第30話 古代人迷宮のダンジョン
ジンは古代人の遺跡とダンジョンで手に入れた資料や本を参考に魔法が効かない魔物に対しての対抗策として、【スキル】の種類を増やして使えるところまで練習を重ね、ある程度戦えるところまではスキルをマスターした。
『アーティファクト』も手に入れて、整理でき、レンブラント王国の王都以外のダンジョンも数カ所踏破したので、王国周辺の国々の様子もみてみたいと、イリーナに半月程ヒューイとドールを連れて冒険の旅に出て来ると伝えた。
キースの”魔女の道楽”への魔道具補填をする迄には1度王都に戻って来るので『遠距離通話器』で呼んでくれと伝えて、王都ダルゼを後にした。
ジンは<タブレット>の【GOD】に”レンブラント王国の周辺国で訪れやすい国々”と打ち込みenterキーをクリックすると、”どれも友好的な関係を保っているが、訪れやすいのはべルギア公国、デイマール王国、プロレジア帝国の順がお勧めです”と出た。
更にジンは<タブレット>の【GOD】に”べルギア公国”と打ち込むと、”ジョゼフ・ラウセ・べルギア公爵が統治している小国だが公爵が騎士団の育成に力を入れているため、騎士団の戦闘能力は侮れない。また、南国のため果物が豊富で美味しい。公都は公爵が住まいのある、ニースアが中心都市”と説明文がでた。
ジンはニースア迄の行き方を<タブレット>に表示させて、まずはじめにダルゼから国境の街、キルネに馬車を走らせていた。
『フジ』は久しぶりに遠出をするというので張り切って馬車をひいている。
御者台はドールが手綱を持ち、ジンとヒューイはのんびり馬車の中でお茶を飲んで過ごしていた。
キルネの手前15キロ辺りで昼食を取り、午後2時半ごろにキルネの街に入った。
急ぐ旅では無いので、キルネで1泊宿を取った。
”月の窓”という宿で1泊2人部屋が銅貨80枚、厩舎の世話を入れて銀貨1枚を宿のお嬢さんにカードから引いて貰った。
シャワーを浴びて、食堂で早めの夕食をヒューイと二人で食べていると冒険者という二人の男女が話しかけてきた。
男性はアルベルト、女性はエルザと名乗って、一緒にキルネのダンジョンに潜らないか?と誘われた。
アルベルトはBクラス、エルザはAクラスの冒険者だという。
何でも、キルネのダンジョンにはボス部屋の魔物が結構強力で二人だけでは心もとないのだそうだ。
「ジン君達が一緒に行くのでしたら、報酬は折半という事で構わないので、いかがですか?」
「いや、折半ではなくお宅らに全部渡し、俺たちはいらないからその代わりお宝を全て貰いたい、ダンジョンコアも君たちが受け取ればいい。それでよければ受けるが・・・」
「報酬はいらないのか?」とアルベルトが驚いて聞いてきた。
「ああ、報酬は要らん。お宝の『アーティファクト』を貰えればそれで良い」
「じゃ、決まりで!明日、ここで朝食を6時半に食べて7時ごろギルドに向かおう!」とアルベルト。
「俺たちはそれで良いぞ!」とジン。
彼らもジン達のそばで夕食を取ることになった。
「ジン君はランクは?」とエルザが聞いてきた。
「俺か?Sランクだ。ヒューイも同じランクだ」
「えっ?お二人ともSランク?」エルザが吃驚して聞き返す。
「エルザさんは魔法師だね?どの特性が得意なの?」
「私は風属性持ちよ!【エアカッター】が得意だわ」
「僕は剣士で、前衛担当だよ」とアルベルトが言った。
「俺たちは、二人とも魔法剣士だ、ヒューイは力も強いからそこそこ頼りになるぞ!」
ジンは実は聞かなくても、エルザが風の魔法で【エアカッター】が得意なのは【鑑定】が自動で発動して、分かっていた。
もちろんアルベルトの剣の技量も分かっている。
「ヒューイさんのように綺麗な人が力持ち?ちょっと想像できないわね!」
「俺たち二人が前衛で、アルベルトさんが俺らの後ろ、後衛にエルザさんが魔法を放つ感じで良いかな?とりあえず戦いをみながら臨機応変に動こう」とジンが言って、それぞれ別れた。
