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ケモノたちの革命  作者: 夢みがちゃん
第一章 人生万事塞翁が馬鹿
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第1話 いずれ消され行く君達へ

初投稿です。至らぬ点も在りますが、暖かく見守って頂けると幸いに存じます。

 世界は不平等だ。それでも俺らには従う以外道はない。



 生は不平等だ。産まれた時から続くそれは型と言うには余りに不明瞭な何かによって格付けされる。先ず、生き物であるか。次に、人の姿をしているか。最後に、異能持ちでないか。

 たった三つ。されどこの篩のうち一つでもNoと答えば、れその生はドブに捨てられる。但し最後の網目に引っ掛かったなら、捨てられる場所はドブより酷い所になる。



 俺が住む場所はそのドブより酷いトコだった。名こそ大層に『異能持ち保護・監視区域』と宣っているが、要はスラム以下のはごみ箱だ。一応治安維持のため役人が居るが、働いているところを見たことはない。そのくせ権力だけは一人前にあるもんだからタチが悪い。

 逃げようにも遠くに見えるのは高い壁、そいつは区域をぐるりと囲っていて、更には何処もかしこもツルツルしてるもんだから、登れた物では無かった。

 そんなもんだから此処には子供が少ない。しかも殆どが孤児だ。勿論、俺も。親は物心が付く頃に居なくなった。今頃どっかで野垂れ死んでるか、汚く生きてるかの二択だ。

 だから俺には名前がない。正しくは名前“も”ない。学もない。金もない。権力もない。家族もない。そんなガキが生きていくには盗みか身売りしか道がない。仕方なく盗みで生計を建てていりゃ、心もないと言われた。ほっとけや。

 碌でも無いトコだが、俺にはここ以外の場所をよく知らなかった。産まれたときにはもうここに居て、きっと死ぬまで過すんだろうと思っていた。外の世界ってのは、周りの酔っ払い達からよく話すよく分からない所だと思ってたんだ。だって皆バラバラな事言うんだぜ。

 すぐ怪我の治るおっさんは「此処よりずっとマシなとこだ。」って懐かしんで唸ってた。

 犬の亜人の自称お姉さんは「おんなじ位のゴミ溜めさ。」と煙草を吹かして黄昏れてた。

 訛の強いお隣サンは「あっちに戻れンなら、何でも捨てたるわ。」なんて言って息巻いてるし。

 蛇の兄貴は「外よりゃ、中の方が幾分マシってもんだぜ。」俺の頭を撫でながら笑った。

 せめて意見は統一しろよ。そんなんだから、俺は外に出たいかって言われても素直に頷いた事はない。きっと出れる事もないんだろう。ずっとそう思ってたんだ。

 運命ってのはよく分からんもので、俺は今日外の世界に出たんだ。経緯は数日前に遡る。



 何時も通り底辺を謳歌していたときだ。お偉方から盗んだ鞄の中に1枚のチラシが入っていた。『勇気ある若者を求む!』なんて堂々と宣っていたそれを、俺は字が得意じゃないから、兄貴に持ってたんだ。


「お前マジかよ。オイ。」


 俺から紙を受け取った兄貴は、椅子から転げ落ちんばかりに驚いてそう言った。


「そんな凄いモンなんかよ。」


いつもなら俺が盗んだ物を渡せば、パッと値段を出して兄貴は買い取る。だからこんな兄貴の奇行は初めてだ。


「幾ら貰えんだ。」


 期待に胸を膨らませそう尋ねる。良い値段がついたら今日の晩飯を豪華にするか。


「馬鹿が。こんな紙切れに価値なんかねぇよ。」


しかし、期待はあっさりと裏切られた。


「んじゃ何に価値があんだよ。」


 落胆を隠さずに不貞腐れてきく。それを見て、兄貴は笑いながらこたえた。


「あ?そりゃ書いてる内容だよ。」


「なんて書いてるんだ?」


「自分で読めよ馬鹿ガキ。」


「読めねぇから持ってきたんだろ。」


「自分で読めよ。それじゃいつまで経っても馬鹿のままだぜ。」


 それともママの応援がないと何も出来ないんでちゅかー。と馬鹿にされたから、俺は無理やり読むことにした。

・近々大規模な内戦が起こること。

・其の為に異能持ちの兵士を招集していること。

・戦果が上位ならば『名誉人権』が貰えるかもしれないこと。

・集合場所は中央の広場で、時間は今日から丁度3日後らしいこと。

後半2つは俺が読めなかったのから、兄貴に読んでもらった。めちゃくちゃ馬鹿にされた。



「人権ってなんだよ。」


 報酬に疑問を抱き兄貴に尋ねる。産まれてこの方聴いたことの無い単語だった。


「人権てのはなァ……?。なんだ?知らねぇよ。」


少し考えたあと、兄貴はそう言った。


「知らねぇのかよ。兄貴も馬鹿じゃねぇか。」


 兄貴の馬鹿さが露見したので、ここぞとばかりに笑ってやる。くらえ!日頃の恨みだ!バーカ!バーカ!


