第69話 迷宮の都市ダンジョン−2
シルコレア帝国のクラフトという街の帝国最難関ダンジョン”迷宮の都市ダンジョン”に挑んでいるジンファミリーは20階層で初めて剣も魔法も効かない思念体の敵と戦い、なんとかジンの【ブラックホール】魔法で異次元の彼方に飛ばして討伐した。
残念ながら宝箱も飛んで行ってしまったが、ここで夕食を食べながら一夜を過ごすことにした。
【次元ストレージ】から『空飛ぶ車』を出して、乗り込み、順番にお風呂に入って、さっぱりした洋服に着替え、マナバイソンのステーキにガーリックパンと野菜コンソメスープと野菜サラダを出して、家にいるのと同じ感覚で食べれるのが良い!
「ここのボス部屋の魔物は、やばかったわね」とイザベラが最初に食事しながら、きりだした。
「初めてだね、剣も魔法も効かない相手って・・・、シールドを相手がかけて効かないなら分かるけど、煙相手に魔法を放っても素通りでしょうがないものね」とイリア叔母さんもいう。
アリシアが「ジン、結局あの黒い魔物は何だったの?」
「あれは、人間で言えば、恨みや悲しみ、辛さ、そう云った負の思いが寄せ集まった思念の集合体だそうだよ。だから思いを切れと云っても切れないように刀はつうじなかったんだ。空気相手に掌底破を放っても駄目なように物理的打撃も効かないので結局異次元に吸い取ってもらって消しとばした」
「あれに勝つには後は例えば俺がイザベラ、アリシア、イリーナさん、イリア叔母さん、ヒュイー達に対しての愛の深さの思いとか、この世界を救うのだといった強い気持ちを持った思いをぶっつけることで霧散させることしかなかった。でもその強い思いの後のことを考えると疲れ切ってしまうだろうと、自信が持てなくてより確実な方法をとったんだ!おかげで宝箱まで飛んでいってしまったけどね」
「宝箱なんて要らないわ!十分すぎるほどアイテムを私たちは持っているのだからジンが無事でみんなが無事なことが一番よ」とイリーナが締めくくった。
最近はイザベラの寝る場所を区切っていた仕切りがなく全員がオープンで寝ている。
もちろん、着替えなどはカーテンで仕切って着替えれるようになっているが、個室としてのイザベラの部屋が亡くなっている。
それについてイリーナが「イザベラ、個室の仕切りは要らないの?」
「だって、ジンと婚約したんだものもう、必要ないわ!」
「そういえば、アリシア、双子に妹のジュリアンには結婚すること連絡するのか?」とジンが聞いてきた。
「できたら結婚式に出て欲しいのだけど」
「それなら私が持っている『転移盤』でセモアとローズタウンを一瞬で行き来すればいいじゃない?」
「えっ、お願いできますか?」
「勿論よ、家族じゃない」とイリーナ。
「友達とかよぶんですか?俺この世界の結婚式なんて知らないから」
「ジンがいた世界ではどうなの?」とイザベラが聞いてくる。
「俺がいた世界では双方の両親と友達が参加してパーティーみたいな感じかな?それが披露宴と云って、その前に両親と本人達が神様の前で誓い合って、指輪を交換する結婚の儀式がある」
「ここでは、それぞれ職業のギルドが書類を発行して領主にだして結婚の証となるの、その後はジンの云った様に友達と親戚を呼んでパーティーだわね」とイリーナ。
「私たちは冒険者ギルドに提出して終わりだわね」後は仲間内で立食パーティーかしら?」
「アリシアはエルフだから、エルフの国にご両親がいるのじゃないか?」とジン。
「エルフの里はなかなか人が入りにくいから行かないし、呼ばないわ。デイマールにきた時にエルフの国を捨ててきたと思っているから」
「何だか聞くと重たそうな話だな!とジン。
「取り敢えずは明日にはここのダンジョンを踏破して、デイマール王国に行って許可をもらってくれよ」とぶっきらぼうにジンがいう。
「任せてくれ、駄目だと言ったらお腹に赤ちゃんがいると言って王様に諦めてもらう」とアリシア。
