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2.この世界とは

 この世界の七公国を説明しておこう。この世界は公爵家、王家ともに色で分けられている。

 七つの公爵家、私の家のバシルス家は黒、ボリス家は青、ヴィロス家は白、グレゴリー家は紫、ヒロインの家のマーガレット家は橙、ベルタ家は黄、ケンドル家は緑である。

 それぞれ大体同じくらいの力を持っている。そしてそれらをまとめているのが、王家のアリックス家である。王家の色は赤。

 ざっとこんな感じにこの世界は分けられている。

 そして公爵家の中から王子の嫁、お姫様が選ばれるのだが、公爵家の中に令嬢はヒロインと私ともう一人の三人だけしかいない。なんとも倍率が低い戦いだ。

 つまり、私はヒロインともう一人の女を殺せば、王子の嫁の立場を手に入れることが出来る。

 このゲームでは、もう一人の花嫁候補もヒロインの人柄に惚れて、その二人は争わないのだ。争うのは私とヒロインだけ。「勝負をなめてんじゃねーぞ」と言いたいところだが、令嬢はそんな言葉遣いしないだろうからその言葉は心の中に閉まっておこう。

 そしてその他四人の公爵家のご子息達は攻略対象である。資産のある賢い美男子……、最高じゃない?

 こんなお得な物件が目の前に並んでいるのだから飛びつくしかない。

 別に私はお姫様になりたいわけではない。人生を楽しめたらそれでいい。……『殺し』は前世の私という人間の一部だった。そして、何より仕事を達成した時のあの喜びは最高だった。だからこそ私は今回のターゲットをヒロインに決める。

 もう一度あの快感を得るのだ。ヒロインはなかなかの大物だ。彼女を仕留めることが出来ればもう怖い者なしだ。

 狙った獲物は絶対に仕留める。それが私の流儀だ。

「絶対に殺してやる」

 私は部屋の窓から満天の空を眺めながら恍惚な表情でそう言ったのだった。


「お嬢様、朝ですよ」

 と侍女に言われる前から起きていた。人の足音で起きる習慣があるのだ。寝ている間でも誰に襲われるか分からない、死と常に隣り合わせの殺し屋は常に耳を澄まして、周りへの警戒を怠ってはならない。

 かなり遠い場所でも足音が近づいてきたら自然と目が覚める。

「おはよう」

 私は侍女が扉を開ける前に部屋から出た。

「お嬢様? もうお着替えになられたのですか?」

 早着替えは仕事柄特技となっていた。殺し屋はいつでも逃げ出せるようにすぐに着替える習慣がある。

 目を丸くして私を見つめる侍女に私は口角を上げて微笑んだ。

「いつも有難う、ジゼル」

 私より三歳年上で、髪は薄茶色、瞳の色は濃い青色、整った顔つきで、体系はザ・普通。

 髪を耳の下あたりで綺麗にお団子でまとめている。潤いのある唇に、爪は長くなく綺麗に磨かれている。美意識は高い。けど、彼女の少し猫背な姿勢や、私と話をする時の目の動き方から自己評価が低く、自分にあまり自信がないことが分かる。私のお礼一つで顔に輝きが増した。つまり、誰かに認められていくことで少しずつ自信をつけていくタイプだ。完璧に見せようとしているが詰めが甘い。


 私の外見は、自分で言うのもなんだけど、美少女だ。

 美少女というのは物凄く良い。美女が美少女になるより、美少女が美女になる方が簡単である。そして、役の幅が広がれば広がるほど人を落とせる。殺しにとって人を落とせるか落とせないかは命取りになる。

 目は妖艶なつり目、鼻は高く鼻筋が通っている、薄く完璧な形をした唇、ボディラインはしなやかで、スタイルは良い方だと思う。髪の色は半透明の灰色、瞳の色はターコイズブルー。前髪はなく、ストレートで胸の上あたりまでの長さの髪。まさに悪役令嬢って感じね。

 今の私は確か十六歳。……十六歳であんな幼稚な嫌がらせをヒロインにしていたなんて恥だ。

「馬車の準備は出来たかしら?」

 少し圧をかけるように言ってみる。貴族の令嬢というものはどんな感じなのか手探りで身に着けていく。

 ジゼルは私の言葉に少しも動じることはなかった。表情一つ変えずに口を開いた。

「出来ております、お嬢様」

 記憶が戻る前の私は相当な我儘お嬢様だったからこれくらいの対応は当たり前か。傲慢で自分勝手なお嬢様に仕えるのも大変だっただろう。

「有難う。もう学校に行くわ」

 今度は怪訝な表情で私の方を見つめた。さっきまでは嬉しそうな顔をしていたのに。

「お嬢様にお礼を言ってていただけるなんてとても光栄です。ようやく認められたような気分で大変幸せなのですが、やはり少しいつものお嬢様と違うような……、やはり昨日階段から落ちた時にどこか頭をぶつけられて」

 彼女は心配そうな瞳を私に向けながらそう言った。

 は? 私、階段から落ちたっけ? ……そうか、階段から落ちた衝撃で前世の記憶を思い出したのか。

 これは好都合! 人格が変わっていることの言い訳になる。勝手に心配しておいてもらおう。

「命に別状はないのだから良いんじゃない?」

 私はジゼルに微笑んだ。ジゼルが少し頬を赤くして固まる。

 女を落とすことも簡単。複雑そうに見えて割と単純なことに落ちる。相手の喜ぶ笑みを与えれば良い。

 自分に自身のある強い女を憧憬の対象に選ぶジゼルには、大人っぽく余裕のある笑み浮かべればすぐに私に魅了される。

 これで彼女の私に対する印象は変わったかしら。まぁ、別に私は女に好かれなくてもいい。逆ハーレム状態になりたい。

 その為には相手のことをよく知らなければならない。なんだかこの感覚、懐かしい。

 相手を探り、自分の掌で転がす。ああ、学校に行くのが楽しみ! 

 私は軽くスキップしながら馬車の方へ向かった。

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