表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/13

11.学園長面会

 令嬢相手になんて殺気放ってんのよ。それにしても間近で見た彼らの迫力、目が溶けるかと思ったわ。

 ……相当ギルに怪しまれたはず。怪しまれた時点で、殺し屋としては失格だ。するべきことは彼らを全員殺す。ギルを殺すのは惜しい気がするけど、しょうがない。怪しまれた以上はイケメンであっても殺さないとね。

 私、このゲームの主要人物全員殺すことになる気がするんだけど……。それってアリなのかしら?

 元殺し屋の私を悪役令嬢にするなんて運営も馬鹿だと思うわ。

 ギル達を殺すのが一番手間がかかりそう。黒豹警備隊の皆、厄介なのよね~。まぁ、いっか。

「こちらです」

 私は仮の学園長の補佐の代わりに学園長室に案内した。補佐は黒豹警備隊の後をのこのことついてきている。

 コンコンッと扉をノックして、私は声を発した。……そう言えば、学園長室に入るのってこれが初めてだわ。

「シヴ・バシルスです」

「……ああ、入って良いぞ」

 扉の向こうからは穏やかな優しそうな声が聞こえた。その声の柔らかさからして警戒心が全くないことが分かる。

 生徒だからと言って警戒心ゼロにするのはあまり良くないわね。

 私はそんなことを思いながら、ゆっくりと扉を開けた。

「いらっしゃい」

 そう言って白髪の老人が微笑むとその場の空気が一瞬で和んだ。 

 彼が学園長? なんか、威厳というものを感じない。……そう言う人ほど警戒するべきなんだろうけど。

「学園長~! 遅くなり申し訳ございません!」

 後ろから少し息を切らしながら仮補佐が登場する。

 ……彼はもしかしたら仮補佐ではなく本当の補佐かもしれないわね。けど、貴族が入る学園を経営しているのなら、やっぱり学園長は私が想像するよりも有能なはず。

「失礼します」

 学園長に斜め一五度でお辞儀をしながらギル達は部屋に入ってきた。

 まぁ、なんとお堅い……。学園長はずっとニコニコしながら彼らを見ている。

「これはこれは……。君たちも一緒なら話は早いのう」

 うん、やっぱり学園長は朝の話を私に聞くつもりだったんだ。

「朝の件でしょうか?」

「そうだそうだ。君が五人組に絡まれたというから心配していたのだ。とりあえず、バシルスくん、君が無事で本当に良かったよ」

 心の底から良い人なのか、それを隠した腹黒い人間なのか……。

 長年殺し屋をやっていたせいか、変にそういうことを探ってしまう。けど、今の彼からは一切黒いものを感じない。皮肉もなければ、私の無事を安心した表情も嘘ではない。

 根っからの良い人……?

「有難う御座います。優しい英雄が私と御者を助けてくれたのです」

「その優しい英雄を見たという人間が君しかいないんだよ」

 優しい口調のまま学園長はそう言い、彼女の言葉に黒豹警備隊も反応する。

「当たり前です。私しか意識がなかったので」

「今までにそんな人がいたなんて噂を聞いたことがないですね」

 ハインツが横から鋭い口調で入ってくる。

「では、私は幸せ者ですわね」

 私はにっこりと口角を上げてハインツに向かって微笑んだ。ハインツは相変わらず私を疑うような目で見つめている。

 安心して、どんな拷問を受けても私は何も話さないから。半殺しぐらいの拷問は何度か経験したことあるし……。勿論、私を半殺しにしたやつらを全員殺したけど♡

 そもそも令嬢を拷問することはないか……。

「そいつの特徴は覚えていますか?」

「黒髪の短髪に、顔はマスクで覆われていてよく分からなかったけれど、整った顔をしていたわ。背は少し低く、身のこなしが見事だったわ」

「……詳しく覚えているんですね。人が殺されているのにそんな観察力があるなんて凄いですね」

 ああ、そっか。英雄が来たとしても普通の令嬢なら悲鳴を上げて逃げているものね。

「あまりにその英雄様が素敵だったのです」

「他に彼の特徴は覚えていますか?」

「残念ながら一言も会話せずに彼は去られてしまったので……」

 私は少し俯き、寂しそうな表情を浮かべた。これで諦めろ、ハインツ。私はなかなか土台を固めながら話しているのだ。

「では、今度こそ私はこれで」

 私はそう言って、その場を離れようとした。

 ギルの横を通り過ぎようとした瞬間、またもや、ガッとギルの腕で首を軽く絞められた。思わず「ぐえッ」と声が出た。

 女相手に乱暴だな!? ああ!? アヒルのモノマネする令嬢なんて聞いたことない。

 まぁ、くるって分かってて二回とも避けない私が悪いんだろうけど。木から落ちたの見られているんだもの。流石に、これまで避けると完全に怪しまれる。 

「なんでしょうか? ギル隊長」

 私は首を軽く絞められたままギルの方を見ながら聞いた。

「まだ話は沢山あるんだ」

 そう言って、ギルは口の端を軽く上げた。彼のその含みある笑い方に私の背筋はブルッと震えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