「あらあら、そこまで覚悟してるの?」とイリーナ。
ジンはどんどん話がそれて行くので、「取り敢えずは目の前のここの踏破を明日やりましょう。俺はそろそろ寝ます」
翌朝ジンはヒューイとアリシアとともに20階層のボス部屋で朝練をしている。
ジンは『剛力』の大剣を5000回、アリシアはジンが作ってくれたアダマンタイト製の大剣を同じ様に1000回振っている。
ヒューイは『神龍剣』に50キロの重さになる様に念じてそれを5000回振って切り上げた。
アリシアとヒューイがお風呂に入っている間にジンは座禅を組んで瞑想し、魔素の流れを感じてマナを自由に扱う訓練をしている。
特に昨日の様に禍々しい思念の塊と戦う場合に自分の魔力ではなく『気』、『念』を強くすることも課して瞑想して、ある程度納得して瞑想を解いた。
ジンもシャワーを浴びて着替えて、朝食を食べる。
「それじゃこれから21階層に向かいます」と言って『空飛ぶ車』を【次元ストレージ】に入れて、ドールを先頭に歩き出した。
21階層は平原ステージにワイバーンが2匹、黄龍が1匹いる。
イザベラとイリアがワイバーン1匹を連携魔法で羽を無効にした後、イザベラの【エアカッター】で1匹の首を切り落とした。
もう1匹はアリシアが【縮地】で一瞬のうちに間合いを詰めて首を切り落とした。
黄龍はジンが念を強く魔石にぶつけ一気に奪い取って倒した。
「ジンどうやって倒したの?」イリーナが聞く。
「昨日の件が有るので自分の思いと云うものを強く持つために念を強める努力をしようと思って黄龍の魔石に自分の思念をぶつけて奪いとったのです」
「凄いわね!」と今更ながら感心するイリーナ。
22階層は砂漠ステージ、スコーピオンキングが行く手を阻む。
『空飛ぶ車』から『魔道砲』で【砂の槍】を放って倒した。
さらにサンドモーム(砂モグラの魔物)を又もジンが強烈な念を送り魔石を破壊して2匹のサンドモームを殺して【アトラクト】で回収した。
ジンは意志の強さとか念を強めるとかの意味が少しずつだがわかってきた様な気がしていた。
今度レイス辺りと敵対した際は、【浄化】ではなく念そのもので押しつぶすことができるか試してみようと思った。
【マインドボム】とでも名前をつけようとジンは家に帰ったら<タブレット>の【GOD】に聞いて訓練の仕方を教えてもらおうと思った。
23階層、24階層、と順調にクリアして、25階層に到達した。
ボス部屋で、ミノタウロスの変異上位種がいる。
通常のミノタウロスより1、5倍ほどがたいが大きく、剣技スキルも100のレベルに到達していた。
ここは魔法師3人が協力して相手することになった。
まずイリーナが【アイスロック】を2重にして力でも取れない様にし、イザベラが【エアカッター】を2連発時間差で放ち、イリアが【ファイアボム】を顔と胸に分けて2発放った。
流石の上位種のミノタウロスも3人からのそれぞれの魔法には対処できず倒れた。
そばの宝箱を開けると『天候を司るリング』と書かれたリングがあった。
【鑑定】すると『30分だけ嵌めている人の周囲5キロ四方の天気を思いのままに変えることができる』とでた。
【次元ストレージ】に入れて回収した。
26階層は鬱蒼とした膝まで伸びた灌木が行く手を阻むフィールドだった。
上空でハーピーの群れが7人を襲う構えを見せている。
その数、およそ20匹いる。
イリーナがジンから貰った『滅亡の弓』に魔力を通して矢を構えると矢が光を帯びて弓から射られた瞬間に20本の矢になって、上空のハーピーに向かって飛んで行く。
全ての矢が、ハーピーの頭部を粉砕して、20匹が一度にぼたぼたと落ちて来て、全てジンが【引き寄せ(アトラクト)】で持って集めて、【次元ストレージ】に回収した。
