短すぎるプロローグ
……気が付いたら真っ白い空間にいた。
だだっ広い空間にシミ一つない床、西洋風な机を前にして俺は座っていた。
そして目の前には綺麗な銀髪に金色の瞳、そしてえらく顔の整った女性が座っている。もはやその容貌は人よりも人形に近い。
しかしこれは……まさか!
「あなたには異世界に行ってもらいます」
「やっぱ異世界転生かよ!」
俺は叫んだ。テンプレもテンプレ、どテンプレであったからだ。
異世界転生、言わずも知れた小説ジャンルの一つで昨今では世間一般でも知られるようになってきている。
まあ俺は異世界小説愛好者であるためそんなにわか者とは違う……が
「まさか自分が異世界転生に巻き込まれるとは……」
宝くじ当選なんてレベルじゃない。そもそも現実として存在してるのが疑わしい事象がこの身に起こるなど思いもしなかった。
……起こってほしいな~とは思ったことはあるが。
しかし、白い空間、謎の美女、すべての状況が異世界転生を物語っている。
きっとここには神様の手違いかトラックかなんかで――ん?
「……俺、死んだの?」
「はい、心臓を止めたので」
なるほど、心臓をね……ってまて!止めた?止めた!?
まてまてまて!別に俺は異世界転生物小説は好きでも、死んでまで異世界に行きたいほど人生に絶望してたわけじゃないぞ!
「それでは良い旅を」
「ちょっ、ま――」
女性は異世界転生の開始を合図をだす。
――って!いや!おかしいだろ!
説明!説明!圧倒的に説明が足りてないだろうが!
経緯とか!能力とか!目的とか!
しかし抗議をしようにも、急速に目の前が暗くなっていく……
……薄れいく意識の中で俺は思う
――これ、この部屋を経由する必要……なくね……