第58話 ハリス侯爵にセモア定住を報告
セモアに家を建てて、そこの地をベースに魔法師3人と、ヒューイやドール、それにデイマール王国のSランクのアリシアを弟子に加えて修行することにしたジン。
キースに戻ってくるハリス侯爵からジンがレンブラント王国に戻って来たのなら侯爵邸に一度来てくれというのでセモアに家を建てたことなどを話したり、アリシアを弟子にした件を話そうと、侯爵邸に伺った。
客間で10分程待っていると、侯爵ご夫妻と娘さんが揃って入って来た。
「ジン君久しぶりじゃのう、おお、きょうは珍しいご婦人を同伴じゃのう」
「ハリス侯爵様お久しゅうございます。先日よりジン殿の弟子となりスキルアップの旅に同伴させていただいて、技術を習っているところです」
「えっ、アリシア殿が?良く王様がお許ししたのう?」
「はい、ジン殿に我が国の私を含めて、エドモンド騎士団長も模擬戦で一瞬にして敗れ去り、王様が今のレベルでは国を守れんと心配して、ジン殿の弟子入りを許してくれました」
「して、どうですかな?ジン先生のご指導は?」
「強さの一端を見せていただきました。まだまだ足元にも及びませんがなんとか頑張る所存です」
「ところでジン君、スキルアップの旅はいいのだが、彼女達の成長はどうかな?」
「ご安心ください、イリーナさんは元々王立学園の教頭をしていただけ有りかなり完成された魔法師ですし、イリアさんもほぼ完成された魔法師です。更に無属性魔法を取得し、自分を守るシールドや魔法を跳ね返すアイテムも得て、ほぼ無敵に近くなって来てます。もっとも成長して来ているのはイザベラで4属性に目覚め、全ての魔法に著しい成長を見せております」
「ついては侯爵様、常に旅ばかりしても、ということで、セモアの訓練場を備えた家を購入してそこを拠点にすることにしました。そこから未踏のダンジョンを踏破したり、新たな魔法を考案したりして日々訓練する予定です。幸いセモアは王族派の男爵様が治めている土地なのでその辺も考慮してセモアにしました」
「おお、レンブラント王国に定住してくれたのだな、それは喜ばしい!実は魔法師の3名の成長度が心配で家内が一度状況を聞きたいともうしてな、それと噂話でしかジン殿の活躍が入らないのは何とも心配しておった」
「スタンピードを沈めたり、ダンジョンを数カ所踏破してそれなりに技術は上がっているとは思ってます、セモアではじっくりアリシア殿とも訓練して新たな境地に到達したいと思っております」
「そうだな、ジン殿は転移も使えるし、『遠距離通話器』が有るので一瞬で駆けつけてくれるから今後もよろしく頼むな」
フェリシアが「ジン君、公国のスタンピードを一人で魔物2万を灰にした神級魔法インフェルノを使ったと聞き及んでおりますが本当ですか?」
「はい、公都を【シールド】で包んで守っておいて、魔物達を【インフェルノ】で灰にしました」
「2万の魔物を全部ですか?」とフェリシア。
「いえ、2万匹の内3/4匹相当ですね、残りはヒューイが同程度の火炎咆哮で一瞬で1/4を消してしまいました」
「何でも40メートルを超える巨大な黒龍がその原因だそうですが、その黒龍さえもジン君が一瞬で消しとばしたとか?」
「ああ、あれは新たな『マジックアイテム』の試し打ちをしただけですがね」
「簡単に言いますが45メートルを超える巨大な龍を一撃で倒せる人は貴方以外に存在しませんわ!」
「今度久しぶりにイザベラにもお会いしたいので、父の王都に行くときにでも同伴して、ジン君の新居を訪ねてみたいわ」
「時間が有るときにどうぞいらしてください」
「王都の”魔女の道楽”の店は売ったのかな?」とハリス侯爵。
「いえ、何でも肉屋さんに賃貸しているそうです」
「ということは、いずれ戻る可能性も有ると?」
「そうですね、行ったり来たりしてもいいかと・・・」
「わかり申した、近く王都に行くときに儂も貴殿の新居とやらを訪ねてみたいものだ、いずれ伺うとしよう。いや、きょうは忙しいところわざわざ来てもらってすまなかった」
「お時間が有れば是非我が家に皆さんでいらしてください」ジン達はそう行ってハリス邸を辞した。
ハリス侯爵様は何となく、他に話をしたかったようだがアリシアが居たので遠慮したようだった。
