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「一味唐辛子の……妖精?」
妖精ということに驚くことは当然ながら、それ以上に一味唐辛子のインパクトが強い。
そうか、それで赤い服装なのね。
「お姉ちゃんが ”しゃかいべんきょう” だから、行ってこいって言った」
イチミ が、もじもじしながら喋った。
「お姉ちゃんも妖精なの?」
「うん、お姉ちゃんは ”シチミ” って言うの」
”シチミ”? もしかして ”七味唐辛子” かな?
それにしても、こんな妖精がいるなんて……世の中って変なの。
一味唐辛子の妖精がいるなら、”カラシ” とか ”ワサビ” とかも居そうだわ。
イチミは不安なのか、涙を浮かべている。
「早くお姉ちゃんのところに帰りたい……」
イチミはワンピースの裾をギュッと両手で掴んでる。
「うーん、困ったわねぇ」
そう言いながら、私はイチミの頭を撫でてみた。
おお、髪が柔らかくて気持ちいい。
……羨ましいなぁ。私もこんな髪がいい。
まあそんなことより、この子を何とかしてあげないといけないな。
「どうやったら、帰れるってお姉ちゃんから聞いたの?」
「ぐす……えっとね、好きなものを食べて……願いを叶えてあげるの」
「好きなものを食べる……あっ、ハンバーグ食べたもんね。ハンバーグ好きなの?」
「……?ハンバーグは、好き……って貴女が言った」
イチミは私を指差す。
ああ、なるほど。私が好きなものを食べるのか。
私は納得した。