第86話 帝都スカイヨーク
ジン達一行は異界の魔物の潜むダンジョンを制覇して、新たな冒険の旅に繰り出した。
彼らはまだあまりなじみのないシルコレア帝国のダンジョン”暴食のダンジョン”を踏破してもう一つの”望郷のダンジョン”はのんびり帝都を散策してから潜ることになった。
9人がぞろぞろ歩いても目立つのでジン、イリーナ、イリア、オレリア、ローラのグループとヒューイ、ドール、イザベラ、フェリシア、アリシアのグループに午前中は別れ、午後はジンが入れ替わることになった。
ジンとイリーナが先頭になって宿を出て皆んなが興味を抱いている魔道具屋や武具が軒を連ねている冒険者ギルドの近辺を先ず散策していた。
ジン達が最初に入った魔道具屋には”魔女の道楽”で発売した『マジックテント』が倍の値段で売られているのを、ジンとイリア達が笑いながら眺めて、色々な品物をあさっていた。
ジン達は『マジックアイテム創造』のレアな魔道具を持っているので、特にこれといって欲しい魔道具はなかったが、魔道具の防具系にジンは興味を持って調べている。
そこで見つけたのが、サイズフリーのミスリルとアダマンタイト合金の耐物、耐熱、耐湿、耐魔法の鎧でオレリアやフェリシアにちょうどいいかもしれないと感じてイリーナに目配せで聞いてみると「ジン、私たちは既に【シールド】の指輪を全員が嵌めているから、防護服の鎧は不必要よ」と却下されてしまう。
それもそうだとジンも同感。 今や全員が【シールド】を掛けて戦いが出来るし、一瞬で転移もできる【簡易転移盤】を夫々が身につけて持っている。
攻撃の『マジックアイテム』もイリーナが『滅亡の弓』、イリアが『魔法のダガー』、オレリア、フェリシアが同じく『魔法のダガー』、イザベラが『魔法の槍』を持っているので特にこれ以上は必要なかった。
結局魔道具屋では見るだけで特に買いたいものもなく、次の武具屋に入ってみた。
ジンは自分で武具を作るのでその参考になるものでもと思い見ていた。
武具屋でも、魔法を剣に纏わせて剣先から火や水を放つものとか、ジン達が持っているものばかりだった。
ジンは自分たちが踏破するたびに得る高価な『マジックアイテム』が他の人間達も持っているのだと勘違いしているところが有るのをイリーナに指摘され、結局魔道具とか武具を見ずに、女性陣の洋服ばかり見るショッピングに付き合わされる羽目になった。
10時半頃、喫茶店に入って、休憩していると外が何やら騒がしい。
ジンがお茶屋さんから道路を除いていると、高価な馬車が2台、騎士団が50人程護衛して貴族街に向かう隊列がジン達のお店の前を通るようだ。
どんな御仁が馬車に乗っているのか皆も興味を持ち、お茶代を払って隊列を見ることにした。
街の人の中には跪いてお辞儀している人達もいる。
すると、人影から3人程の中年の男性が短剣を持って、先頭の1台目の馬車に襲いかかって行った。
側にいた騎士数人が直ぐに対応して、二人の首を直ぐさまはねたが一人は人混みの中に紛れて逃げた。
馬車に居たのはどうやら皇帝の奥さんと王子だったようで、何事もなく通り過ぎようとして居たが、ジンは咄嗟に逃げたもう一人の男が周りを巻き込む【ファイアランス】を放って馬車を再度襲う瞬間を馬車に【シールド】を掛けて防ぎ、周りの市民が二人ほど刺された炎の槍で重症を負ってしまったのを【ハイヒール】を掛けて助け、魔法を放った男を【呪縛の縄】で束縛して、騎士団に渡した。
皇帝夫人がジン達の前に降りてきて、「そなたが私たちを守ってくれたことに感謝します。また市民のお二方の命を助けていただき誠にありがとう。できたら感謝とお礼をしたく午後にでも私を訪ねて城に来てくれぬか」と皇帝夫人がジンに言った。
ジンはめんどくさいことに巻き込まれたと内心後悔したが、「お礼など必要ございません、旅のものなのでお気にせずに・・・」と断るが、騎士団長と皇帝夫人に再度言われ、断りきれず午後に伺うことで、手紙を授かった。
