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CV尽きたよ……

 

『君は眷属じゃない。君は歴とした不死者だ。グールでも、魚人でもない』

 

 私と同じでもないけどね。

 金髪が風で揺れる。

 

『外に出るのは初めてだろう? どうだい? 痛みはあるかい?』

 

 ルイセントが首を横に振れば『それは良かった。少々不安があったんだけども』と笑みを浮かべながら呟いた。

 

『おめでとう。君の誕生を改めて祝福するよルイス』

 

 それから直ぐに彼はルイセントの前から姿を眩ませた。そこから数百年。男を探している。長い旅だった。

 裁判にかけられた。

 耐え難い拷問を受けた。

 記憶が擦り切れていった。

 

「────よっ、と」

 

 押し倒したウルスは呻くばかりで理性は感じられない。

 

「僕に捧げられる祈りはない」

 

 流れる様に首を左手で押さえ、どこからか取り出したアイスピックの様な凶器で目を貫く。

 

「さて」

 

 ルイセントが立ち上がれば周囲は彼を避けるように後退り。

 

「……アンタ」

 

 そんな中で一人。

 モーリスが臆する事なくルイセントを睨みつける。ルイセントは気にした様子もなくゆっくりと歩き出す。

 

「止まれッ!」

 

 ルイセントはイシュリアの居る方向を確認し、モーリスの言葉を気にせずに歩みを続ける。

 

「聞こえねェのか!」

 

 ルイセントにモーリスの声は届いている。だが、無意味だ。ルイセントがそう判断した。止まったところで意味はない。

 

「何やったか分かってんのか!」

 

 先程までの親しみを感じる様な老爺の声ではない。理解できないモノを見る様な、敵対心に満ちた目を。

 

「ビリー。見つけたか?」

 

 だが、どうでも良い。

 必要のない事だ。

 

「テメェ!」

 

 モーリスが早足で近づいてくる。

 ルイセントを掴もうと振るわれる右腕。危なげなく避ける。

 

「……あ、ああ。確かに居やがる。混じったニオイのヤツが」

「やれば出来るじゃないか、ビリー」

 

 その調子で頼むぞ、とルイセントは微笑んだ。この間もモーリスの掴み掛かろうとする腕を余裕を見せて避け続けている。

 

「で、其奴は何処だ?」

 

 遂に、モーリスは掴みかかるのではなく握りしめた拳を放つが軽々と受け止められてしまう。

 

「何やって……って、オイ! 何かあっちに人が倒れてるんだが!?」

 

 怒りを露わにしたモーリス。

 状況が掴めなかったが、周囲を見回して一人の男が倒れている事に気がついた。

 先程までのルイセントの命令に熱中していたのか、イシュリアは先程に起きたウルスの殺害に気がついていなかった。

 

「僕が殺したんだ」

「はあ!?」

「見ただろう、さっきのを。アレはもう治しようがない」

 

 それよりも早く教えろ、と言いながらルイセントはモーリスを優しく床に座らせる。

 

「すまないな、モーリス老。今はそれどころではない」

「待てっ!」

 

 モーリスが立ち上がるのを待たずに、ルイセントとイシュリアは歩き出す。

 

「い、良いのか?」

「僕の敵は不死者……怪物だ。モーリス老は敵ではない」

 

 怪我をさせるのも、死なせるのも必要がない。

 

「それで、誰だ?」

「それは、そこの赤茶の髪の……」

 

 部屋にいた人間はルイセントを避ける。

 道は開けている。ルイセントが高速で駆ける。

 

「コイツか?」

 

 顔面を鷲掴みにして壁際まで。

 

「確かに、牙があるな……シャツにも血の跡だ」

 

 ヒントは多くあったらしい。

 とはいえ、参加者多数の中から探し出すのも一苦労だ。ならば使える道具は使う方が早い。

 

「は、離せ! わ、私は脅されていただけだ! こんな事をするつもりは無かった!」

「分からないな。人殺しをしていながら……脅されたからと言って許される範囲ではないだろう」

 

 ルイセントの目は冷めている。

 ウルスを殺した時と同様にアイスピックを右手に持つ。

 

「や、止めろ!」

 

 突然、男の体から真っ赤な棘が吹き出した。鉄の様な固さの棘が荊の様に。

 

「吸血鬼だな。仕方ない。僕はお前を殺す。奴の掌の上で転がされている様な気がして、どうにも業腹だがな」

 

 ルイセントは構えを取る。

 

「クソ、クソッ……! 私は普通に生きたかっただけなのに!」

 

 マリノシティは彼にとって悪くない場所だった。この街ならば、食料にも娯楽にも困らない。誰かが死のうと碌な捜査もされないから。

 

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