第34話 デイマール王国の王都
ジンと他2パーティーとともに、商隊の護衛任務をデイマール王国の王都まで無事に任務を完了して、皆と王都のギルドで別れたジンとヒューイは王都シューベルに宿を1泊取って泊まることにした。
”流れ星”と云う宿を<タブレット>オススメの宿でジンは二人でそこに泊まってゆっくり湯船に浸かりながら明日からの旅をどうするか考えていた。
ヒューイが少し疲れているようなので、もう1泊このシューベルに泊まり街をゆっくり回って楽しもうと思った。
とりあえず明日、ヒューイに聞いてみてからだと、ジンもベッドに横になり意識を手放した。
翌朝、7時に二人で食堂に降りてきて朝食を食べる。
「ヒューイ、少し疲れているのか?昨日はバタンキューだったぞ!」
「私、他の人達との仕事はあまり好きじゃないの!話をするのが億劫で嫌。パパと回るなら気を使わないし楽なんだけど・・・」
「そうだな、今後はあまり護衛依頼とか他チームとの共同の請負はやめような!」
「きょうは、ドールと3人で街中を散策して明日この街を出るか?」
「そうしましょ、でも街中みても洋服屋とか魔道具やぐらいなら魔物討伐の方が面白いからそちらで良いわ、ギルドに行ってみようよ、パパ」
宿でもう1泊延泊できるか聞くと大丈夫だとの回答で、もう1泊銅貨50枚でカードから引いてもらった。
ドールにも声を掛けて、3人で冒険者ギルドに向かっていき扉を開けた。
ヒューイが小走りに掲示板を見に行くと、王都から北に8キロ行った村の調査依頼が載っていた。
ジンがこの依頼を取って、とりあえず受付嬢に聞いてみる。
「この調査依頼というのは何を調査するのでしょうか?」
「あぁ、この村の調査依頼ですね?この村から一人の依頼者がこのギルドに来て、村人の数十人が1日で人が変わったようになってしまった、今日もまた5人ほど人が変わったように凶暴になり、人相までキツくなってあと数日したら全員がおかしくなるのでは?」と依頼が来たのです。依頼金額が少なかったのですがBクラスの人間が一人3日前に向かったのですが戻って来ていないのでギルマスに相談したところランクを上げてAランクの人間を一人だしたのが一昨日なのですが、これまた帰宅しなくなって、ついにはギルド依頼として金額も金貨20枚に引き上げました」
「それって、結構緊急自体と違いますか?」
「それでは私たちが行って様子を調べて来ます、不明のBクラスの冒険者とAクラスの冒険者の安否も確認して、いたら連れて帰って来ます」
「ヒューイ、ドールこの変てこな依頼を受けてみよう、意外な方向に転ぶ可能性も有るぞ!」ジンが言って、ギルドに言われた村に調査に出かけた。
ジンは村の名前を<タブレット>に打ち込み【MAP】を掛けて並行して【転移】を掛けてその村の1キロ手前に【転移】した。
敢えて1キロ手前にして、周りの様子をゆっくり見ながら【サーチ】を掛けながら進む。
【サーチ】には敵愾心を持つもの、殺意を持つものを赤点滅するように【MAP】と同期させた<タブレト>の画面に表示させた。
すると、何と村の8割強の住民が赤く点滅した。
「ヒューイ、バンパイア辺りがいるかもしれんから、噛まれない様にな!」
「パパ何言ってるの?私は噛まれても耐性有るから平気よ!」
「あっ、そうか!俺もだ」
「じゃゆっくり行こうか、決して殺すなよ、意識だけ奪え!」
ジン達3人はゆっくり村に入った。
いきなり男が叫び声を出して襲ってきたが、ジンは軽く手刀を当てて、意識を刈り取る。
【鑑定】すると、バンパイア化された状態。1週間すると夜しか行動出来なくなり、バンパイアになり、元には戻れない。
「ヒューイ、ドール未だ完全な魔物になっていないから全員捕獲して元に戻すぞ!太陽が有るうちが勝負だ」
「「了解しました」」
ジン達は赤点滅を頼りに次から次へと意識を奪い、総勢97名の村人を束縛した。
未だ居なくなった冒険者2人が残っている。
見ると赤い点がひとつと、傍に点滅する赤い点が二つある。
ジンは〈タブレット〉の赤い点をポチって【イレージング】と唱えた。
5メートル先の納屋の扉の内側から「ギギヤァー」と凄い叫び声が聞こえ、その後はひっそりと物音ひとつ聞こえない。
ジンが扉を蹴り壊して入るといきなり二人の男が掴みかかって来たが、1人の腹に正拳、1人の首に手刀を食らわせ意識を奪った。