「あらあら、ジンはわざわざ揉め事を背負い込むタチなのね!」とイリーナに呆れられたしまった。
そんな騒ぎがあり、お昼も近くなったので一旦宿に戻り、みんなと合流して近くの定食屋で昼食を食べるのだった。
定食屋で食べながらの会話はもっぱらジンが揉め事を抱え込んだ話で、午後からの散策はジン抜きで行くことになった。
ジンとしては一人で行くのは嫌だとごねて、オレリアとアリシアを同行させることになった。
昼ごはんを終えて一旦宿で少しいい洋服に着替えて3人で城の前に【転移】し、手紙を見せて、宮殿の中に案内され待って居た。
昼前に助けた夫人と王子二人が現れて、「よく来てくれた、先ほどは危ないところを本当に感謝する、王子二人を救ってくれて主人もあとで礼を言いたいとくると思うが先ずは其方達の紹介を頼む」
「あっ、これは大変失礼をいたしました。私はレンブラント王国冒険者のジン、こちらは我妻オレリアとアリシアでございます」とジンが丁重に答えた。
「私はシルコレア帝国皇帝アグレバルの妻ディアーナとこちらは息子のデビットとトミーです。あの〜オレリアさんはデイマール王国の王女オレリアさんでは?」
「はい、確かに私はデイマール王国王女オレリアでございます」
「主人がよくあなたとお父上と冒険をした時の話を聞かされて居ますわ(笑)」と相好を崩して話した。
そんなところに皇帝アグレバルがジン達のところに来た。
「おお、オレリアじゃないか!久しいのう。父上は元気か?」
「おじ様?おじ様はシルコレア帝国の皇帝?なの?」とオレリア。
「あははは、お主の父上と会うときは冒険者のアグレバルだからな!して、こちらが妻と息子二人を助けた御仁かな?」
「レンブラント王国の冒険者ジンです、こちらアレシアです」
「ええ?アレシア殿はデイマール王国のS級冒険者の?」と皇帝が驚いて聞いて来た。
「はい、今はジン様の家内でございます」
「ジン殿はもしかしてこの世界で唯一のSSクラスの冒険者の?」と再び驚きながら皇帝が聞いた。
「おじ様、今は私達ジンのファミリーは全員SSSクラスの冒険者ですわ」とオレリア。
「なんと?全員がSSSクラスじゃと?お主の父上と儂はやっとAクラスになったと喜んでおったのに・・・」
「全てジン様のおかげで、私も魔法を4属性全て使えるようになりました」
「そうかぁ!ジン殿この度は我妻ディアーナと息子二人の窮地をお救いいただき誠にかたじけない」と頭を下げられた。
「いやいや、皇帝様頭をお上げください。たまたま通りかかったところだったので」
皇帝は奥方達が狙われた事件の背景を簡単に説明してくれてたが、ジンは帝国内の政治的な内情に首を突っ込みたくないので聞き流して居た。
「ところでジン殿、ここで知り合ったのも何かの縁、是非しばらくこの国で遊んで行かれよ。きょうはこのあと予定が無ければそなた達を夕食に招きたいが如何かな?」
「お招きは大変嬉しゅうございますが、私達ファミリーはまだ他に総勢10名の大
所帯なのでご遠慮申し上げたく・・・」
「それなら、みなさんをお連れしていらっしゃいませ!是非今までの冒険の旅の話など主人が飛びついて喜びますわ」
「そうだジン殿、皆今日はこちらに泊まって色々話を聞かせてくれぬか」
結局ジン達は一旦宿に戻り、全員を連れて宮殿に泊まることになってしまった。
幸いアグレバル皇帝はとても気さくな人で、冒険者をしていたというだけあってジン達の今までの冒険の数々を嬉々として聞き入ってくれた。
夕食は皇帝一家とジン一家だけで打ち解けた楽しい夕食になった。
「すると、ジン殿達は古代人が滅亡させられた異界の魔物を殲滅したと?」
「ええ、何とか二日がかりでどうにか倒すことが出来ました」
「我が帝国にはSクラスの冒険者はいないのだがダンジョンがこの帝都にも2箇所あるが、行かれたのかな?」