「あぁ?ちょっと待っとけよ。出かかってっから。」


「無理すんなよ馬鹿兄貴。」


「黙っとけ馬鹿ガキ。」


「思い出したわ。あれだよあれ。人間がみんな持ってて、それがあったら最低限の衣食住は保証されるってやつ。」


しばらくたった後、兄貴は俺に説明した。


「ズリぃなそれ。なんで俺らにゃねぇんだよ。」


素直に感想を吐けば、兄貴はゲラゲラ笑う。


「そりゃお前当たりめぇだろうがよ。俺等は人じゃねぇんだぜ。」


心底可笑しそうに兄貴は答えた。

 言われてみれば当然の事だ。俺達は人間じゃない。居るかも分かんねぇ神サマが作った失敗作なんだとよ。それじゃ産まれるより先に捨てとけよなんて思わんでもないが、そんなこと言ったってどうしようもない。


「で、お前はどうすんだよ。」


「どうするって、何を?」


「聞いてなかったのかよ馬鹿ガキ。行くのか?行かねぇのか?」


 急に兄貴が問う。俺は言葉がでてこなかった。

「どうすれば…いいと思う?」


「知らねぇよ。俺は。」


 兄貴は静かに応えた。何時ものおどけた雰囲気じゃない。商談の時でも滅多にお目にかけない位真剣な兄貴だった。俺と初めて会った時の、己についていくるかを問うた男がそこに居た。

 兄貴はもう何も言わない。俺も何も言えなかった。



「兄貴だったらどうすんだよ。」


 沈黙に耐えかね、俺は問うた。

「俺かぁ?俺なら行かねぇな。そんなもん。…でもな」


「でも?」


「お前なら行ってもいいんじゃぁねぇか?」


「…は?」


「真面目な話だ。お前はこれからどうしたい。何か夢は有るか?」


「それは、無いけどよ。」


「俺はあるぜ。ビッグな夢がよ。ここに産まれる馬鹿ガキを一人でも多く雇って、そこそこコキ使って、この区域全てを俺の領土にする。それが俺の夢だ。」


「グズの夢だな。」


 でも俺は知ってるぜ。兄貴が俺らみたいなもん雇ってくれるから、今日までなんとか生き残れてたってことを。


「うるせぇな。でもお前にゃねぇんだろ、こんな所で腐る理由なんかよ。それなら一攫千金狙って旅立つ方が得ってもんだろうが。」


「兄貴!」


いままでずっと救い様のないクズだと思ってたけど、案外カッケェこと言うじゃねぇか。


「将来のライバルが一人減った方が、俺の得にもなるしな。」


「兄貴。」


やっぱクズなだけかもしんねぇ。


「お前はまだ若え。それに強えからよ、俺等よかマシになれるぜ。」


「なんでそんな事言えんだよ。」


「お前は亜人じゃねぇからな。」


「それは…。」


 一概に異能持ちといっても、亜人の扱いの悪さは魔法使いの比じゃない。見た目が人間様と違うから大体どこでも同じ様に差別され、迫害されるのだ。


「お前が持ってんのは何だ?そのバカ見てぇなボサボサ頭と、バカ見てぇなその顔と、そのバカ見てぇな思い切りの良さだろ。」


「バカしか言ってねえじゃねぇかよ。」


「そうだ。お前は馬鹿だ。俺もな。だから悩むんじゃねぇ面倒くせぇ。」


 不器用な応援だった。でもその雑に背中を押してくる感じが、兄貴らしくて暖かい。

 その後は泣いた気がする。兄貴はママが恋しいのかと笑ったが、次第に、黙って俺の頭を優しく叩くだけになった。



 翌日に俺は旅立った。別れの挨拶はしていない。「さよなら」とも「またな」とも言わずに馬鹿な戯れ合いをして終わりだった。だが、最後にハグをした。兄弟でも親子でもない。ただの除け者達としてつるんでる俺等の関係じゃそれで十分だ。