翌朝、朝食を終えて、ギルドに向かい、受付にカードをそれぞれだした。
「ここのダンジョンに潜るけど名前と場所を教えてくれるかな?」
「はい、場所はギルドを出て、街の門の国境よりと反対の門を出て、西に3キロ行ったところに”疾風のダンジョン”があります。まだ未踏破で出来ましたら、地図を納品してもらえると助かります」
「ああ、もちろんだ!踏破できたら最下層迄の地図を納品する」とジンが言って、馬車に乗り込んだ。
アルベルトとエルザも馬車に乗せて連れて行ってやる。
二人とも、中に入って『亜空間』の馬車に驚きを隠せないで無言のままだ。
すぐに目的の”疾風のダンジョン”の入り口に着き、1階層に入って行く。
ドールが【ライティング】と【サーチ】をしながら進んで行く。
ゴブリン10匹とホーンラビット12匹をドールとヒューイが瞬殺して【次元ストレージ】に入れて行くと、アルベルトがジンに「ジン君は【次元ストレージ】持ちなんですか?」と聞いてきた。
「ああ、珍しいかい?俺は爺さんから貰って冒険者を始めた時から【次元ストレージ】を持っているので、当たり前のように使っているけどね」
「僕は初めて見たよ、持っている人は貴族で数人しか居ないと聞いていたけど・・・」と驚いていた。
2階層は平原ステージにグリーンウルフ25頭とファングボア3頭が突進してくる。
ドールとヒューイが25頭を瞬く間に首を落とす、ファングボアをジンが【ファイアアロー】で頭を全て打ち抜き3頭をあっという間に刈り取った。
3階層に行く前にアルベルトが「ジン君、今度は僕らが前に出るよ、何もしないのも気がひけるから」
そういうと、アルベルトとエルザが前に出て行った。
ジンはお手並みを拝見と、後ろに下がり、ドールとヒューイも暢んびりと二人の戦い方を見ることにした。
3階層にはリザードマンジェネラルが5匹いる。
アルベルトが1体に斬りかかり、相手も剣を持って対抗してくる。
結構時間は掛かったが何とか倒し、ジンの【次元ストレージ】に回収。
その間エルザが【エアカッター】を連発して2匹を倒したが残り2匹はエルザの【エアカッター】を剣ではじき返して、アルベルトに斬り掛かって行く。
やばい、と思ったジンが【ダークアロー】を2発放ち、剣ごと頭を砕いた。
「アルベルトさん、全部倒すまで油断しては死にますよ、エルザさんの【エアカッター】を跳ね返された時点で自分に攻撃が来ると対処してなければ間違いなく命を落とします」
3階層辺りで、この程度の戦い方をしていると、先ず5階層以上は無理と判断したジンは再び自分たちが前衛をやるから、二人は戦い方を見て居てくれと言った。
4階層も難なくドールが倒し、ボス部屋の5階層の扉を開ける。
ミノタウロスがハルバードを持ってドールに斬り掛かってくる。
ドールが【瞬足】で裏を取り、袈裟がけに腕を切り落とし、返
す剣で首を切り落とした。
側には宝箱が有り、罠もないのでジンが開けると果物がなっている1メートル程の植木が有り、【鑑定】すると『夢の果実の木』と出て、一つ果物を取って食べると、次には食べたい果実がひとつ、木になるマジックアイテムだった。
【次元ストレージ】に回収した。
6階層は密林のステージでスネークドラゴンが1匹居る。
ヒューイが『神龍剣』を抜いて、縦に剣を打ち下ろした。
真っ二つに切られたスネークドラゴンは苦しみながら息を引き取った。
7階層は海のステージで、ジンは仕方なく見せたくはなかったが『空飛ぶ車』を出して、二人を乗せて、浮上した。
ケートスをドールが【アイスアロー】を放って殺し、クラーケンをジンが『魔道砲』で瞬殺して回収した。
アルベルトとエルザは信じられない物を見た様で、ただ青ざめて何も言えないでいる。
「俺たちの戦い方は普通じゃ無いから余り他言しないでくれ」とジンが二人に口止めした。
8階層にヒュドラが居る。
ドールが順番に首を切り落とし、ヒューイが切り口を【ファイアスプラッシュ】で焼いて行き、再生を防ぎ10分程で狩りとった!