「はい、昨日”暴食のダンジョン”を踏破して、今度は”望郷のダンジョン”を潜ろうと思っております」
「そうかぁ、儂も若かったら是非一緒に行きたかったが・・・」
「ところでジン殿、一つ相談なのだが妻達が襲われた時に市民を平気で傷つけた魔法師がいたじゃろ?彼のレベルは高いのか?」
「いえ、それほどでもありません。『ファイアランス』という魔法は火系の魔法では中級ですが、彼のは未だ未だ槍がちゃんとした形をなすまでに至ってなかったので大したことはないですよ」
「そうか、ジン殿お主達の力量を知って一つ指名依頼をお願いしたい」
「我が国は未だ未熟な国で貴族同士が自分たちの利益を優先させて争いが絶えないので儂が自領以外は国有地として国が管理するという法律を作り帝国が管理することになったのだがそれに反対する一部の貴族が午前中のように家内達を襲って儂に挑戦状を出して来たのじゃ、ついてはその一族の殲滅をお願いしたい」
「皇帝に反逆する輩は騎士団達で討伐するのが筋では?」
「本来はそうなのだが、現状帝都の民を平和に暮らしていけるように我々の騎士団、魔法師が動いて民衆を守らないと彼らは平気で帝都の市民を殺戮する連中だ。証拠を突きつけても知らぬ存ぜぬとしらを切るばかりでほとほと困っている。本来、内乱を一冒険者に依頼すること自体おかしいのだが儂はこの帝都の市民が犠牲になるのだけは防ぎたいのじゃ、どうだろう?頼まれてくれんか?」
「相手の貴族は大勢いるのですか?」
「潰して欲しいのは一人の侯爵の裏の軍隊だ、何せ魔法師を多数抱えて裏ギルドの殺し屋を多数抱えて総勢200人ほどだが、実力が有り軍隊としては3000人程度の力と同じだ」
「そうですか、ファミリーとも相談して決めたいと思います」
「もし受けていただけたら、白金95枚とこの国の自由に行き来できる品物を差し上げるので何とか検討してくれ」
「明日の朝食時には決めさせていただきます」と言ってジンと皇帝は皆の話の輪に
戻って行った。
夕食も楽しく終わり、ジン達一行と皇帝家族でお茶を飲みながら冒険の旅を話していた。
ディアーナ夫人がジンファミリーに皇帝が人に話したのと同じことをイリーナ達に話し始めた。
「イリーナさん、ジンファミリーに是非お願いしたいことがあるの、この国の民を救っていただきたいの・・・」と皇帝がまさにジンに依頼したことをファミリーの主がイリーナと思い皇帝夫人は皆がいる前で依頼した。
「ディアーナ、先程ジン殿にお願いしていたところだ、明日朝食までに皆で相談して返事をもらうことになっているぞ」
「あらそうでしたの?でも私からも是非お願いしたいわ」
「イリーナさん、この国は未だ若く貴族同士が領地を争って自国の民をないがしろに争いばかりしていたので、夫が今の自領以外は全て帝国国有地としてしばらく国が管理するとおふれを出したらある貴族だけが反対して裏ギルドの魔法師や殺し屋集団を抱えて帝都に反抗的な態度を示すようになったの、今日の事件もその連中の仕業で、市民を巻き添えにすることを厭わないひどいやり方が続いているのよ」
「何とか彼の裏の軍隊をあなた達に殲滅していただきたく指名依頼を出そうと」
「ディアーナ、全く同じことを先ほどジン君に話したところだよ」
「皇帝様、その話受けますわ!市民を巻き添えにして平気で自分の主張を通す輩は私は許せないわ」とイリーナが即決めしてしまった。
「ええ、イリーナ良いのかい?」
「午前中のやり方を見たでしょ?市民が居ても平気で【ファイアランス】を放ってくる魔法師達を集めて国に逆らう輩は成敗が必要よ!」
「みんなはどうなの?」
「私も、良いわ、自分の領土をを広げるために市民の命を何とも思わない輩は私たちで殲滅しましょう!」とオレリアやフェリシアが賛同してしまう。
