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腐女子が異世界に召喚されたら勇者に間違われました。【短編】

作者: 馨夏


異世界召喚系の短編小説です。

続く予定はありません。

この先の展開を何も考えていないので(苦笑)

スルッと読んで頂ければ、嬉しいです。




晴れ渡る空!

白い雲!

今日は待ちにまった、同人誌即売会イベント

オタクのおカーニバルりである!

海の近くにある大きな会場には、早朝から開場を待つ人・人・人の波

私は駅から会場まで歩きながら、横目に一般待機列を眺め、その場の雰囲気に心躍らせていた。

開場にはまだ早い時間だが、今日はサークル参加なので、一足先に会場に入る。

売り子と買い子の友人を引き連れ、開戦前の戦場へ一歩足を踏み出した。

回りにいるのは、全てサークル参加者とイベントスタッフだ。

戦の前の静けさに、ブルリと身震いがする。

イベント直前の緊張感が堪らない!

私の頬は自然と緩み、期待に胸がバクバクする。

私はカートを引くと、颯爽と歩きだした。


数時間後・・・

まさかあんなことになるとは知らず・・・

私はその時までオタクな人生を目一杯楽しんでいた・・・

目一杯楽しんで・・・いたのである・・・・・・・






本日の同人誌即売会という名の戦に臨むのは、サークル主の私こと、 島崎(しまざき) 春香(はるか)

