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もう一つの選択肢

 

 朝食を済ませ、咲夜歌(さやか)を助ける新たな仲間としてエリサとツェルを迎え入れた。その後、館を後にした私達は、次の目的地である都会へと赴いた。

 立ち並ぶビル群と行き交う魔族を横目に、私達は南西区に足を伸ばす。そこにいるのは、次に仲間になる人達。


 上がってくる太陽が雲で見え隠れする空模様の下、あのカボチャの三兄弟が居るだろうテントを見つけた。咲夜歌の記憶にあった、所謂ハロウィンと酷似するような橙と紫色のテントという色合いに、思わず顔を顰めてしまった。

 ……初めから思っていたことだけれど、こういう派手な色、好きじゃないわ。


 思ったことを心の中で呟いていると、左にいた骨種族が目の前のあのテントを白く細い人差し指を向けた。


「あれか?次の仲間がいるのは……」


「そうよ。」


 軽く返して、あのテントへ歩いていく。玄関であろう仕切りの幕に近づくと、手で(まく)った。すると、思っていた光景と違うものが目に飛び込んだ。


 玄関や居間やらが一変し、あの時の演奏会と同じ間取りに変わっていたのだ。とはいえ、広い空間の奥に簡易的な劇場らしきステージを設置しただけの寂しいものであったが。


 これから装飾を加えていくのだろう。そう思ったのは、仲間になるその三兄弟が飾りの入った箱を運んでいる場面に遭遇したからだった。

 三兄弟の長男であるカルダが、私達に気がつく。両手で持っていた箱を床に優しく置くと、こちらに走ってきた。


「すまない。演奏会はまだ先なんだ。」


「あら、まだ先なの?なら都合がいいわ。」


 私の返事に、明らかな疑問をそのカボチャ顔に出した。後ろのほうでこちらを見ていた二男のナインドと、三男のアルタルスも、様子を窺うように見ていた。



 *



「サヤカを助ける……?」


 アルタルスは、首を傾げて、私の言った言葉の意味を考えている。そのままの意味なのだけれど。


「どういうことなのだ?」


 また、ナインドはアルタルスに同調して、幼い声で私へ聞いてきた。


「そのままよ。」


 近くにあった椅子に腰掛け、三兄弟を見据える。説明を求めるかのようにこちらへ視線を送っているのを理解すると、端的に説明を始める。


「咲夜歌は現在、危機的状況に陥っているの。助けるには、貴方達の力も必要だと思う。どうか、仲間になってくれないかしら?」


「…………」


 三兄弟は、目を合わせて考えていた。それぞれ色の違う瞳を交え、難しい表情を浮かべている。忽ち、長男のカルダが、交わった紅い瞳を逸らしこちらへ顔を向けてきた。


「すまないが……演奏会の準備に忙しくてね……。仲間になりたいのはやまやまなんだが……」


 俯き気味に言葉を放ち、次に、演奏する舞台へ視線を移す。釣られて、私もそこへ目を向けた。


「見ての通り、まだ舞台を設置しただけで、飾りも何も無い状態でな……。陽があと十回落ちるまでには終わらせておきたいんだ。」


 十回落ちるまで……今日から十日後ね。……まさかとは思うけれど、これを全部手作業で終わらせるつもりなのかしら?


「魔法は使わないのかしら?」


「あぁ、魔法な……。俺やナインド、アルも魔法はある程度使えるが、空間魔法以外の魔法を上手く使ったためしがないんだ。物を動かす魔法……とかな。」


「……なるほど。わかったわ。」


 ここで状況を整理しましょう。

 三兄弟は演奏会の準備の為、咲夜歌を助ける仲間にはなれない。その準備は魔法を使わないで終わらせるというもの。物的浮遊魔法も、その他の魔法もろくに使えない。


 ……仕方ないのかしら。

 別に、その判断が愚かだとは思っていない。むしろ、いきなり余地の無い選択を迫る私達に対して、流されることなく冷静な判断を下せたのは、称賛されるものがある。

 それが正しい判断かは別として。


「強制はしないわ……貴方達がそういう考えなら、無理にでも連れていく必要は無いから。」


 そう放つと、カルダの隣にいたアルタルスが、若干俯いたのを見逃さなかった。


「一応言っておくけれど、私達はこれからツエルバが経営する店へ行くわ。」


 最後に、私はアルタルスへ目を向ける。何かを考えているのだろう、紫の瞳を床に向けて泳いでいる。

 不意に、私の後方にいたエリサが話しかけてくる。


「仲間にしないの?」


「ええ……意見を尊重するわ。」


 最後に、もう一度俯いているアルタルスを見て、出口に向かう。


「演奏会、上手くいけばいいわね。」


 そのまま、私達はテントを後にした。


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