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第3話 心臓に悪い

 

 真島さんに嘘告白をされて、数日が経った。3学期ももう終わりに差し掛かっていて、授業も4限目で終わるという最高の時期だ。


 いつも通り僕は、1番に登校した。そして、いつもなら夏生が現れる時間になったのだが、一向に現れる気配がない。


 ――夏生どうしたんだろ……?


 もしかして寝坊したか? などと心配になったため、夏生に『遅いけど、どうした?』とメッセージを送った。


 僕がメッセージを送ると、『寝坊して、今電車に乗ってる! 久しぶりに満員電車乗ったけどえぐいな……』とすぐに返信が来た。


 僕は、夏生がまだ家で寝てるのではないかと心配していたため、ホッとした。


 ――まだ電車ってことは、しばらく来ないだろうし、暇だな……。


 僕は、このクラスでよく話す相手は夏生しかいない。その上、さっきまで読んでいた本も読み終えてしまい手持ち無沙汰になってしまったため、小説投稿サイトを見ることにした。


 僕は、スマホのブラウザのブックマークからいつも利用する小説投稿サイトへアクセスし、お気に入りの作者さんの小説を選んだ。


 ちなみに僕が選んだのは、美少女が自分だけにデレてくるという内容の小説だ。


 僕は、読書が好きでライトノベルから純文学まで幅広く嗜む。特に、最近はラブコメ作品を読むのが好きで、こうして小説投稿サイトでも毎日面白そうなのが更新されていないかとチェックするのが最近の僕の日課になっている程だ。


 ――うおおおおお……。今回も、ヒロインが可愛すぎる……!


 今日、更新されたばかりのエピソードを読み終えた僕は、幸せな気持ちで思わず、頬を緩ませてしまっていた。


 僕にもこんな風にデレてくれる美少女が現れてくれないかな……。


 僕がそんなことを考えていると――、


「か、上坂君……! お、おはよう……!」


 突然、声を掛けられた。


 僕が驚いて顔を上げると、僕の前に真島さんが立っていた。


 僕は、慌ててだらしなくニヤニヤしていた顔を元に戻した。


「ま、真島さん……。おはよう……」


 僕がそう挨拶をすると、真島さんは、なぜか口をまごつかせていた。


 一方で、僕は、なぜ嘘告白をした相手に話かけてくるのだろう? と困惑していた。


 そして、あれこれと考えうる理由を頭の中で思い浮かべている内に、僕は気づいてしまった――。


 ――ま、まさか……。嘘告白に失敗したら、僕を落とせるまでアプローチするとかそういうやつか!?


 それなら、僕が真島さんの嘘告白を断った後も、こうして真島さんが話しかけてくるのも納得できる。


 僕がそんなことを考えていると――、


「あ、あの……! 今日の髪型、ど、どうかな……?」


 真島さんは、きゅっと肩に下げているカバンの持ち手を両手で掴み、緊張気味な様子で聞いてきた。


 その様子に僕は、思わず、可愛い……と思ってしまったが、相手は自分に嘘告白をしてきた女子だ……と、自分に言い聞かせた。


 僕は、一瞬で冷静になり、真島さんの髪型をチェックした。


 真島さんは、普段は長い黒髪を結ばずにストレートにしているのだが、今日は、ポニーテールにしている。それに、髪もヘアアイロンで巻かれているみたいだ。


 うん……。正直、めちゃくちゃ可愛い……。


 僕は、そう思ってしまった。何せ外見だけなら、真島さんは僕の好みど真ん中なのだ。


「うん……。似合っていると思うよ」


 僕は、めちゃくちゃ可愛いです、なんて言うわけにもいかず、無難な返答をした。


「そっか! ありがとう! じゃあさ、いつものとどっちがいい……?」


 可愛らしく首をかしげながら真島さんが聞いてきた。


 美少女の可愛い仕草の破壊力は抜群だった――。


 脳天を貫かれたような衝撃が走った。


 僕は、頭を抱えながら周囲にクラスメートがいないかを確認した。


 ――こんなところを見られたら、間違いなく男子たちに殺される……。


 そんな僕の心配を他所に、まだ教室には真島さんと僕の2人しかいなかった。


 僕は、ホッと胸を撫でおろした。


「えっと……。どっちがいいかな……?」


 いつまで経っても、返事をしない僕に真島さんが自信なさげな様子で聞いてきた。


「あ、えっと……。どっちもいいと思うけど、今日のは、すごくいい……と思います……。はい……」


 僕は、率直な意見を言った。あまり、こういうことを言う機会が今までなかった僕は、恥ずかしさのあまり口どもってしまった。


 すると――、


「ほんとに!? よかった! じゃあ、また、この髪型で学校来るね!」


 真島さんは、ぱあっと顔を明るくして言った。


 そして、真島さんは、そのまま自分の席に荷物を置き、廊下へとものすごい勢いで出て行ってしまった。


「心臓に悪いからやめてください……」


 僕は、再び自分しかいなくなった朝の教室で呟いた後、机に突っ伏した。


 ――罰ゲームなのは、わかってても可愛いと思ってしまうから本当にやめてください……。


 そう思わずにはいられなかった。


 後ほど、いつもより少し遅れて登校してきた夏生に「何で、朝から疲れた顔をしてるんだ……?」と聞かれたが、本当のことを言うわけにもいかず、僕はお茶を濁した。

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