ジン達はキースの街に戻り、ドワーフのデロスの親父の武器屋に寄った。
「親父さん、ご無沙汰!」
「おう、ジンの坊主か、元気か?」
「親父さん、紹介するよ、こちらデイマール王国のSランク冒険者ギルマスのアリシアさんだ」
「この親父は口は悪いが腕は確かで、剣を見る目はピカイチだ!」
「何だ!ジン、口が悪いは一言多いだろう。ところでアリシアって王都のギルマスのアリシアか?この世界で3人のSランクの一人の・・・」
「デロスの親父さん、3人のSランクの上には一人の青年が居るのをわすれてません?」
「そうだったか?」とデロスはとぼける。
「親父さん、時々俺とアリシアの剣を持ってくるから研ぎを頼むね、そうだ、前にダンジョン制覇して2本もミスリル製の剣が手に入ったから置いて行くよ、俺には全く必要ないから」
「お前、前回も白金数枚の剣を置いて行くし、今回は2本もいいのか?」
「いいよ、いつも『煌剣』を見てもらっているし、世話になって居るから今後はアリシアもよろしくね」
「おうよ、ヒューイちゃんも入れて3人は特別にサービスするぞ」
「それじゃ、おっちゃんまたくるね」とジン達は『空飛ぶ車』に乗って一瞬でセモアの新居に【転移】した。
「アリシア、付き合ってもらって申し訳ない、お陰で早く侯爵のところから逃げれたよ。なにか言いたいこともあったようだけど逃げれたよかった」
「ジン君はデロスさんとは随分親しそうでしたね」
「うん、この『煌剣』を安く売ってくれた人だからね」そういうとジンは機嫌よく「お茶とケーキを食べたら、訓練場で模擬戦を昼までやろうぜ!」
「相手してくれるのか?」
「ああ、そのために弟子入りしたのだろう?
ジンたち3人はケーキと紅茶を飲んだ後、地下の訓練場で昼近くまで剣での模擬戦をした。
最初はジンとアリシアが対峙してアリシアが攻めまくるが、丁寧にジンが対処しながら、気になる攻め方を注意して繰り返し攻めさせた。
次に、少し休憩したのち、ヒューイとアリシアが戦う。
ジンの時と違い、アリシアが攻めると、隙をついてヒューイも攻める。
アリシアがいつの間にか防戦一方になり胴に峰打ちで攻撃を受けて気絶する。
ジンが直ぐ【ヒール】をかけて、休憩して居る間にヒューイとジンが対戦する。
ものすごい速度での攻撃をジンはいとも簡単に躱して、守り、いつの間にか小手をとってジンが勝つ。
アリシアの目には未だ彼らの剣筋が見えない。
どのくらい訓練すれば見えてくるのだろう、見えるまでは何として頑張ると心に誓った。
アリシアとジンは訓練場に併設したシャワーに入って、着替えてスッキリしてから1階に上がり、昼食の準備に取り掛かる。
今日は久しぶりにカツカレーにする。
『美食の皿』にジンが日本で食べた美味しいカツカレーを念頭に置きながら魔力を少し流して6皿を作り出し、御新香に福神漬けとスープも出し、少し疲れていたので手抜きとは思いながら、『マジックアイテム』に頼った。
またもや大騒ぎするほど好評で、賑々しく楽しい昼食となった。
特にアリシアは最初見た目でカレーを凝視して食べようとしないが、一口食べたらたちまち虜になった。
小1時時間お茶休憩してから、アリシアはヒューイと模擬戦をし、イザベラとイリア、イリーナは3対1でジンと魔法の模擬戦をする。
ジンは3人の魔法を決して【ディスペル】はしない、『煌剣』で弾くことはOKにして、模擬戦をする。
ヒューイとアリシアの戦いは、ヒューイの動きにどれほどアリシアがついていけるかなのだが、なかなかついていけない。
アリシアの【縮地】とヒューイの【縮地】や【瞬足】のスピードの差は歴然だった。
模擬戦を終えたら彼女に100倍時計の『マジックアイテム』を与えようかと考えて居るジン。
しかし身内でもなく他国の人間にかなりレアな『マジックアイテム』をあげてもいいものか悩んでいた。
イザベラとイリーナ、イリアは3人でそれぞれ種類の違う攻撃魔法を同時にジンに仕掛ける。
イザベラは得意の【エアカッター】、イリーナは【ファイアアロー】、イリアは【アーススプラッシュ】を放った。
対してジンは『煌剣』を一閃して全ての魔法を霧散させる。
