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「ちくしょーー。あんにゃろー、ふざけやがってぇ」
深夜24時、近隣の皆さまに迷惑を掛けることも厭わない!--といった大声で叫んでいる女が居た。
彼女は小さなアパートのワンルームにて、20代男性受けしそうな清楚な装いに身を包み、泣き腫らした顔をしている。
更には顔の化粧が崩れに崩れてしまっており、一色一色は鮮やかであったそれらが、涙によってぐちゃぐちゃに混ざってしまい”どす黒”や”どす紫”が肌に着色して、お子様が見たら泣いてしまいそうな風貌と化してしまっている。
そう、彼女は非常に残念なことに、今晩、7年付き合った彼氏から振られてしまったのだ。
「こんなの飲まないとやってられないよー!」
彼女は大事な時に呑もうと決めていた、知り合いに貰ったドン・ペリニヨン(高級なスパークリングワイン)を躊躇いなく空けた。
「当て!当てが欲しい!」
彼女は、冷蔵庫の中を手荒く物色していった。
「あー、もう。何もないじゃない!」
彼女は豆腐、納豆、溶けるチーズ、昨日の残りのハンバーグを取り出すと冷蔵庫を閉めた。
ハンバーグにチーズを乗せるとレンジに放り込み、豆腐を汁抜きし、納豆は彼への恨みを込めて、ごりごりにかき混ぜた。
「しねー……しねー……はめつしろー……三十路女の恨みを思い知れぇ……」
そんなこんなしてる内に電子レンジがチン と音を立てた。
レンジからお皿を取り出す。
「あちちち……」
彼女は、お皿にかかったサランラップの上に豆腐と納豆のパック、ワイングラスを乗せると、キッチンから居間に戻り、机の上にそれらを置いた。
「あっそうだ、”アレ”を忘れていた……」
彼女はキッチンに戻ると、大事な”アレ”を取って戻ってきた。
それは”一味唐辛子”だ。
しかも、彼女はそれを500mlペットボトルに満タンに詰めたものを愛用していた。
ここから、彼女が相当の辛党であることが伺える。
「おらおらおらおらおらおらおらおら!」
彼女はそれを全部使いきる勢いで、納豆、豆腐、ハンバーグに振りかけていく。
出来上がったのは、”一味唐辛子三連峰”とも言うべき、異様な赤い粉な塊たちだった。
「いっただきまーす!」
彼女がその赤い山の一つに手を付けようとしたところで、突然、それが真っ白に光り出した。
「えっ、な、なにこれ~!?」
そして、彼女の目の前は真っ白になってしまった。




