殺すことになるなんて…」


隊員たちの表情は、驚きと不安で混ざり合っていた。


「現実を認識しろ。これは、私たちの国を守るための戦いだ。そのためには、どんな状況でも冷静さを保ち、任務を遂行しなければならない。それは、時に、人の命を奪うことを意味する。」


教官の言葉は、隊員たちの心に深く突き刺さった。


肇は、複雑な気持ちを抱いた。悪獣と戦うことならまだしも、他の国の人を殺すなんて、到底考えられないことだった。


「だが、決して忘れるな。我々は、この国を守るために戦う。そのためには、どんな犠牲を払っても、任務を遂行しなければならない。」


教官の言葉に、肇は決意を新たにした。


訓練は、新たな局面を迎えた。


悪獣との模擬戦に加え、対人戦闘の訓練が追加された。


素手での組み技、刃物を使った訓練、そして、銃の扱いを習得していく。


最初は、誰もが戸惑い、苦しんだ。


「こんなこと、できるわけない…」


「俺には、人を傷つけるなんて…」


何度も何度も、そう呟きたくなる衝動に駆られた。


しかし、教官や仲間たちの励ましもあり、彼らは徐々に、人を殺すという現実と向き合い始めた。


「肇、お前、随分変わったな。」

志賀が、訓練の合間に声をかけた。


「…ああ。」


肇は、複雑な表情で頷いた。


「俺たちは、もう普通の学生じゃないんだ。」


志賀の言葉に、肇は深く共感した。


彼らは、国を守るための戦士へと変貌を遂げていた。


しかし、肇の心には、まだ深い闇があった。人を殺すという行為への抵抗、そして、その責任感。


「人を殺す覚悟は、まだ、できてない。」


夜、一人ベッドに横になり、肇はそう呟いた。


そして、いつか来るであろう、本当の戦いのために、彼らは今日も訓練を続けていく。


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