Day01 俺とメイドと予知能力 三
おかしい、明らかにおかしい言葉が聞こえた。よし、もう一度聞き直そう。
「ごめんなさい、聞こえなかったのでもう一回いいですか?」
聞き間違えでありたい、その思いで聞いてみた。
「私に帰る家など、ございません」
うん、聞き間違えじゃないな。じゃねぇよ!どういうことだ?
「え?それってどういう…それより立ち話もなんですから上がって下さい。
外はまだ春になったばかりで寒いですし。」
俺は動揺を隠しながらそう告げた。
「ありがとうございます。それではお言葉に甘えてお邪魔させて頂きます。」
少女は何処か寂しげな笑顔を見せながらそう言った。
家と言っても一人暮らしなので当然一軒家などではなく、学校から少し離れた場所にある至って普通のマンションの一室だ。俺は少女を部屋に上げたあとにココアでも出すからとソファーにでも座って待っているように促してキッチンへと消えていった。それから出来上がったココアを差し出して少女の話を色々と聞いていて幾つか分かった事がある。名前は笹原瑠南。年は16歳と俺と同い年だったが高校には通っていないらしい。
その代わりにメイドとして働いて生計を建てていた。ところが今日、辞めさせられて路頭に迷っていたところを襲われていたらしい。まるでアニメや漫画のワンシーンの様な状況だ。
「大変だったんですね、これからどうするおつもりなんですか?」
「新しいお仕事先が見つかればいいんですけどそれまでは…」
俺が何かいい案は無いかと頭を捻っていると笹原さんが あの と声を漏らした。
「あの、助けて貰ったうえにこのようなお願いをするのはおこがましいとは思うのですが、もし貴方が良ければここで働かして下さい。お礼の意味も含めてお給料は要りませんから…」
「あはは、おかしな事を言うんですね。働くってつまりそこで棲むってことですね。
高校生ですけど仮にも一人の男ですよ?怖かったりしないんですか?その、俺に襲われたりとか。」
自分で何言ってるんだと思いながらも思った事を口に出した。しかし笹原さんは はて? と言った表情をした。
「もし貴方が襲うような方でしたら既に襲ってると思うのですが?先程も申しましたようにお礼ですのでお給料は要りません。次のお仕事先が見つかるまででいいのでどうかお願いします。」
そう言いながら上目遣いで俺を見てくる。美少女なうえに上目遣いなんて反則だ。断れる訳ないじゃないか。そんな顔でお願いされて断る男子はいるだろうか、いるなら是非見てみたい。
今すぐ名乗り出てこい、一発ぶん殴ってやるから。
「はぁ、分かりました。ここで働いて貰って結構です。けど一つだけ条件があります。
お給料は少ないと言うかほぼ 無いに等しいですけどしっかり払うので受け取って下さい。」
「はい、分かりました…」あまり納得してないようだが一応了承してくれたみたいだ。
「では、これから宜しくお願いします。ご主人様!」
こうして俺とメイドさんの笹原さんとの生活が始まるのだった。
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