「皇帝様には申し訳ないが、一方的な意見だけを聞いて即決めるのはもんだいじゃないか?」とジンが言い出した。
「一応相手のことも確認して探ってからと思ったのだけど・・・」
「明日の朝食までに決めようよ、それまでオレがその問題の貴族の周りを今から探るから」とジンは即答をやはり避けて明日朝結論を出すことにした。
ジンは皇帝から一応問題の貴族の名前を聞き、エリオット侯爵ということを確認して『地獄耳の拡声器』を耳につけてエリオット侯爵と念じた。
侯爵の声が彼の耳に聞こえてくる。
『襲撃に失敗しおって、全く役立たずの連中だ、次回は夫婦で街を視察するときを狙って屋台に魔法師達を潜り込ませて”ファイアボム”で周辺を爆発でもさせて周りもろとも殺せば間違いなく殺せるだろう』と聞こえて来た。
まぁこれで決まりだが、もう少し背景を知りたいと思い、そのまま耳につけて過ごすことにした。
夕食後のお茶会も終えて、皇帝が用意してくれた部屋に分散して個室に入ったがジンの部屋にオレリアが入って来た。
「ジン、皇帝のおじさんが私の知り合いだからといって、ジンが嫌なら断ってね。私は旦那様に従うわ」と言いながらナイトガウンを脱いでジンに抱きついて来た。
「いいや、この件はやはり受けようと思う、どうやらとんでもない貴族のようだからね」と言い、あとはオレリアに侵入して二人は何度も果てる。
オレリアはジンなしでは既に生きていけないと思うほどジンを愛おしく感じ、彼のためにもっともっと魔法の技を教えてもらい磨こうと思うのだった。
宮殿の中庭でヒューイ、アリシアと朝練をして、部屋に戻ってシャワーを浴び朝食に皆で向かった。
皇帝夫妻と王子二人が既に来ていてジンファミリーを待って居た。
「アグレバル皇帝、早々ですが昨夜の依頼お受けいたします」
「ついては食事が終わりましたら宮廷から一番近くの宿に5泊程度泊まり対応と作戦を行います」
「おお、そうしてもらえるか、宿の宿代はこちらで負担するので解決するまでいつまででも居てくれて構わんよ、宿はそうしたら”ホタルの里”というところにダブル一部屋、ツインを3部屋予約しておくように手配する」
「それでは皆で朝食を頂こう!」と野菜サラダが豊富な朝食をいただいて、その後皇帝が言って居た”ホタルの里”に向かった。
チェックインには早かったがさすが皇帝からの予約が効いて、10時から入れるようになっていた。
ここでの泊まりはイレギュラーにイリーナがジンと常に一緒に寝泊まりすることになった。
イザベラが不満タラタラ文句を言うが、作戦を剣士組と魔法師組に分けて動く場合イリーナがジンと作戦を立てるのに都合がいいからだけなのだが・・・。
皆がジンのところに集まりコーヒーを飲みながらショートケーキ、ティラミス、チョコレートケーキ、サバランを食べながら昨夜ジンが聞いた貴族の話をジンが皆に伝えた。
取り敢えず、エリオット侯爵の領地である、パラメーラにはいずれ行くとして、帝都に潜むエリオット侯爵の雇った影の軍団を全員潰しにかかることにした。
奥様達がケーキを楽しんでいる間にジンは<タブレット>の【GOD】をクリックして、『帝都に潜んでいるエリオット侯爵の手配した人達』と打ち込んでポチった。
帝都郊外も含めて表示させると、いるわ、いるわ、おそらく帝都の闇ギルドを侯爵が仕切っているかのごとく総勢500名近くいる。
「みんな聞いてくれる?今敵貴族の軍勢を調べたところ闇ギルドの魔法師や冒険者達が総勢500名近くいる。この中で魔法師に絞って先ずは倒して行く」
実はジンは総勢500名の侯爵の関係者を調べた時に魔法師がその中にどれだけいるかチェック済みだった。
魔法師は200人程の魔法師がいる。 今日だけでも100人程減らしておこうと考え、<タブレット>と【イレージング】を併用して<タブレット>に表示されている魔法師の赤点を、どんどん消していった。




