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イチミは名乗った後、立ち上がった。
そしてキョロキョロと辺りを見渡している。
「あれ……帰れない……」
イチミは袖口がやたらと広い服を着ていて、その袖をパタパタと振った。
「望み叶えたら、帰れるってお姉ちゃん言ってたのに……」
イチミは表情を一切変えないが、どうやら困惑しているらしかった。
「えっと、とりあえず色々聞いてもいいかな?」
私がそう言うとしばらく立ち竦んだ後、イチミはコクリと頷いた。
「イチミちゃんは何処から来たの?突然この部屋に出てきた気がしたけど」
「私は妖精。さっき貴女が私を呼んだから、出てきてあげた」
「え、妖精?呼んだ、私が?」
「うん、呼ばれた」
急に妖精だと言われても、俄かには信じられない。
しかし、突然現れた少女の説明がそれ以外には付かない様な気もした。
(押し入れにでも隠れてたのかな?)
でも、なんでそんなことをする必要があるんだろう。
「望みもっとない?……何でも言って。でないと帰れない」
イチミはそう言いつつ、いつの間にか私の隣に座っていて、腕を引っ張ってくる。
その様子は大変可愛らしかった。
「うーん、私はイチミちゃんを呼んだつもりはなかったんだけど……」
「呼んだよ。私を振りかけながら、恨み言を叫んでたから」
「えっ、”私を振りかける”?」
「うん、私”一味唐辛子の妖精”だから」
イチミにそう言われて、私はだらしなくポカンと口を開けるしかなかった。