再度【サーチ】を掛けると赤い点は消え、黄色の点滅が99個点灯していた。
「ドール、この二人を外に担いで、村人達を捕獲した所迄運んでくれ」
ドールは軽々と二人の冒険者を担いで、97人の村人達の所に持ってきた。
ジンが【エリアハイヒール】と唱えると冒険者二人を含めた99人は光に包まれやがて目を覚ましてキョロキョロ辺りを見回し、お互い手を取り合って喜んでいる。
「ゴホン!あなた方はこの数日間、バンパイアになりかかって居ました、あと数日で完全にバンパイアになり、夜しか行動出来ない魔物になる所だったのですよ。仲間を襲っては増やしていたんですよ!正常な残り20数名は皆さん、外れの家に施錠して未だおりますので今呼んで来ますから、それまでこちらに居てください。それと、そこの冒険者のおふたりさん、大丈夫かな?」
「あぁ、助かった!バンパイアの奴はどうした?」
「殺して、霧になってきえたよ」
「そうか!恐ろしい相手だった」
そんな会話をしてたら、ヒューイが正常な村人達を連れて来て、皆で再開を喜んでいた。
ジンは村長にサインを貰って、バンパイアは死んだからもう大丈夫だと伝え、冒険者二人を連れてギルドに戻った。
ギルドの受付嬢が慌ててギルドマスターに報告しに2階に上がった。
階下に降りてきたのはまたもやエルフの女性でジンよりも若く見える。
「初めまして、私は王都シューベルのギルドマスターのアリシアよ、宜しくね!」
「俺はレンブラント王国の冒険者ジンだ」
「あぁ、貴方がレンブラント王国の噂の新人さんね?確かに噂以上ね」
「それで、今回の調査、ありがとう。BランクとAランクの冒険者を一度に失う所だったわ。村人達は無事だったの?全員元に戻ったの?」
「あぁ、全員にハイヒールを掛けたから完全に大丈夫だ、こちらの冒険者さんもハイヒールを掛けて治しておいたぞ!」
「ハイヒールも使えるのね?すごいわ!それでバンパイアは?」
「殺して霧になって消えてしまったよ!」
「まぁ、太陽に当たれば霧散するからしょうがないか!冒険者二人の証言もあるからバンパイアが犯人で間違い無いということで構わないわ。今回は本当にありがとう。今回は冒険者も連れて帰ってくれたので金貨30枚にするわ」
「ところでひとつお願いが有るのだけど、私とこれから模擬戦してくれない?貴方ハリス侯爵に勝ったのですって?私と彼ともう一人だけがこの世界でSクラスの冒険者なのよ、ハリスが言うには貴方は恐らくSSSクラスだなどと言ってたから一度手合わせしたかったの、ねぇ、お願い!」
「俺は構わんが、もう結果は貴女もわかるんじゃないか?」
「あら、まぐれって事も有るわよ!」
そう言って、ジンとギルドの訓練所に向かった。
副ギルドマスターと受付嬢数人、ギルドにいたAランクの冒険者2名とBランク5名程が一緒に見に来た。
「貴女の得意な物で良いぞ、エルフは弓が得意と聞くが?」
「それは一般論、私は例外のSクラスよ」と言って模擬剣を出すことなく真剣を構えた。
ジンも『煌剣 』を構え対峙する。
アリシアが【縮地】で一瞬でジンの懐に入って斜め左側から切り上げ勝ったと思った瞬間、ジンはそこにはおらず背中を手で押されてしまった。
「未だやる?」とジン。
「アリシアさんの【縮地】は遅いよ。本当は迎え撃っても良いけど、万が一寸止め出来ず怪我させると不味いから、間合いに来るまで待っていたんだ」
「完敗だわ」
「アリシアさん、なんで魔法を使わなかったの?俺に勝てる勝機が有るのは魔法プラス剣じゃないと剣は俺の最も得意とするところだぜ!」
「貴方の最も得意な剣で勝ちたかったのよ!」
「まぁ、意気込みは買うがな・・・」
ギルドに戻りアリシアから精算金、金貨30枚を貰ってギルドを後にした。
ジンとヒューイはギルド近くの定食屋に入り、マナバイソンのステーキにケルピーのスープとパン食べ放題、サラダ食べ放題でお腹を満たした。
「ヒューイ王都を歩いてみるか?」
「うん、武器屋さんとか、魔道具屋さんを見て回りましょ!」
ジンはヒューイとドールを連れて先ずは定食屋の近くから順番に回ってみる。
最初は魔道具屋に入った。
驚いた事にジンが作ったマジックテントが倍近い値段で売りに出て、ヒューイと笑ってしまった!