9階層は氷の世界だ!
青龍がブリザードを吐いて威嚇して来る。
ジンが【ダークアロー】を放ち、頭を破壊して殺した。
10階層は火山ステージでキマイラが1匹、奥には黒龍が居る。
「最期位お宅らでやってみる?」とジンが聞くと二人とも首を横に振って後ろに下がったので、ドールにキマイラを任せ、黒龍をジンが『煌剣』を抜いて対峙した。
黒龍が火炎咆哮を放つが、【スピリットシールド】をしているジンには全く効かない!
ジンが『煌剣』を一閃すると黒龍の首がズレて地面に転がった。
キマイラもドールが簡単に切り倒して回収する。
宝箱を開けるとミスリル製の剣があったのでその剣をアルベルトにあげた。
アルベルトはキョトンとしているので「俺達には必要無いからどうぞ!」と言ってあげてしまった。
ダンジョンコアも取って、ギルドの素材置き場に行った。
納品書を待つ間にエルザから「ジン君達が報酬を受け取って!私達何も出来なかったし、アルベルトが高価なミスリル製の剣まで貰って申し訳無いわ」
「貴方達が規格外な人達だと分かったし、私達ももっと精進しないと駄目だと良く分かっただけでも上出来よ!」
結局ジンが精算金白金15枚、金貨85枚、銀貨90枚、銅貨85枚を受け取り、カードに入れた。
二人とはそこで別れてジン達は国境を越え、ベルギア公国に入った。
国境線を越え暫く何事も無く馬車を走らせ最初の街トロンに着いた。
衛兵にカードを見せて街中に入った。
「ヒューイ、先ずは宿を取ろう!」
"ミミズクの里"という宿が目に止まり、入った。
「いらしゃませ、泊まりかしら?お食事かしら?」
「1泊ツインでお願いします」
「ツインですと銀貨1枚です。夕食は5時から10時まで、ラストオーダーが9時繁で朝も同様です」と若女将らしい人が応えてくれ、ジンはカード払いにして201の鍵を貰いヒューイと2階に上がった。
まだ昼食を取ってなかったので宿から出て定食屋に入り、もつ煮込みを3人前、頼んだ。
ヒューイがあっという間に2人分を平らげ、定食屋を出たついでに冒険者ギルドに行ってみる。
受付にここのギルドの管轄のダンジョンがあるか聞くと1箇所ここから4キロ先の"古代人迷宮のダンジョン"があると聞かされた。
カードを出してそこに今から潜って来ますと言ってドールを呼んで、3人で【転移】して入口に現れた。
衛兵にカードを見せて入っていく。
「ドール、古代人関係だから人工魔物が多いかも知れんぞ!基本魔石を破壊する方向で刈り取るぞ!」
「了解しました、ご主人様」
1階層からオークの人工魔物が10体出てきた。
「魔石は首の付け根の所だから首を落とせば同時に倒せると思うぞ!」とジンが二人に話した。
ドールとヒューイが剣を抜いて首を切り落とし、魔石も切り落として行く。
通常の剣では合金の体に跳ね返されて切れないが、二人の剣は『魔剣』と『神剣』だ!
10体を全て倒し回収する。
2階層にはポイズンスネークが居る。
魔石が頭の顳かみ部分なのでドールが剣で頭を上段から切り裂き魔石共々頭をかち割って、葬った。
3階層には人工湖が有り、淡水のシーサーペントが跳ねている。
見える距離なので、ジンが【ダークハンド】で捕捉して、岸辺に引っ張り上げて、魔石の部分をヒューイが剣で砕いて刈り取った。
岸辺を回って、4階層へと向かった。
4階層には人工のワイバーンが3匹いる。
魔石の部分は額部分の顳顬に埋め込まれていた。
ドールが【アイスアロー】で額を狙うが合金の頭に跳ね返されてしまった。
やはり、剣でないとダメなようだ。
ドールもヒューイも剣を抜いて、ワイバーンの攻撃を躱しながら剣で額を突き刺して、魔石を破壊して葬った。
一方ジンはジャンプとともに顳顬に掌底破を放って、魔石を打ち砕き3匹とも回収した。
5階層はボス部屋のようだ。
ゆっくり扉を開けるドールに、いきなり槍が襲って来る。
鎧を着込んだ人工ゴーレムが盾と槍を構えている。
鎧も盾もアダマンタイト製の硬い金属のようだ。
槍術のスキル持ちでレベル70と【鑑定】にでている。
「ドール、魔石が心臓の部分だから鎧に『雷剣』で雷落とせば鎧から全てが金属でひとたまりもないはずだぞ!」
「わかりました、ご主人様」
距離を取ってドールは、『雷剣』から雷を打ち放った!