売り子の宮本みやもと 紅美くみちゃん

買い子の中山なかやま 加奈かなちゃん

以上の3名である。

今日の即売会はコスプレ可のイベントなので、私と売り子の紅美ちゃんはコスプレでの参加だ。

私は裁縫技術が0なので、紅美ちゃんが全てのコスプレ衣装の制作をしてくれた。

スペースでの準備を買い子の加奈ちゃんに任せ、私と紅美ちゃんは更衣室へと向かう。

衣装は事前に渡されていた為、それぞれのカートに詰めて持ってきた。

お互い大きなカートを引きながら、更衣室に到着すると早速カートを広げる。

そして改めて紅美ちゃん作の衣装の出来の良さに、感嘆の声を上げた。


「紅美ちゃん!本当にいい仕事してるよ!」


私の声に、紅美ちゃんは嬉しそうに笑う。


「でしょー!春香の新刊も楽しみにしてるんだから!売り子の特権を使用する!私の分は勿論・・・?」

「勿論、紅美ちゃんの分は別に取ってあります!毎回楽しみにしてくれて、ありがと!貰ってやってー」


きゃいきゃい騒ぎながらも、コスプレの準備を進めていく。

顔は早朝に起きて作ってきてある。

厚化粧にも程があり、お前誰?状態だが、それも込みのコスプレだ。

別人になりきるのである。

ササっと衣装を着こみ、カツラをつけ、化粧を軽く直す。

紅美ちゃんと二人、お互いの姿をチェックすると、にんまりと微笑みあった。


「上出来!」

「だね!」


本当に衣装はとても素晴らしい出来であった。

カツラと化粧と衣装のトリプル効果で、どこからどう見ても私にみえない。

そこにいるのは某人気ソーシャルゲームの人気男性キャラクター

自分のことながら、思わずニヤニヤしてしまう。

私は高身長でスラリとした体形をしている為、身体を隠すような男性物の衣装を着てしまうと、自然と男に見える。

勿論、仕草に気をつけ、そう見えるようばっちり化粧をしていてだが。

小柄な紅美ちゃんは同ゲームの女性キャラクターのコスプレだ。

全体的にふわふわしていて、とっても可愛い。

私達は、ふふふと笑いあうと急ぎサークルスペースに向かうのであった。








「加奈ちゃん、お持たせ!一人で準備させてごめんね」


スペースに到着すると、準備はだいぶ進んでいた。


「気にしないで・・って、コスプレすごっ!再現率たかっ!」


着々と準備を進めていた加奈ちゃんが私達を見て驚きの声を上げる。

それを、にんまりしながら見るコスプレ二人組


「ふっふっふー」

「でしょ、でしょ!ホント衣装頑張ったんだから!」

「紅美ちん、凄すぎ!この衣装どうなってんの」


加奈ちゃんが衣装を見ながら、目をキラキラさせている。

本当に加奈ちゃん作の衣装は凄いのである。

細かな部分の作りこみが半端ない。

衣装を褒められて、紅美ちゃんもまんざらではなさそうだ。


私はサークルのスペース内に入ると、準備の進度を確認する。


「だいぶスペース出来上がってるね!加奈ちゃん感謝ー!」

「あ、新刊も届いてるみたいだよ」


そう言って、加奈ちゃんは段ボールから一冊の本を取り出す。


「お・・・おお・・・本当だ!うわ、すごい綺麗に刷ってもらってる!嬉しいー!」


本をパラパラ捲り、中身を確認していると、紅美ちゃんから声がかかる。

紅美ちゃんは別の段ボールをゴソゴソしていた。


「春香ー、このグッズもしかしてノベルティ?」

「あ、そうそう!新刊一冊につき、一つ付けて」

「ノベルティめちゃくちゃ可愛いんですけど!」

「褒めても何も出ないぞー」


ニヤリと笑う。

今回は新刊もノベルティもバッチリ準備が出来ているので、鼻高々なのである。


こうして、スペース内で開場時間まで忙しく立ち回った。

しばらくすると、時計を見て、加奈ちゃんが慌てだす。


「あ!春ちゃん、それじゃあ、私並びに行ってくるわ!」

「加奈ちゃん!宝の地図は持った?!!お使いは君に託したぞ!!」

「加奈神様!加奈神様!私の分も宜しくお願いします!」

「よっしゃ!任せとけ、二人とも!」


そう言うと、加奈ちゃんはバタバタとスペースを離れていった。

こうして、10時になると共に戦は始まりを迎えたのである。







ーーーー数時間後ーーーー



ーーー戦が・・・終わった・・・

やりきった・・・

開場から数時間

新刊はありがたいことに全て完売した。

既刊は若干残っているが、書店に送る予定である。

私が自宅に送るのは、本日のお宝!!

萌えのつまった薄い本のみ!!


スペース内で死んだようにグッタリしていると、加奈ちゃんが大量の『戦利品』という名のお宝を持って戻ってきた。


「春ちゃん、紅美ちん!ミッション全てクリアしたよー!」

「か、加奈ちゃん!!素敵!!あなたは神か?」

「きゃあああ!加奈様!天使様!!」

「ふふ・・・どやぁ!あ、こっちが春ちゃんの分で、こっちが紅美ちんの分ね」


手渡された荷物は、重量が半端なかった・・・

愛の重さに頬が緩まる。


「ありがたや、ありがたや」

「余ってる段ボールある?戦利品詰めちゃおう」

「こっちにあるよー」


ほくほく戦利品を段ボールに詰め、手早く封をしてしまうと、宅配便の伝票を貼り付ける。


「あ、荷物出しはやっておくから、コスプレ組は着替えてきなよ」

「何から何までありがと、加奈ちゃん!!いってくる!」

「おう!片付けは、やっておくぜ!」

「加奈ちゃん、ホント神ー!それじゃあ荷物お願いします!」


もうすぐイベントの終わり時間である。

私と紅美ちゃんは、朝に着替えた更衣室に再び向かった。


しかし、しばらく進むと紅美ちゃんが短く声を上げた。


「あ、ごめん。スペースに忘れ物しちゃったみたい!取りにいってくる!」


紅美ちゃんが慌てて来た方向に回り右をする。


「了解。じゃあ、先に更衣室いってるねー」

「うん、じゃあ、あとでー」


こうして私の運命の歯車が回り出す。

一人で更衣室へ行かなければ、あんなことにはならなかったのか・・・?と、後悔しても後の祭りである。










私は更衣室の扉を開いた。

すると、室内は真っ暗だった。

人の声も、物音も一切しない。


「あれ?なんで電気ついてないの?」


イベント終了間際とはいえ、誰もいない筈がない。

頭の片隅でおかしいとは思ったが、電気はすぐに点くだろうと楽観視していた。

物や人にぶつからないよう、そろりそろりと壁づたいに進む。

だが、進んでも進んでも何にもぶつからない。

壁づたいにだいぶ歩いたにも関わらず、部屋の突き当りにもたどり着かない。


流石に怖くなり、歩みを止めようとした時、急に辺りが明るくなる。

やっと電気がついたのかと安心したその時ーーー・・・

私の目に飛び込んできたのは・・・・・・・




「おお!召喚に成功したぞ!」

「ああ、神よ!」


「・・・はい?」



見知らぬ外人さん達が群れを成して、こちらを凝視している。

外人さん達は、ざわざわと、とても騒々しく騒いでいた。


『なにこれ?』


私は辺りをグルリと見まわしてみる。

そこは初めてみる場所だった。

明らかにイベント会場ではない。

薄暗い室内は、少しカビくさく、辺りには蝋の匂いが立ち込めていた。

地下室なのだろうか?

床もひんやりとした石だ。

床といえば、私は床に書かれた落書きの上に立っているっぽいのだけれど、なに、この落書きは?