ジンが3人に「俺が剣で霧散させた瞬間直ぐに3人は【シールド】をかけて自分の身を防いで!さもないと、【縮地】や【身体強化】で間合いを詰められて、剣で切られたり、魔物だったら首を食われたりしますよ」
「ジンのいう通りだわ、剣で防がれた瞬間直ぐに自分の身をまず守り、次の行動に移るのよ!」とイリーナが二人に告げた。
3人は直ぐ【シールド】をかけ、次の魔法を考える。
イリーナが【ファイアストーム】と【ウィンドストーム】を掛け合わせて火炎嵐を作り出してジンを襲う。
ジンが【アースウォール】でそれを防ぐ。
イリアが【アイスニードル】を空から降らせる。
ジンは【縮地】でその場から一瞬で30メートル程移動する。
イザベラが【アイスロック】で足を狙うが又しても『煌剣』で霧散させる。
何度繰り返しても3人の魔法はジンに届かない。
最後はジンの【結界】の前に纏めて囚われて模擬戦を終えた。
一方アリシアを見ると訓練場の床に大の字で横になりギブアップ状態で気絶寸前だった。
ジンが【ヒール】をかけてやり、皆で地下と1階、2階の3箇所に分散してシャワーを浴びて、リビングでお茶とケーキを食べる。
アリシアがシャワーを浴びて居る間に、ジンはイリーナに相談する。
「イリーナさん、今の状態でアリシアは少しは強くなって居るけども、動体視力が鍛えてないせいで、ヒューイの動きについていけてないんだよ。剣は俺が魔剣をあげたのでいいけど、100倍時計のアイテムを上げるというのはどうでしょうか?」
「ジン、将来的にジンの家族になるならいいけど、今はやめなさい!動体視力を鍛えるように言って、マジックアイテムは剣だけで十分よ」
「わかりました」そうします。
ジンはイリーナに率直に従った。
アリシアがシャワーを浴びて出てくる。
アリシアに、ジンは動体視力を高めるためにドールとしばらく模擬戦をして、最初はアリシアが受けられるギリギリの速度で攻撃を受け続ける。
それをしばらくして、ドールに少し早めてもらう。
受けきれないが徐々に慣れてきて受けられるように慣れれば再び少し早くする。
それを地道に繰り返す事を朝練の素振りの後に別メニューでやる事を告げた。
[ドール、明日から朝練の素振りを終えたら、アリシアに稽古をつけてやってくれ。最初はぎりぎり彼女が受けれる速さ、それを何回か続けて、楽に受けれるようになったら、少しだけ早くして、最初は受けれないが徐々に練習すれば受けれるようになるだろう?それを繰り返してくれ]
[畏まりました、ご主人様]
ドールに念話で頼み、晩御飯の準備に取り掛かった。
今晩のメニューは以前購入していた魚介類を食べてないのでお好みずしにして生魚と貝類を少し片付けようと考えた。
刺身用に魚を切って、大皿に乗せ、もう一つのさらには貝類、大葉、ネギのきざみ、かんぴょう、きゅうり、などを乗せ、海苔をみんなの前に!置き
わさびと醤油を用意して、皆が着席するのを待った。
冷蔵庫からイリーナ、イリア、アリシアにエールを出してあげる。
「ジン、冷蔵庫ってこんなにも冷えるの?」とイリーナ。
「冷蔵庫も氷も作れるから、温度を調整して野菜を入れとくところと肉を入れとくところとケーキを入れとくところなどを分けて入れとくんです」とイリーナに説明する。
アリシアは食べ方を知らないのでジンが教えてあげる。
「海苔の上に酢飯を薄く乗せて広げ、そこに食べたいもの、例えばエビを乗せて、この緑の山葵を少しのせ、海苔を巻いて醤油につけて食べる。どう?簡単でしょ?」
アリシアは見よう見まねで作って、マグロの刺身に山葵を付けたが付けすぎて鼻をつまんで涙を流していた。
「アリシア、山葵は付けすぎずかと言って少なすぎずだぞ!」
「緑茶を飲んでツンと来たのを直せよ」
アリシアは緑茶がこの時ほど美味しく感じたことはなかった。
最初の頃は生の魚を食べる習慣がこの世界にはあまりないのかなかなか魚に手を出さない3人だったが、この前食べて刺身の美味しさを知り、今日は次から次へと自分で作っては食べて居る。
ヒューイだけがあまり得意でないようで、肉系を入れて食べて居る。
アリシアも慣れてきて、エビやタコやキュウリにかんぴょうと包んで食べて、前に朝市で買った魚介類はほぼ食べ尽くしてくれた。
こうして、セモアでの2日目の夜が終わろうとしていた。