ドシンと音を立てて、鎧を身にまとった騎士ゴーレムに落ち、魔石が吹き飛んで、動かなくなった。
側に宝箱が有り、罠もないので開けると、『浄化の杖』と【鑑定】にでた。”全ての悪霊、瘴気、毒を浄化できる杖”と声が聞こえた。
イザベラにあげようと思い、【次元ストレージ】に入れて回収した。
6階層は砂漠ステージで、人工のサンドワームが2匹、サンドモールが2匹いる。
全てドールに任せて『雷剣』で雷を落として魔石を破壊して葬った。
7階層は人工ではないオーガが2体は戦棍を持って迫ってきた。
ドールとヒューイが剣でメイスを叩き落として、首を切り落として難なく回収する。
8階層は岩がゴロゴロ有る、岩山のステージだ。
岩龍が岩礫を吐き出して飛ばして来る。
更に厄介なバジリスクが1体いる。魔眼を持ち、見たものは石に変えてしまう。
ドールもヒューイも無効化のスキルが有るので特に心配はないだろう。
岩竜をジンが硬い甲羅の上から掌底破を放ち、仕留める。
バジリスクはドールが【エアカッター】で首を切り落として殺した。
9階層は人工のゴーレムだが金属ではない。岩でボディーが作られた再生可能なゴーレムが周りの岩を持ち上げては投げつけて来る。
ジンが【サーチ】をかけると魔石が左右の胸のところに2箇所有り、二つを破壊するまで再生を繰り返す。
ジンはここで初めて『魔拳銃』を出し、ジャイロバレット弾を打ち込み内部で爆発させて一度に二つの魔石を破壊しようと試みる。
『魔拳銃』にバイロジャレット弾の爆裂弾を打ち込んだ!
当たってから回転した弾は岩と金属に穴を開け、5秒程したらゴーレムの中側から破裂して、胸に穴が空いて倒れた。
10階層はラスボスの部屋のようだ。
ゆっくりドールが扉を開ける。
中には30メートルほどの人工の龍が火炎咆哮を放って威嚇してくる。
ジンは人工龍の魔石がすごく大きいので、破壊するには勿体ないと思って何とか魔石だけ奪い取れないか考えて【引き寄せ(アトラクト)】や【奪取】魔法をかけてみたが<タブレット>に”レベルが足りません”と出て魔石だけを奪い取ることができなかった。
仕方なく、『魔拳銃』から龍の金属の体に穴を開けるジャイロバレット弾を魔石の周りに連射して、【ダークハンド】を使って魔石を掴み取って手元に奪って動きを止めた。
本体に大きな穴が空いてしまったが、両手で持てないほどの大きさの魔石を回収できた。
宝箱を開けると、『インビジブルリング』と書かれており、サイズフリーの腕輪で、透明化できる腕輪と書かれたメモがあった。
「ヒューイ、お前の腕につけておけよ。龍の姿に変身してもサイズフリーで大丈夫だし、お前の魔力を少し流せば見えなくなれるぞ」
「そうだね、パパはその魔法使えるから一緒にどこか潜る時とか透明になるには便利だわ!」そういうと、ヒューイは左手の手首にそのリングを嵌めた。
今回の経験からジンは時間があれば<タブレット>のスキル欄の【アトラクト】と【スティール】をポチってレベル上げして相手のどんな魔物の魔石でも奪い取れるようにレベル上げをしようと決心した。
とりあえず、3人は最下層の転移盤に乗り入り口に戻ってから、ギルドの裏に【転移】した。
素材置き場に魔物、といっても人工物の魔物が多いがこの世界では貴重な合金ばかりなので、全て納品して、最下層の魔石だけはジンが回収したまま渡さずに持ち帰ることにした。
納品書ができる間、ギルドの食堂で果実ジュースを飲みながら待つこと30分、納品書が出来て、受付にダンジョンコアと地図それにカードと納品書を出した。
ギルドの受付嬢がダンジョンコアを見て驚いてギルドマスター室に報告に上がって行った。
しばらくすると女性のエルフ族のギルドマスターがおりてきて、”古代人迷宮のダンジョン”を踏破したという冒険者は君?」とジンに聞いて来る。