27階層は密林ステージで、温度が30度、湿度が90%あり4人の女性陣には辛いところだが事前に彼女たちにジンが『耐熱』、『耐湿』、『耐撃』、『耐毒』、『耐寒』を【エンチャント】して有るので、今度はシャツを通した豊かなバストがジンを悩ますことはない。
前方20メートルほど先にスフィア・フロッグの大型化した変種が紫色の舌をチョロチョロ出し入れしてゲロゲロないている2匹がいた。
イザベラが【エアカッター】を放ったが、当たる瞬間風を感じてぴょんと1メートル程ジャンプして2匹とも攻撃を避けた。
ここもイリーナが『滅亡の弓』の弓を構えて解き放つと1本の矢が2本になりスフィア・フロッグの頭にあたって殺した。
さらに進むと長さ10メートル、太さ1メートルの頭が2頭ある双頭の大蛇が太い幹に絡みついて睨んで来ている。
一つの頭からは毒液を飛ばし、もう一つは火を吐く大蛇だ。
ジンが【鑑定】すると特に再生とかはしないが、毒は強力な酸で、当たると一瞬で皮膚を溶かす。
吐き出す炎の温度は1000度迄達すると表示された。
ここはイザベラが【エアカッター】を2連発で双頭の部分に放ち、イリアが【火炎槍】を4発同時に発動して放った。
【エアカッター】が二つの頭を切り落とし、【ファイアランス】が胴に2本づつ突き刺さり死んだ。
28階層は岩がゴロゴロしたフィールドに岩竜が1匹と岩ゴーレムの巨体が1体いる。
ゴーレムは【鑑定】すると再生能力が有り、魔石を破壊しない限り岩が砕けても、また集まりゴーレムを形成すると出ている。
岩竜はジンが掌底破で打ち取り、岩ゴーレムはドールとアリシアが魔石を『魔剣』で破壊することに成功して討ち取った。
29階層は火山ステージで、キマイラが1匹、アウルベアが2匹、後ろ20メートル後方で黒龍が火炎咆哮を吐いて威嚇している。
キマイラをイリアの【アースニードル】で腹を串刺しにして打ち取り、アウルベアはヒューイが2匹を『神龍剣』で一瞬にして首を切り落とした。
黒龍に対しては、アリシアとイリーナが対応する。
まずイリーナが【ウィンドカッター】を強烈に4発放ち、切断するところまでは行かないが傷を付けたその一瞬の隙に、【縮地】でもって黒龍の首のところまで近づいたアリシアが【飛翔】し『魔剣ジンの剣』を横に薙いだ。
首がずれていき、ゴロッと岩肌に転がって、死んだ。
30階層遂にラスボスは金獅子がいた。
ジンがすぐさま【鑑定】すると、『体の金箔が剣を弾き、咆哮を聞くと耳を破壊して脳に振動が到達して破壊される、魔法も金の体が跳ね返す』と表示された。
なかなかの相手だとジンは『煌剣』を構えてゆっくりと対峙した。
金獅子が「ガウォー!」と咆哮を上げるが『状態異常耐性』が限界値を超えているジンには効かない。
『煌剣』を光の速さで金獅子の首を取りに行った。
金獅子もそれを素早く目にも留まらぬ速さでバックステップで紙一重に躱すが、ジンが更にそれを読んで1歩前に瞬時に出て『幻影』に魔力を込めて腹に突き刺し、腹を横に裂いた。
金獅子はたまらず距離をとるが、内臓が腹から飛び出し動きが急激に弱まったところを『煌剣』が首を切り落として遂に金獅子を討ち取った。
そばに金色の宝箱が有り、開いてみると『マジックアイテム創造キューブ』と書かれた四角のキューブが入っていた。
【鑑定】すると、『欲しいアイテムを念じてボタンを押すと念じたマジックアイテムが出てくる』と表示された。
すでにジンは1個『万能創造キューブ』をもっているが、これは『マジックアイテム』に特化したキューブのようだ。
すぐに【次元ストレージ】に回収して、ダンジョンコア、これが又今までで一番大きいコアだったが、回収して、『転移盤』に皆が乗って1階層の出口に戻った。
歩いてクラフトの冒険者ギルドに行き、素材置き場に「”迷宮の都市ダンジョン”踏破した討伐魔物を全部出します」と言って山のように置いていった。
素材置き場のスタッフが驚いて、全員で作業に取り掛かり始めた。
