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平穏

リガの街 深夜 sideユーゴ


全く、帰りは随分遅くなってしまった…。これも全部あの魔の国の国王のせいだ。馬鹿め。

いかん落ち着け…。家にイライラした気持ちを持ち込むんじゃない。子供の胎教に悪い。よく分かってないが、いい事ではないのは間違いない。


あ、血の匂いも持ち帰ったらダメだな。"倉庫"に水の入った樽は…あったあった。水を被ろう。いや、庭で血を洗い流したくないな。勿体ないが、転移して余所の川辺りで洗い流そう。



よし。着替えも済ませたし、後は門から家に入るだけだ。皆、変に気を使わず、寝ていてくれるといいが…気配は…よかった寝てるようだ。


む。ポチが猛ダッシュでこっちに来る。どうやら外の犬小屋にいたようだ。


⦅ご主人お帰り!お帰り!⦆


「ただいまポチ」


家の皆が起きないようにか、声を出さずにジャンプして俺の顔面に抱きつくポチ。ちょっと喋りにくい。


「俺の留守中異常は無かった?」


⦅無かった!⦆


「よーしよし」


⦅くーん⦆


どうやら警備隊長として立派に勤め上げたようだ。顔にくっ付いたままのポチの全身をなでなでする。


「家の皆はさっきまで起きてたりしなかった?」


⦅してない!リリアーナママが、ご主人が心配するから寝ましょうって!⦆


リリアーナ…。


⦅ご主人!早くお家へ入ろう!⦆


「だね」


思わず感動しながら庭を歩いて家に入る。もちろんポチはそのままだ。

しかし、玄関の中にタマがいるな。


「ただいまタマ」


⦅主人帰宅。現在異常無し⦆


どうやら待っていてくれたらしい。しゃがんでタマを持ち上げる。


「2人ともお風呂入った?」


⦅凛と入った!⦆


⦅同じく⦆


どうやら凜が入れてくれたらしい。家の皆はポチとタマの事を可愛がっているが、その中でも凜は特に構っている。


「よし。では本日の任務は終了だ。ご苦労様。俺は風呂に入るね」


⦅はい!⦆


⦅はっ⦆


ん?解散を告げたが、ポチは俺の顔から下りないし、タマは腕に絡みつき始めた。


⦅ご主人とも入る!⦆


⦅同じく⦆


ええい可愛らしいやっちゃ。よかろう!風呂将軍についてこい!


⦅わーい!⦆


⦅お供します⦆



⦅きゃー⦆


風呂から出て、タオルでポチをわしゃわしゃしているが、そう言えば皆は自室で寝ているだろうから、今日は俺一人だな…。ふむ。


「今日は一緒に寝る?」


⦅ほんと!?ご主人ほんと!?⦆


⦅寝室へ急行⦆


2人を誘うと、ポチはぴょんぴょん飛び出し、先に拭き終わっていたタマは寝室へと消えていった。精霊なため寝る事は無いが、一緒にいられることが嬉しいらしい。


⦅ご主人!はやくはやく!⦆


「よしよし」


⦅準備万端⦆


拭き終わって、尻尾を振りまくっているポチの先導で自室に入ると、ベッドの上にはタマが既にスタンバイしていた。


「それじゃあお休みー」


⦅おやすみなさい!⦆


⦅主就寝⦆


ベッドへ横になると、ポチとタマはそれぞれ俺の左右に丸まった。


スピスピ


ごろごろ


可愛らしかったのでつい頭を撫でると、ポチの鼻はスピスピ、タマはゴロゴロ言い始めた。少しこうしていよう…。


リガの街 朝


む。いつのまにか寝ていたか。もう窓から日の光が入ってくる。


⦅ご主人おはよう!もう起きるの?⦆


⦅睡眠時間少⦆


「おはよう。十分さ」


起きたことを察したタマとポチが、俺の顔を覗き込みながら少し心配そうな思念を飛ばす。まあ、昨日寝たのが遅かったからだろうが、その気になれば一年中戦える…ような気がする俺だ。十分寝たと言えるだろう。絶対にそんな事したくないが。


「風呂沸かしに行くね」


⦅ボクも行く!⦆


⦅同じく⦆


ポチを背に背負い、タマを抱きかかえた完全装備で浴室に向かう。


む。ブラシ1等兵ご苦労


カッ!


⦅ブラシ隊長おはようございます!⦆


⦅おはようございます⦆


ポチとタマにとって、ブラシ1等兵は先輩であるため敬語で話しかけている。

ポチとタマが警備隊長なら、彼にも相応しい役職を与えねば。


「ブラシ1等兵。貴官の日頃の行いを評価し、階級を軍曹に特別昇進させる。また、浴室総責任者の地位を与えるものとする」


カッ!!


上等兵と伍長をすっ飛ばしたが、後輩が出来た以上、やはり軍曹という言葉の重みが必要なのだ。

タマを下ろして、ちょっと上等なブルーのリボンをブラシ軍曹に貼り付ける。ぺたりと。


⦅軍曹!おめでとうございます!⦆


⦅おめでとうございます⦆


祝福するタマとポチ。ブラシ軍曹も少し照れているようだ。


さてお湯用の魔石をポチっと。


⦅はい!⦆


違う違う。



「あなたお帰りなさい」


「ただいまジネット」


ある程度お湯が溜まると、勝手に止まるようになっているので、台所へ行こうとする途中にジネットと会った。

野暮用といって夜に出かけたから、少し心配そうにしている。

ジネットに伝えるか?…いや、妊娠している彼女に、暗殺者が狙っていましたなんて言えるか。彼女が気を付ける代わりに、俺が今まで以上に頑張って守ればいい。


「あ、あなた」


「いやあ、ちょっとジネットと離れていたから寂しくて」


「うふ。もう」


お腹を圧迫しないように、ジネットの後ろに回って彼女を抱きしめる。表情も柔らかくなった。そうそう。


「さあ、お風呂も溜まり始めているよ」


「ええ。ふふ、ご一緒にどうです?」


むむむ。

ジネットに可笑しそうな笑顔でお誘いされてしまった。

そうだな、ジネットが転ばないようにご一緒せねば。

床材も滑りにくいのに替えて、万が一があっても婆さんの指輪が守ってくれるが、一応…。そう、一応付いていてあげねば。

うむ。安全のため安全のため。


「勿論」


「うふふ」


安全のためとも。


「コレットー。パパですよー」

ー"マイホームパパ"ユーゴ ジネットのお腹に耳を当てながらー

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