「ここ・・・どこ・・・」


茫然自失とはこのことである。

そしてそれは私だけではなかった。


「え、ここ更衣室じゃ・・・???」


私の隣には、可憐なコスプレの女性騎士王の姿があった。

おお、声はちょっとハスキーだけど、とても!とても可愛い!

女性騎士王可愛いぞ!

同じ人気ソーシャルゲームキャラクターのコスプレをしている相手に勝手に好感度が上がる。

女性騎士王さんに声を掛けようとした、その時・・・


「勇者様!聖女様!良くぞ!良くぞ、召喚に応じて下さいました!」


見たこともない外人さんが、テンション上げ上げで、そんなことを言い出した。


はいー?

勇者?聖女?

なに言ってんだろ、このおじさん

ここにいるのは女性が二人

どちらが勇者で、どちらが聖女なのか・・・

まあ見た目、今の私は男性キャラのコスプレをしているので、きっと私が勇者枠なんだろうけどさ・・・

いやいやいや、身長は高いが、私は男性ではない。

あれ?でも女でも勇者って言うんだっけ?

だけど、見た目だけで勇者にされるのは、溜まったものではない。

胸もコスプレの為、つぶしているだけであって、結構豊満なんだぞ?!


「勇者様!」


そう言って偉そうな外人さんが指示したのは私。

ああ、やっぱり。


「聖女様も、なんと可憐な」


偉そうな外人さんの横にいる高貴そうな女性が見つめるのは、私の横にいる女性騎士王のコスプレイヤーさん。

そうですよねー

見た目的に、そうなりますよねー


けれど・・・

女性騎士王のコスプレイヤーさんは、特大の爆弾を落とした。





「あの、俺こんな恰好してるけど、男なんです」





「「「「「・・・・・・・・・はああああーーーーー?!!!!!!!!」」」」」





辺りが一瞬静まりかえり、次の瞬間、驚愕の声が上がる。

私も驚いた!

だが、すぐに正気に戻り、彼に便乗して発言する。


「あ、私は女です」





「「「「「・・・・・・・・・・・・えええええーーーーー?!!!!!!!!」」」」」





場が混沌と化す。

うん、わかるよ。

だって、明らかに性別が逆に見えるもの。

仕方がない。

仕方がないけど、ちょっと驚きすぎじゃない?


そう思い、外人さん達を、スンッとした目で眺めていると、女装コスプレイヤーさんが声を掛けてきた。


「あんた、女なのか!カッコいいから、俺、男だと思ってた!」


驚きに、目を真ん丸にしている姿も可愛いな、おい!


「私も、貴方は女性だと思ってた」

「えへへっ!そう言ってもらえると嬉しいな!ちゃんと女に見えてるみたいで安心した。サンキュー!」


くっ!その笑顔、眩しいな、おい!!

男だとわかっていても、可愛いものは可愛いなーとほんわかしていると、彼がコッソリ話しかけてくる。


「あのさ、これってやっぱりアレ・・・かな?」

「アレって、アレだよね?勇者とか聖女とか言われてるってことは・・・」

「やっぱり異世界召喚系・・・だよなー・・・」


彼は、ガックリと肩を落とす。

そう、この状態はラノベや漫画やアニメで何度も見て・読んで・知っている展開!

どこからどう見ても、the!異世界召喚である。

まさか、自分が・・・と思うが、頬を抓ってみても、目の前の光景は変わらない。

私は確実に覚醒している・・・

そして、ハッ!とする。


「え、待って。私の今日の戦利品は?!萌えの山は?!!」


唐突にきょどる私。

だが隣で、彼も頭を抱えていた。


「俺、アニメはリアルタイムで見る派なんだよ・・・毎週楽しみにしてるのに、今期のアニメは?!もう続きが見れないのか?!!!}


頭を抱え呻く彼の横で、私は慌ててカバンからスマートフォンを取り出す。


「ちょっと待って、ちょっと待って、ちょっと待って!」


そうしてスマホを起動させると、案の定-----・・・・・・


「あああああ、電波ないいいいい!!!!私、今日、ゲームのログインしてない!毎日欠かさずログインしてるのに!」

「え、やべえ、俺もだ!」

「か、帰らせてえええええ!!私を今すぐ返してえええええ!」

「俺も今すぐ帰せえええええ!!!!」


二人の阿鼻叫喚で、更に場が混乱する。

こんなオタク二人を召喚した、この国は確実に終わっていると思う。

勇者とか聖女とか魔王とか魔物とか世界の終りとか、どうでもいい!

とりあえず、今すぐ返してくれ!






主人公たちは、この後どうなってしまうのか。

きっと何がなんでも元の世界に帰ろうとするでしょう。

萌えの為に!


女装コスプレイヤーくんの名前も考えていたのですが、結局出せなかったな。


読んで頂き、ありがとうございました!


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