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12.学園長室

「大人気のギル様とお話出来るなんて光栄ですわ」

 私は彼の腕を首から離しながら、ニッコリと笑った。

 シヴの言葉にギルの視線はより鋭くなる。

「そんなカリカリせず、とりあえず茶でもいかがかね?」

 緊迫した空気を壊すようにティーポットを持った学園長が私達に声を掛けた。ギルが少し迷った顔をしたが、すぐにゆっくりと頷いた。

 そして、ハインツ以外の黒豹警備隊を部屋の外に出して、私達は学園長室の真ん中にある高級なソファアに腰を下ろした。

 学園長は私から見て斜め前の椅子に座り、ギルとハインツは私の目の前に座った。

 ……イケメンをこんな正面でゆっくりと拝めて大歓迎なはずなのに、今は、とてつもなくここから早く去りたいわ。

「何をお聞きになりたいのですか?」

「今日だけで五人組、変態貴族、六人が殺された。その事に対してどう思いますか?」

 ハインツが最初に簡単な質問をシヴにする。その横でギルは何を考えているのか分からない表情を浮かべている。学園長は相変わらず穏やかな顔をしてシヴ達の様子を楽しんで見ている。

 そして、シヴはハインツの言葉に余裕のある含み笑いを浮かべた。

「怖いですわ」

「……それだけですか?」

 丁寧な言葉遣いだが、口調が怖いわね。レディーにそんな圧かけるなんてモテないわよ。

「あの英雄様がまた助けてくれると信じているので」

「先程木から落下した時、シヴ様は見事無事に着地いたしましたよね?」

「ええ」

「あの技は一体どこで覚えたのですか?」

「命の危機を感じたから出来たのかも……。私もあの自分の動きにはびっくりしましたわ」

「自分の命だけでなく、猫の命まで救う余裕があったのですね」

 クソ、ハインツめ。話しにくい。そんな細かい所まで覚えているなんて……。

「まわりくどいので一番重要な質問をして下さらない?」

 いつまでのこんな質問に付き合っていられないわよ。

 私の言葉にギルの左の眉がピクリと動いた。

 ああ、ようやく私の言葉に反応してくれたみたい。さっきまで何にも反応がなかったから生きているか心配してたのよ、ギル隊長。

「何を聞かれると思う?」

 ギルが私をに抜くような瞳でじっと見つめる。私も負けじと彼を見据え、言葉を発した。

「私が彼らを殺したか否か、それを確認したいのでしょうけど、私の返答は、殺していない。仮に私が殺したのであっても言わないけれど……」

 シヴの落ち着いた余裕のある声と表情に、ギルはますます彼女を疑った。

「さっき木から落ちている時、俺と目があっただろう?」

「そうでしたっけ?」

「あの時、俺が助けないと瞬時に察して、猫を助け着地した。違うか?」

「よく覚えていませんわ」

 私がそう言うと、ギルの横で呆れたようにハインツがため息をついた。

 まさか、私が「はい、そうです」なんて簡単に頷くと思ったのかしら? 令嬢だからって馬鹿にしないで欲しいわ。

 そんなことを思っていると、突然コンコンっと扉がノックされる音が部屋に響いた。

「エリカ・マーガレットです」

 おお? まさかのここでヒロイン登場!? まさか……、ギルを落としに来たとか? いや、でもまだそのイベントは先だった気がするけど……。

 いやいや、そんなことよりこれはまたヒロインを殺せるチャンス到来だ!

「少し待ってもらうか」

「え!?」

 思わず学園長の言葉に私は酷く落胆した声を上げてしまった。ギルはその様子を決して見逃すことはなく即言葉を発した。

「なんだ? エリカ・マーガレットに何かあるのか?」

 もう、だからギルは苦手なのよ。少しの隙も許されない。……嘘をつきながら開き直るか。 

「私、エリカを虐めていましたの。だから、もし彼女が学園長に私のしてきたことを言うのなら、私のいる時に聞きたいなと思いまして」

「「は?」」

 お前は何を言っているんだ、という表情でギルとハインツは声を発した。

「多分有名な話でしょ? 私が彼女に嫌がらせをしていたのって」

 そう言うと、突然ギルが笑い出した。わぁ、美形の笑顔ってなんて破壊力。この笑顔だけで何百人もの女の子を救えそう。

 というか、今の話の流れで笑う要素あったかしら?

 ハインツもあの学園長さえギルの様子に驚いている。まるで彼が笑うところを初めて見たような表情を浮かべている。

 暫く笑った後にギルはニヤリと笑い、口を開いた。

「罪の意識はあるのか?」

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