"魔女の道楽"の参考にと、どんな品物を置いているのかみていると魔法を発動しやすくする杖がやたら多かった。
魔力を増幅させると言うより、持ち主の魔法特性を杖を通して具現化しやすくしてあげる杖のようだ!
「パパは何だかんだ"魔女の道楽"の事、気にかけてあげてんだね!」
ジンはヒューイに突然痛い所をつかれ「下宿人が大家の所を心配するのは当然だろ」と顔を真っ赤にして言った。
「ヒューイ、ドール次、次の店行くぞ」
「何慌ててるの?パパ」
「慌ててなんかいないぞ、色々見て見ないとな!」
次に武器屋に行く。
魔剣の類も有るがジンの付与魔法でできる以上の物は無かった!古代人の『アーティファクト』なども見当たらなかった。
次に行った魔道具屋に面白いカップが有る。
カップを翳すと冷たい水がカップ一杯になるマジックカップだ。
「親父さん、これは幾ら?」
「ああ、このカップは金貨3枚で買得だぞ!」とオヤジ。
「それじゃこれください」
ジンはカードを出して買った。
「パパ、『美食の皿』ででも作れるじゃない、どうして?」
「ぱっと冷たい水を飲みたい時はこれの方が直ぐに飲めるじゃん」
後は2軒程見て回ったがたいしたものはなくお茶屋さんに入って冷たい紅茶を二人で飲んだ。
「なぁ!ヒューイ、冷たい飲み物も時としてとてもうまく感じるだろ?汗かいて、密林ステージや砂漠ステージで喉乾いたときに『美食の皿』の上にカップを出してそれから水を出すように念じるより、さっと、カップを出すだけで美味しい妻たい水が飲めるんだぜ」
「そうねぇ、私にしたらそれほど変わらないと思うけどなぁ」
「『美食の皿』だとカップを2個用意するだろ?だがこれだと1個のカップを出すだけでヒューイと俺でググーィっと飲むんだぜ、それって良いじゃん?」
「ん?パパと同じコップ・・・、間接キスかぁ!いいわね!」
「お前、発想がおかしいだろう!冒険者がお互い一つのカップで喉を潤す、助け合うってことに感動するところだろ?」
「まぁ、ヒューイには少し常識を教えていかないとな」
「パパに常識?だいたい非常識なパパに言われたくないわ」
「お前、生まれたてなんだぜ?」
「でも、パパより周りをちゃんと見て数百倍の知識をあっという間に蓄積させたわ」
そんな会話をして、お茶屋を出て王都の街を更に散策する。
途中男3人に絡まれている女性を助けたり、屋台のオークの照り焼きを食べたりして、宿の方に戻りながら歩いていると、後ろから豪華な馬車が前後に騎馬隊を引きつれ、貴族街に向かっていた。
その時、4歳ほどの男の子がリンゴが転がったのか、道に急に出て来て道の真ん中に転がったリンゴを拾おうとしていた。
騎馬隊の馬が驚いて前足を急に上げ、乗っている騎兵を振り落としてしまった。
驚いた馬が暴れて振り落とされた騎兵が、すごい剣幕で剣を抜いて子供を切り捨てようとした時、その子の母親が気が付いて悲鳴をあげる。
まさに騎兵の剣が子供の体を斬ろうとした瞬間、ジンが【瞬足】で子供を抱えて母親の元に戻した。
騎兵は全く人の姿を認識できないでいたが、母親の元に戻っている男の子を掴みかかろうとして、ヒューーイに止められた。
「兵隊さん、子供には悪気がないのだから許してあげて!母親もあのように謝ってるじゃない」
「うるさい、平民のくせにあオレリア王女様の騎士団の邪魔をする気か!」と今度はヒューイに向かって剣を振り上げるが、ヒューイが騎士の剣を素手でポキリと折ってしまった。
騎士はおられて更に頭に血が上り、殴りかかろうとするが逆に片手で飛ばされて、他の騎馬隊の馬の腹にまで飛ばされてしまった。
騎士団の中の隊長らしき人間が馬から降りて来て、ヒューイの方に向かって来て、「お嬢さん、我が部下が大変失礼なことをした。馬が驚いたぐらいで落馬する程度の騎兵は鍛え直す、許してくれたまえ!」
「いえ、子供が無事なので構わないわ」
更に騎士団長は「母御、子供に怪我がなくてなりよりだ。申し訳なかった」っと、子供の頭を撫でながら、母親に頭を下げた。
