幼女はこなした
「このプリンで最後だよ!イチミ」
「うん」
私はまるで、わんこそばを提供する蕎麦屋の店員のようだった。
次から次へと、食品をイチミに手渡していくと、イチミはどれもペロリと平らげた。
あまりの食いっぷりの良さに、私は快感を覚えた。
「けぷ」
プリンを食べ終えると、イチミは小さなげっぷをした。
「どう、イチミ。帰れそう?」
「うーん」
「どう、どう?」
「うーん」
イチミは唸るばかりで、ちゃんと答えてくれない。
これは、どうやら駄目そうである。
「困った」
満足そうな顔でそう言うので、そうは見えない。
「ニンゲンのごはん。おいしい」
「それはよかった。因みに普段は何を食べてるの?」
「美味しい空気とか」
「それって食べ物なの?」
さすがは妖精だ。想像外の営みである。
イチミは何か思いついた顔になった。
「シチミお姉ちゃんが、この前へんな顔でいってた。【こなすことと、うまくこなすことはちがう】って」
「ほうほう。まあ、それはそうかな」
「わたし、こなしてるだけで、うまくこなせてないのかも」
「なるほど」
シチミちゃんとやらは、なかなかいい事を仰る。
以上の名言を今回の件に当てはめるなら、もっとちゃんと私が大好きなものを食べさせるべきかもしれない。
時刻は深夜1時。
この時間から、空いてる店といえば……
「よし、イチミ。ファミレスにいくわよ」
「ふぁみれす……?」
「うん。そこにいけば、もっと私が大好物なものが沢山あるわ」
「おお。それはいいこと」
酔いも冷めてきて、体は怠くて頭は眠気で一杯だ。
しかし、幼女が困っている。
助けざるを得ない
「さあさあ、立ちなさいイチミ。この世の食のすべてを貴女に与えましょう」
「おー、かっこいい」
「出発進行ーー」
「ねえねえ」
イチミが私の服の袖を引っ張る。
「そういえば、貴女。おなまえをきいてない」
「名前?あー、そういえば言ってなかったかも」
「わたしだけおしえてフェアじゃないわ」
「えーっと、私の名前は 兜橋 さらさ。 さーちゃんでいいよ」
「さーちゃん……わかった」