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シエラの物語  作者: こはす
3/12

5年前(2)

友人の過去世を物語として書き起こしてみました。処女作なので拙いところも多々あると思いますが、楽しんでいただけたら幸いです。シエラが体験した世界、そしてその思いを皆様にも届けられたらと思っています。

「ねぇママ?今日はどこへ行くの?」


「フローラお婆さんのところにお薬を届けに行くのよ。レオ、さっきお約束したこと、ちゃんと覚えてる?」


「うん。フローラお婆さんのところには森で採れた果物を届けに行くの。お薬のことは言わないの。」


「そう。偉いわね~。お約束守ってね。」


「はーい。」


シエラは息子のレオの手をしっかりと握って、反対の手には果物をたくさん入れた大きな籠を持ち、キリーナの街へと入っていく。


キリーナの街は広い石畳の道を馬車や人がたくさん行き交い、街路樹を挟んで立ち並ぶ家からは賑やかな声が聴こえ賑わいを見せている。2人が目指すフローラの家はもうすぐ。


2人は石畳の道を足早に歩き、フローラの家がある小道へ曲がろうとしたが、その奥の方に人だかりが出来ているのが見えた。


「・・・何かあったのかしら?」


シエラはしっかりとレオの手を握り直し、ゆっくりとした足取りで人だかりの方へと向かっていく。

人だかりの中に恐る恐る近づいていくと声が聞こえてきた。


「やめてくれ!!そいつは俺の女房だ!!魔女なんかじゃねえよ!!何かの間違いだ!!」


「この女は魔女だという通報があった。これは正式な命令書である。連行し、異端審問会にかけることが決定したのだ。魔女でないと証明できるまではこの家に帰すことはできん!」


異端審問官に捕まえられている女性はぐったりしていて、何も反論できるような状態ではない。

他の審問官に取り押さえられている男性は女性を取り戻そうと必死になって訴えているが異端審問官は全く取り合わず女性を連れて進みだした。


「あの奥さん夜中に大きなカラスとおしゃべりしてたところを見つかったらしいよ。」

「ええ!?カラスと!?そりゃあ・・・魔女に違いないね。」

「まったく、どこに魔女が潜んでいるのかわかりゃしない・・・怖いねえ。」


見物人たちが勝手な噂話をつぶやいているのを横目にシエラはレオの手を引いて再び歩き出す。


「ママ・・・あれは何?あの人、悪いことしたの?」


「う~ん、なんだろうね。ママにもよくわからないけど・・・きっと大丈夫。さあ、私たちはフローラお婆さんのところに急ぎましょう!」


「うん!」


シエラとレオは元来た道を少し戻って小道を曲がり、奥まったところにある小さな家の中へと入っていった。




「こんにちは。フローラお婆さん。頼まれていたものを持ってきましたよ。」


「おお、シエラかい?何やら外が騒がしかったみたいだけど、何かあったのかい?」


「異端審問会が女性を・・・」


「おばあちゃーん!!」


「おお!!レオ!!レオも一緒に来てくれたのかい?元気なレオの顔を見たら婆さんも元気をもらえるよ!」


「うふふふふふ」


この家に住むフローラも、昔は薬草を作っていた魔女だ。

今は引退してリリーとシエラの薬とレオの笑顔に癒されながらこの街でひっそりと暮らしている。


「痛みはどう?」


「ああ、お前たちの薬の出来が良いもんで、かなり楽になったよ。やっぱり教えた人が偉大だと弟子の薬も良くなるもんだのう」


「まあ、ご自分が教えたんじゃないですか。私もリリーも、フローラから教えてもらえたことを誇りに思ってます。本当にありがとう。」


「いやいや、お礼を言うのはこちらの方じゃよ。最近は助けてもらってばかりだ。ありがとうよ。」


「そんな・・これからも教えてもらいたいことがあるんですから、まだまだ元気でいてくれないと。」


「ふむ・・・もうお前たちに教えることはないと思うがのう・・・」


「そんなこと言わずに・・・さあ、森で採れた果物や薬草、そして痛み止めです。いつものようにこっちの棚に置いておきますね。」


「ああ、ありがとう。」


「ねえねえおばあちゃん、いつものお話して~。」


レオがフローラのスカートを引っ張りながら言う。


「おお、よしよし。レオは本当にお話が好きだのう。どれ、こっちにおいで、婆さんのそばに・・・。」


レオはフローラの横にある小さめの椅子にちょこんと座り、目をキラキラと輝かせてフローラの話を待つ。


「フローラ、レオにお話をしてくれている間、私ちょっと買い出しに行ってきてもいいかしら?」


「ああ、いいとも。入用なものもあるだろうから、ゆっくり買い物しておいで。」


「ありがとう。じゃあ行ってくるわね。レオ、フローラお婆さんの言うことちゃんと聞いて、いい子にして待っててね。」


「わかってるよー。ママこそ気を付けて行ってきてね。」


「はいはい。」


「ママ、はいは1回だよ。」


「・・・はーい・・・」


生意気な口をきくレオに苦笑しながらシエラは空になった籠を手に持ち買い物へと向かった。


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