 俺の住んでた地域はだいぶ遠かったから、2日かけて中央広場に着いた。

 着いた時にはもう集合が始まってて、亜人も魔法使いも一緒くたに古びたバスに詰められた。その前に持ち物の回収をされたが、生憎俺が持ってるものといえば、くすんだ金髪と青い目と、少々そばかすの目立つ顔と、あと盗みの技術、そしてそこまで上手でもない魔法くらいだ。

 バスは区域の門をでて荒野を進む。小さな窓から見た外の世界はそこまで綺麗でもなくて、こんなもんかと落胆した。



 日が傾き掛けた頃、バスは止まった。


「降りろ。」


 黒い軍服をきた男が、端的に命令した。大人しく従うと、大きな施設が目に入る。

 脱走防止の為か周囲は塀に囲まれていて軍事施設と言うよりかは刑務所に近い。


「並べ。」


男が再び単語で命令する。こいつは文で話せないのか?

 渋々従う。並んでいる最中に続々とバスがくる。数は二十を越えていた。俺が居たバスには大体60人が乗ってたから、総員は千人ちょいってとこだろうか。

 施設で始めに行われたのは、亜人と魔法使いの仕分けだった。分けたら其々に識別パッチを埋め込む。これで逃げても直ぐに居場所が分かるようになるから、速やかに『処分』出来るんだとよ。

 後は健康診断と認知能力の確認。そして異能の登録。そして後日、体力と戦闘力の調査。

 全てが終わる迄、俺達は部屋を与えられず講堂で男も女も関係なく雑魚寝で、名前は識別コードで呼ばれていた。四桁の数字とアルファベットで構成されたそれは、俺達に『異能持ちは家畜と同等だ』という世間様の常識を教えるには十分だった。そして、俺達の反抗心を煽るのにも。

 しかし、何か問題を起こせば鉛玉が飛んできて、一週間もすれば反抗する命知らずは居なくなった。

 そう誰もが思っていた。



「ねぇ私たちの扱いってぇ。不当ぉてやつじゃない?」


 管理する軍服の奴らが帰った後、誰かがそう言った。間延びした声の方向を見れば、紫髪の女が居た。

 顔の大部分を覆うほど大きな布で目隠しをしているため容姿はわからない。白い質素なワンピースを着ているが、前側が大胆に開いているため下半身が見えている。刺激的な服かと思ったが、肝心の下は臍ほどから大きな蜘蛛と繋がっていた。下半身が蜘蛛ってより、巨体蜘蛛に上半身がくっついているの方が正しいのかもしれない。


「確かに不当やな。」


「せやね。これはさすがに嫌やわ。」


 また別の奴等が言い出した。蛍光緑の髪と目尻の黒子が揃いの訛りの強い二人組だった。

 一人は珍しくもない中肉中背の短髪で、緑と青のオッドアイが印象的な小麦肌の好青年だ。口をへの字に曲げて不満を全身で表現している。

 もう一人は肩までかかる緩いカーブの髪、ふっくらとした桃色の唇、健康的な肌が魅力的な糸目のおん…。?女か?中性的な体のラインや、喉がチョーカーで隠されているせいで断定は出来ない。過去に一度、性別を見誤り痛い目を見たから、不明にしよう。


「いつ?何?」


次は言葉足らずの最終型みたいな奴がきた。

 くしゃくしゃショート金髪に鮮明な青メッシュが入っている美少女だった。独特な模様のある黄金を嵌め込んだような猫目と、象牙色の肌を持っていて、金持ちに高く売れそうだ。


「僕に考えがある。協力する奴は明日の自由時間、此処に着てくれ。」


隣に居た男が立ち上がり言った。

 黒髪青目の青年だ。垂れ目により甘いマスクの様に見えるが、上向きの眉から意思の強が現れている。

 五人の他に続く者は居なくかった。大半が白けた目を彼らに向けていた。誰も口にしなかったが、誰もが「馬鹿な奴らだ」と感じていた。勿論俺も。

 でも、こいつらなら何かやらかしてくれるのかも知れないと、本能が訴え掛けてきた。だから俺は、自分に従うことにした。

蛇の兄貴はモブとして出すつもりでしたが、結構お気に入りのキャラです。

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