「ああ、俺たち3人で最下層迄一応な!」
「私はここトロンのギルドマスターをしているグラシアだ、ジン君はレンブラント王国の冒険者だね?すごい新人冒険者が現れたもんだな!1ヶ月も経たずにSランクとは前代未聞だな」
「この街は国境にも近いので時々は来てくれ給え、歓迎するよ」そう言って握手を求め、ダンジョンコアを持って2階に戻って行った。
受付嬢が「ジン様、この度の報酬は地図なども入れて白金50枚、金貨70枚、銀貨86枚、銅貨98枚です。何でも貴重な金属タイばかりで報酬が上がったと素材置き場のチーフが言っておりました」
「ありがとう!カードに全額入れておいてくれ」とジンは言って、宿に戻った。
宿に戻り、先に夕食をヒューイと食べて2階に上がりシャワーを浴びて着替えた。
「ヒューイ、疲れたろう?先にベッドで寝てていいぞ。俺は【アトラクト】と【スティール】のレベル上げするから」
この1ヶ月ですっかり外見上では成人の女性に成長したヒューイは中身だけは未だ赤ん坊の子龍で「パパのそばで起きてると」と相変わらずパパ子から脱却していない。
ジンは机のカップを見つめて<タブレット>の【アトラクト】をポチると”レベルが上がりました。【アトラクト】がLv10000になりました”と声が響き、手にカップが机から吸い寄せられるように動いて手に取れた。
それを2度ほど繰り返すと”レベルが限界値に達しました。以後アナウンスはされません。距離も目視の範囲に広がり、見えるものは全て【アトラクト】できるようになります”と脳内に声が響いた。
”次は【スティール】だな”とジンは呟き、シャワールームにカップを置き、ベッドに座って<タブレット>の【スティール】表示をポチった。
”【スティール】のレベルが上がりました。Lv100になりました”しかし、カップは手元には現れない。
”レベルが足りません、距離が遠すぎます”と声が聞こえて来た。
再度<タブレット>の【スティール】の表示をポチって念じると”レベルが上がりました。Lv10000になりました”と声が響き、手元にシャワールームに置いた筈のカップが手に現れた。
それを3度程繰り返すと”【スティール】のレベルが限界値に達しました。距離は目視できる範囲、重さは500キロ迄奪い取る事が可能になりました”と声が脳に響いて来た。
”今後はアナウンスはされません。自動で発動可能になりました”と声が響いた。
「ヒューイ、今後は戦闘で魔石を破壊せずに奪い取る事が可能になったぞ!」と喜ぶジン。
500キロを手で持てないので、<タブレット>の【GOD】をクリックして解決方法を問い合わせた。
”【次元ストレージ】に同期と念じれば、【スティール】したものが重たい時などは直接【次元ストレージ】に入れられます”と表示され、重たい魔物を手元に持ってくることもできることがわかった。
「パパ、私眠たくなったわ」とヒューイはベッドに横になりあっという間に寝息を立てて寝込んでしまった。
ジンは、部屋に【結界】と【遮音】をかけて、もう一つのベッドに潜り込んで、意識を手放した。
翌朝、顔を洗って、階下の食堂に行くと、冒険者らしき連中が2、3組み”古代人迷宮のダンジョン”踏破の噂で持ちきりだ。
『何でも、隣国のレンブラント王国の新人冒険者でしかもわずか1ヶ月でSランクまでのし上がった凄腕らしいぜ!』
「そんなのありえねーぞ!普通20年から30年掛かるだろう?』
『何でも、ギルドマスターが慌ててベルギア公爵様に報告したとかしないとか・・・』
『ベルギア公国の最高ランクの冒険者は公爵様の騎士団長のAランクが最高だろう?戦力的に差が出るな?』
『でもよ、レンブラント王国とベルギア公国とは友好友好国で別に争いがあるわけじゃないからな!』
そんな話が食堂のここかしこから聞こえて来た。
