人違い
「あなたに、神のご加護がありますように」
修道女が一礼して、その場を後にする。
ここは教会の一室、俺はとある用事があってここを訪れていた。
――この世界にも、宗教は存在する。やはりどこの世界でも、宗教は発生するものなのだろう。
しかし、数多の宗教が流行っている訳ではない。ここでは一つの宗教がほぼ世界中で信仰されている。
それがこの【女神教】だ。
教義の違いは数あれど、元を辿れば大体が女神教にたどり着く。
では何故一つの宗教が広い世界で信仰されることになったのか?
それには明確な理由があり、今日俺が教会に来た理由でもある。
――それが、ステータス鑑定である。
そう、この世界にはステータスがある。そして、ステータスを確認する方法は二つしかない。
一つは【鑑定】のスキルを使うこと。
これは相当なレアスキルなので、お世話になることはほぼないだろう。……流石は三大チートスキル。
もう一つが、女神教の教会でステータス鑑定を行うことだ。
……これで分かるだろう。女神教が流行る訳が。
わかりやすく奇跡を体現してるからだ。
ちなみにこの世界の宗教は女神教一強だが、すべての人がステータス鑑定を行っているわけではない。
……とういうか、ほとんどの人間がステータス鑑定なんてやったことないだろう。
何故なら教会でのステータス鑑定には大層な準備と多額のお布施が必要になるからだ。
……なんでステータスウィンドウ付けなかったんだよ女神様。それでは皆が皆、やらないだろう。スキル持ちなんて滅多にいないのに。
まあ、それでも権力者や金持ちは必ずやるし、俺みたいに戦闘を生業にしているから鑑定をする奴も少なからずいる。
そうやって今日も教会は賑わいをみせている。
「……さて」
ステータス結果発表といくか。
……おっとその前に、前回のステータスがわからないと比較ができないか。
ちなみに、俺の知ってる一般的な異世界転生者のステータスはこのようなものだ――
『 ラウル=バードン LV874
職業 超勇者
HP :35628/35628
MP : 4768/4768
力 :5878
素早さ:3871
生命 :4897
魔力 :5128
幸運 :9999
スキル 鑑定LV9 剣技LV9 体術LV9 魔法LV9 絶対防御LV9
痛覚遮断LV9 異常耐性LV9 高速詠唱LV9 筋力上昇LV9
魔力上昇LV9 武術の極みLV9 魔道の極みLV9 探知LV9
俊敏上昇LV9 空間操作LV9 時間操作LV9 絶対防御LV9
気配遮断LV9 錬金術LV9 鍛冶LV9 HPMP自動回復LV9
料理LV9 魅了LV9 高速思考LV9 不老不死LV9 』
――当然だよなあ!!
ふふふ、ではこの世界の現実を見せてやる。
とくとご覧あれ……ステータスウィンド(偽)……オープン!
『 ラウル=バードン 15才 LV2
スキル 剣 2 』
………………何?なんか文句ある?
……………………俺はあるがな!!!
簡単すぎるだろ!短けえよ!何だこれ!名前と年齢とレベルとスキルしかわからねえじゃねえか!つーか、年齢いらねえだろ!
……普通、異世界転生者のステータスなら……もっと……こう、いろいろあるだろ……
――というかこんな鑑定なら、金払ってまでやらなくていいんじゃないかって?
…………なんとなくレベルが上がっている気がしたんだよ。
そう、レベルだ。この世界にはレベルがある。
そしてこのレベルは、スキルとは違い誰でも上げることができる。
つまりみんな大好きレベル上げも実行可能だ。
……ちなみに、俺のレベルがおかしいことに気が付いたか?
ヒントは、俺は七才の時から戦闘を繰り返してることだ。何なら0才から訓練をしている。
はい正解は、いまだレベル2ってことですね。
……マジだよ、まだレベル2なんだよ。
この世界にはレベルがある……が、上げるのは一筋縄じゃ行かない。
目安としては、騎士団に入ったレベル1の新兵がレベル2になるまで三年位。レベル3にはそこから更に五年。レベル4にしたければそのうえ十五年である。
……これはきつい。
しかし、レベルが上がる恩恵はちゃんとある。身体能力の向上だ。
体の変化は一切ないのに、謎力で結構上昇する。
……まあ、スキルほどの恩恵はないけどな。
俺が前回ステータス鑑定を行ったのが5年前だから、そろそろレベルが上がってもいいはずだ。
よし、そろそろ答え合わせだ……
ステータスを書いてもらった紙を取り出し、中身を見る。
――どうだ!!
『 ラウル=バードン 15才 LV2
スキル 剣 2 』
…………気のせいだったらしい。
い…いや、だってさ、レベル2の時点で身体能力に補正がかかってるから、わかりづらいんだ……よ。レベル3の補正がどの程度かも知らないし……
「…………」
逆恨みとわかっているが、壁にかかっている絵画を睨みつける。
そこには女神教の信仰対象とされる神託の乙女が微笑みを携えこちらを見つめていた。
……銀髪に金色の瞳の人形のような女性だ
俺の知ってる人に似ているが――
「人違いだな」