「ジン殿、2、3時間かかるのでどこかでお待ちいただいて、3時間後にギルド食堂にいてください」と言われ、ジン達は昼食を食べに近くの定食屋に入った。
「すみません!昼定食6人前おねがいします」とジン。
「はい、きょうはファンゴボアの生姜焼きにケルピーのスープと野菜サラダにパンが食べ放題だよ」と言って食器を置いていく。
ジンが「皆んな、お疲れ様。ダンジョンで2日掛かって踏破も初めてならこれだけの魔物や珍しい魔物と対戦したのも初めてで皆のスキル、戦闘力は今回で大幅に上がったと自信をもってくれ、今回は最高の収穫だった」
女性3人はエールでジンとヒューイとイザベラが果実ジュースで乾杯して踏破をお互い祝福しあった。
「それにしても、今回は20階層の思念の塊との戦いや、ラスボスの金獅子との戦いなど他のダンジョンとの違いがすごくあってよかったわね」とイリーナが疲れた顔だが清々しさを湛えて言った。
「これで、いよいよダンジョン踏破よりも大変なアリシアの件ね!」とイザベラが言う。
「ここクラフトからデイマール王国のキロッケン迄【転移】で移動してその後は『空飛ぶ車』で街道を走りながら王都のシューベルまで3日ほど掛けていきましょうか?」とジン。
「そうね、キロッケンからルルカ、ソルンと泊まって、シューベルにいく感じだわね」とイリーナ。
「アリシア、それまでにジンと既成事実を作っておけば?」とイリア叔母さんが爆弾発言をした。
「ななんてこと言うのですか、イリア叔母さん」とジンが慌ててしまう。
「だって、結婚するのだし、ダメなら子供が出来たと嘘を言うぐらいなんだから一応この旅でみんなとジンは関係を持ってしまって覚悟を決めなさいな」とイリア。
そんな話をしていたら定食が来た。
食べながらジンは必死で逃げる口実を考えていた。
ファングボアの生姜焼きの味も、ケルピーのスープの味もわからないまま時間だけがすぎて食べ終わってしまった。
ジンがボソッと「でも、俺としては皆と結婚するまでは清い体で・・・」と言いかけたら、イリーナが「何古臭いこと言っているの?今時この世界は婚前交渉は15歳から認められているのよ?ジンだってあちらの世界で20歳を超えていたんでしょ?どうせ私たちと一緒になるならさっさと覚悟を決めなさい」と一喝されてしまった。
「ルルカでは先ず一番若いイザベラね、ソルンではアリシア、そしてシューベルでイリアと私こんな順番で夜を過ごしましょ!」とイリーナが取りまとめてしまった。
ギルドに戻って、お茶を飲みながらジンはモジモジして待っていると納品書が出来上がり、受付にカードと納品書にダンジョン内地図と巨大なダンジョンコアをだした。
「ええええ、”迷宮の都市ダンジョン”を踏破したんですか?ちょっとギルドマスターを呼んで参りますから少々お待ちください」
しばらくして人間族の中年の女性が降りてきた。
「この度は未踏破で誰も到達しえなかった”迷宮の都市ダンジョン”を踏破、おめでとうございます。私はギルドマスターのデボラと申します。このダンジョンを踏破したことでジン様は自動的にSSSクラス、他の皆様もSSクラスに全員1ランク昇格とさせていただきます」
「あの〜、皇帝とかに相談しなくてもよろしいのですか?」とジンが聞く。
「はい、このダンジョンは難易度が特別に高いのでギルド協会が踏破した時点で1ランクアップを全国のギルドが認めております」
「それにしても、ダンジョンコアがすごく大きいですわね!討伐数も半端ない数で、さすがお噂のジン様達だわ。清算金もこのギルド始まって以来の金額でした、受付から新たなカードと金額をお受け取りください」
「有難うございます」とジンが言って、受付嬢から皆の新しいカード7枚を受け取り清算金白金76枚、金貨97枚、銀貨95枚、銅貨95枚をカードに入金してもらいギルドを後にした。
『空飛ぶ車』に乗り込み一瞬で出入国のところに着き、すんなりデイマール王国のキロッケンの街に入った。