「パパ、昨日の踏破したのがもう、噂で凄いね!」
「ダンジョン踏破ってそんなに凄いことか?順番に魔物を倒して行けばいいだけじゃない」とジンは無頓着だ。
「おお、食事が来たぜ、食べよう!ヒューイ」
流石に果物が美味しい国と<タブレット>が教えてくれただけあって、朝食にマンゴウに似た甘くて美味しい果物がついて出て来た。
「パパ、凄〜く美味しいね!」 ジンは無言でかぶりついていた。
二人は食事を終えて、すぐに厩舎に向かい『フジ』に朝食のオークの照り焼きを与えて、次の街ニースアに向かって動き出した。
トロンの街を出て数キロ走っていたら、上空にハーピーが7匹馬車を狙っているようだ。
ジンは古代遺跡で見つけた短剣『幻影』を抜いて、上空のハーピーに向けて投げ上げた。
『幻影』は1匹の頭を砕き、次々と自由に飛ぶようにハーピーの頭を居抜き、再びジンの手元に戻って来た。
『幻影』を鞘に収めて、ハーピーを【次元ストレージ】に回収して、さらにニースアに向かって走る。
途中のどかな村の広場に馬車を止めて、昼食をとった。
『フジ』には水といつものオークの塩焼きをあげる。
ジンとヒューイは久しぶりにカツカレーを食べて腹を満たした。
1時間ほど休憩して、再び公都ニースアに向かって『フジ』をはしらせる。
ニースアにあと3キロ辺りというところで、「ヒューイ、ドール前方に10人程度強盗が待ち構えているな、手足を切り落として全員捕縛するぞ」
彼らの姿が見える辺りで、馬車を止め、迎え撃つ。
「おい、若造!お姉ちゃん二人と金を置いてどこかへ消えろ。命だけは助けてやるからよ」と首領らしき奴がジンに向かって叫んだ。
「生憎だが、俺は歩くの苦手だからこのまま消えるわけにはいかんな、お前たちをとりあえずニースア迄連れて行くか!」
「ドール、ヒューイいいぞ!」
そう、ジンが言うが早いか、既に4人の足が切られて倒れ、残り8人もあっという間に手足を切られて、全滅していた。
ジンは【闇魔法】の【闇檻】を<タブレット>でポチって作り出し、12人の強盗を全員入れて、馬車の後ろに繋いだ。”【ダークジェイル】のレベルが上がり、Lv100になりました”と声が響いたのをスルーして動き出した。
公都ニースアの城門前で、衛兵に12人の強盗を引き渡すと、衛兵たちが慌てて、彼らと手配書を見比べジンに「お手柄ですぞ!こいつらは金貨10枚の賞金がついておりましたから。冒険者ギルドにこの書類を出せば金貨10枚を受け取れます」と言って、中に入れてくれた。
強盗団は全員血止めをしているが足や手がない連中を衛兵が荷車に乗せて監獄のある場所に連れて行くようだ。
ジン達は冒険者ギルドに入って、衛兵から貰った書類と、ハーピー7匹を渡した。
受け付けの女性はカードを見てまずは驚き、次に書類を見てまたも驚き「ジン様、この強盗団はギルドでも討伐依頼を出していたのですがなかなか狡猾で逃げ回っていたので助かりました、報奨金の金貨10枚とハーピー7匹の討伐清算金、銀貨140枚です。カードに入れますか?」
「ああ、そうしてくれる?それとこのニースアのおすすめの宿を紹介してくれ」
「それでしたらこのギルドの3軒隣の”せせらぎの宿”がいいです。冒険者カードを見せればAランク以上は半額になりますよ」
「おお、ありがとう!そこに行くよ」とジンはギルドを後にして”せせらぎの宿”に向かった。
「いらっしゃい!お泊まりですか?食事ですか?」
「とりあえず2泊止まりでツインを一部屋頼む。それと馬車を後ろの厩舎でいいかな?」とカードを出して聞いた。
「すごーい、Sランクの方ですか?2泊で銀貨2枚を5割引で銀貨1枚頂きます。カードからでよろしいですか?」
「ああ、頼む」ジンは2階の210号室ツインルームの鍵を受け取り、ドールに馬車を頼んでヒューイと2階に上がった。