そして、騎士団長は更にジンに近寄り「君が助けてくれて、事なきを得た、礼をいう。【瞬足】の技、見事だった、冒険者かね?」
「ああ、この国ではないがレンブラントの冒険者をしている」
「失礼だがジン殿では有るまいか?」
「ああ、そうだが、何で俺の名前を?」
「ここのギルマスのアリシア殿から聞いたばかりだ」
「えらく情報が早いな!アリシアが言っていたもうひとりのSランクとは貴方のことですね?」
「アリシア殿がそんな話を?」
「ああ、この世界にはハリス侯爵様とアリシアともう一人Sランクがいると聞いたばかりだ、お陰で模擬戦までさせられたがね」
「アリシア殿がジン殿はSSSクラスの化け物ともうしていた、儂はこの国のオレリア王女様の近衛兵団長をしておるエドモンドと申す。大変失礼をした」
エドモンドがジンとあまりに長話をしているので馬車から一人の女性が降りて来て「エドモンド、どうなさったの?」と団長に近寄って来た。
歳は13、4歳の可愛い上品そうな娘が団長に声をかけて来た。
「ジン殿、失礼」団長が慌てて姫の所に行って、何やら話をすると、オレリアがジンの方に来て、「坊やを助けて頂きありがとう!私の配下にあのような乱暴者がいたことに恥じております、すみませんでした」
「いや、謝るならあの母子に謝ってくれ、俺は別に切られかかった訳ではないからな」
「そうですわね」そういうと、つかつかと親子のそばにより「坊や、怖がらせてごめんね!お母様にもし大変失礼しました、ごめんなさい」
「王女様、とんでもございません、息子がご迷惑かけてこちらこそ申し訳ございません」と消え入りそうな声で恐縮していた。
ジンのところに戻った王女は「ジンさんとおっしゃるのね?アリシアが先ほど簡単に負けたと悔しがっておりましたわ。王都には何泊ご滞在ですか?」
「あすにはソルンに向かうつもりだ」
「あら、それは残念ですわ折角レンブラント王国の宝と言われる方と知り合えたのに」
「わははは、私が宝ですか?とんでもない、路傍の石コロです」
「ジンさん、色々強い方とか、魔法のすごい方と模擬戦をしてみたくはありませんか?こう言っては申し訳ありませんが、レンブラント王国にはハリス侯爵様しかいらっしゃらないけど、我が国には団長はじめジンさんが興味を惹かれる騎士、魔法師が結構いるのですけど・・・」
「色々強い人に倣って、技術を高めたいとは思いますが、剣に関してはだいたいアリシア辺りでわかったので、魔法師の高レベルの方の力を勉強したいですね」
「そしたら、是非明日の午前中に私を訪ねて城に来てください。王国筆頭の魔法師他魔法師2、3名の技術を披露させますので、見ていだだきたいです」
「午前中ですか?よろしいのですか?他国の平民が王女様を訪ねて?」
「あら、だってジンさんSランクの冒険者でしょ?Sランクの冒険者は全て身分上は侯爵同等ですわよ?」
結局、割と強引に王女様と約束させられて、明日の午前中にお城に向かう羽目になった。
「姫様、うまくジン君を足止めする事に成功しましたな!アリシア殿が簡単に負けた相手がどんな人物かと思ったのですが、偶然にもその帰りに彼と知り合うとはラッキーでしたな」
「して、エドモンド、貴方から見てジン君はどうかしら?」
「間違いなく私より上ですね、しかも恐らく魔法でも彼に敵う者はおらんでしょう・・・」
「それほどの人なの?」
「はい、一緒にいた二人のお嬢さんも皆、我らより上かと!
「何とかコネクションを持っておきたい人達だわ」
「姫様、幸い我が国とレンブラントは友好国なので敵対はしませんから」
「アリシアが言っていたけど、彼は恐らく『迷い人』じゃないかと言ってたわ、だからレンブラント王国の人間という訳ではないと思うわ」
「明日、彼の真の実力が見れるといいのですが・・・」
「そね、アリシアが悔しそうに自分と対戦した時にはずいぶん手加減されたと悔しがっていたわ!それでも1秒で負けたそうよ」
「まさに化け物です」
ジンはヒューイ、ドールと宿に戻り、夕食を食べるまでの時間ゆっくりお風呂に入ってのんびりした。




