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第21話 少しくすぐったい


 校外学習最終日――。


 この最終日は、特にやることはなく後は帰るだけの日だ。


 そして、今、まさに僕たちを学校へ送り届けてくれるバスの中にいるのだが――。


「「……」」


 隣人との間に流れる気まずさをひしひしと感じながら僕は席に座っていた。


 なぜだかはわからないが、夏生が内田さんと話したい、と言うので行きのバスと同じ席配置になったのだ。


 ふと隣の席に座る真島さんへと目線をちらっ、と向けた。


 すると、あちらも僕のことを見ていたみたいで目が合ってしまい、お互いに目を逸らす。


 ――気まずい……。


 昨夜の出来事があってから一晩が経ってはいる。とはいえ、行きのバスでの事件を思い出させてくるこの状況に気まずさを感じずにはいられない。


 しかし、今感じている気まずさは、昨日感じていたような居心地の悪いようなものではない。不思議と悪い気はしない。


 どこかくすぐったさを感じる。


 先ほど目を逸らしたばかりなのに、僕は再び真島さんへと目を向けた。


 ――真島さん、眠そうだな。


 昨晩はあまり寝なかったのか彼女の目の下には隈ができていた。


「真島さん、寝不足なの……?」


 僕がそう言うと、真島さんは少し微笑んだ。


「そう言う上坂君こそ眠そうだけど……?」


 実際、僕も夏生とゲームをしたり、昨日までの真島さんとのことを振り返ったりであまり眠れず、寝不足だった。


「まあ、寝不足だけど、耐えられないって程じゃないよ」


「そっか、じゃあ、学校に着くまで起きてた方が勝ちって勝負しようよ」


 校外学習で意外と子供っぽい一面を見せた真島さんが再び子供っぽいことを言い出した。


「いいよ」


 特に断る理由はないため、僕は承諾した。


***


 真島さんが提案してきたゲームを始めてから15分が経ったころのことだった――。


 隣から気持ちよさそうな寝息が聞こえてきた。


 どうやら真島さんが先に寝てしまったようだ。


 特に勝ったからと言って何かあるわけではないが、ゲームは僕の勝ち。


 そういうことでいいのだろう。


 ――それにしても、ほんとに気持ちよさそうに寝るな……。僕まで今にも寝そうになっちゃうな。


 真島さんの寝顔を見ながら僕は思った。


 ゆらりゆらりとバスの揺れを感じながらぼんやりと過ごしている内に抗えない睡魔に襲われ、意識が遠のいていく――。


 ――限界だ。


 そう思うと、同時に僕は意識を手放した。


***


 次に僕が目を覚ましたのは、学校に着いても起きない僕のことを夏生が起こしてくれたときで、既に真島さんは帰ってしまっていた。


 夏生とご飯でも食べてから帰ろうかと思っていたが、先約があるからすまん! と断られてしまったため、仕方なく帰路につくことにした。


 そして、帰宅途中の電車の中――。


 僕と真島さんがお互いに寄り添い合って寝ている写真が夏生から送られてきた。


 僕の誘いを断って何をしているのか分からない親友がニヤニヤとしている様子が頭の中に浮かび上がってきて、少しいらっ、ときた。


 そんな風に少しいらっ、としつつも夏生から送られてきた写真を確認する――。


 写真の中で僕は、真島さんに思い切りもたれかかって寝ていた。


 ……行きのバスで撮られた写真よりも僕と真島さんの距離が近い。


 ――そんな気がする。


 夏生から送られてきた写真を電車でぼんやりと眺めていると――、


『少しは素直になったんだな』


 そんな夏生からの新しいメッセージがトークルームに表示された。


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