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吸血鬼のシリーズ

吸血鬼になった少年ダッシュ

作者: 仲仁へび



 とある国の、大きな都の、貴族街。


 そこにダッシュという少年がいた。


 少年は、人から何かを奪う事に快楽を覚える性格だった。


 いつもとりまきをつれていたが、その者達は心から少年を慕っていたわけではなかった。


 少年が自分の力をふるい、暴力で無理やり従わせていた者達だった。


 そんなダッシュは、ある日化け物に襲われてしまう。


 それは吸血鬼だった。


 吸血鬼は、その世界で脅威とされている異形の化け物だった。


 ひ弱な人間は、襲われないように注意しなければならない。


 そんな吸血鬼にかまれたダッシュは、吸血鬼になってしまった。


「嘘だろ、俺は人間じゃなくなっちまったのか?」


 その途端、それまでダッシュに従っていた者達が恐ろしい形相で襲いかかってきた。


 吸血鬼は強い生き物であるが、なりたては弱い。


 体の構造がかわっていくその瞬間は、普通の人間にも負けてしまう程度の力だった。


 そのため、ロクな抵抗もでいないダッシュは逃げるしかなかった。


 ダッシュには帰る家があった。


 家族ならば、助けてくれるそう思っていた。


 日ごろから暴力をふるっている少年にも、家族に対する愛情があった。


 しかし、たどり着いた家では、家族にも命を狙われた。


 命からがら逃げだしたダッシュの心は、打ちのめされていた。


 しかし、そんなダッシュに手を差し伸べる存在がいた。


「助けてくれなんて言ってない」

「言ってるわよ」

「何だと?」

「あなたの目がそう言ってる」


 それは、吸血鬼の少女だった。


 その少女の名前は、ヴィースエント。


 ヴィースエントは、ダッシュに吸血鬼としての生き方を丁寧に教えてくれる存在となった。







 吸血鬼は血が必要だ。


 誰かの血をのまなければ生きてはいけない。


 けれどそれは人でなくてもいい。


 ヴィーエントは動物の血をのんで生を繋いでいた。


 それは同族から忌み嫌われる行為だったが、彼女は気にしていなかった。


「だって、私達は人だったもの。なるべくなら人を傷つけたくはないわ」


 ダッシュはそんな、人としての優しさを失わなかったヴィーエントに惹かれていった。


 しかし現実は非情だった。


 ヴィーエントは同族の吸血鬼たちの反感をかっていたため、彼等に騙されてしまった。


 ダッシュがその危機にかけつけた時には、ヴィーエントは虫の息だった


 同胞にはめられたて、吸血鬼殺しに引き合わされた彼女は最後までやさしかった。


「どうか誰かを恨む事がないように、幸せに生きて」


 それが、彼女の言い残した最後の言葉だった。


 しかしダッシュはその願いを聞き入れる事はできなかった。


「よくもヴィースエントを! 皆殺しにしてやる!」


 ダッシュは、事を仕組んだ吸血鬼達をはめて、吸血鬼殺し達にひきあわせた。


 吸血鬼たちは、殺されて一人残らず死んだ。


 そして、その戦闘で弱った吸血鬼殺しもダッシュが殺した。


 ダッシュは、吸血鬼や吸血鬼殺しを殺していく事を決意して、旅立った。


 ヴィーエントを埋めた墓には、もう戻る事がないだろうと予感しながら。






 やがてダッシュは一人の少年を見つけて、育てる事になる。


 吸血鬼に家族を奪われた少年を。


 吸血鬼殺しとして強くなる少年の面倒をみて、ダッシュは育てていった。


 親しかった少女の墓に戻る事はやはりなかったが、彼は弟子の成長を見届けてからこの世を旅立つ事になった。




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