表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/84

残滓

 

 咲夜歌(さやか)はスケルトンに手を引かれてゆっくり走ること数十分、半壊した研究所が枯れた木々の隙間から姿を表した。

 建物自体はそんなに大きくないが、この研究所の地下構造はかなり大きく、かなり複雑である。過去に、災害による避難シェルターとして使われたことがあったらしいと聞いたのだが、これもスケルトンの言うように、噂、なのだろう。


「確かこの地下にそれがあるはずなんだ!早く!」


 スケルトンは、咲夜歌の記憶を思い出させるために、咲夜歌をここへと連れてきたのだ。

 スケルトンは壊れた入口に入り、咲夜歌に入るように催促する。未だに、咲夜歌は半信半疑だった。


 私の記憶を蘇らせる機械……それがここに……?


 期待と不安を重く抱えたまま眉を顰めた咲夜歌は、スケルトンについて行くことを決意した。



 *



 地下一階。ここは知らない。長ったらしい煤けた灰色の廊下をスケルトンと咲夜歌が歩いている。電気など一切無いため、スケルトンが光魔法で辺りを照らしていた。しかし、光魔法と呼ぶには多少弱いもので、光と言えるか微妙だ。

 咲夜歌は、延々と続く廊下を見てスケルトンに目を移した。


「機械ってどこにあるの?」


「分からない……でも、あるのは確かなんだ!」


 まるで、自分に言い聞かせるようにスケルトンは放った。スケルトンの目の無い瞳には、不確かな確信が揺れ動いているようだ。

 どうやら、噂を本気で信じて咲夜歌の記憶を蘇らせたいらしい。


「……。」


 何か言いたげに、咲夜歌は小さな溜息を吐く。と、すぐに口を開いた。


「その機械の場所って知ってるの?」


「…………。」


 スケルトンは何も言わず、ただ唸る。機械がある場所を知らないようだ。咲夜歌は、呆れるように仰ぐ。


「いちから探すって事ね。」



 *


 地下二階。ここも知らない。自然がなんだかってところだったかしら。

 地下一階にはめぼしいものは無かった。あったのは、焼かれた書類の紙片がそこらじゅうに散りばめられてたということだけだった。

 機械もあったが、複写機であったり、知らない機械があるだけだった。調べてみたが、全く動く気配は無かった。


「本当にあるの?ただの噂だったんじゃない?」


 地下二階の研究室らしき部屋を調べている最中、咲夜歌がスケルトンに向かってきつく放った。スケルトンは、ただ黙って機械を探している。

 ただの噂で終わることが、きっと嫌なのだろう。ただ熱心に、どれが咲夜歌の記憶を蘇らせられる機械なのかを探している。

 が、結局地下二階にもその機械は無かった。



 *



 残るは、地下三階。最下階であり、一番構造の複雑でよく入り組んでいる階である。何本もの枝分かれで、この階は造られている。

 この階は、生物やその遺伝子などの研究や開発が行われていた。研究チームも、複数で構成されていたようだ。

 咲夜歌とスケルトンは、虱潰しに機械を探していく。数え切れないくらい存在する研究室。目に入った機械を、足りない知識でなんとなく動かそうと努力するも、どれも徒労に終わってしまう。


「ああもう!どれがその、記憶を蘇らせる機械なのよ!どれも壊れてるし、どうせその機械も壊れてるんじゃないかしら?」


 なかなか機械を見つけられない咲夜歌が、つい強く放つ。スケルトンは、依然何も言わない。

 そんなスケルトンの様子を見た咲夜歌は、次第に苛立ち始める。せめてなにか言えばいいのに。

 こんな咲夜歌だが、スケルトンと同じように噂は信じたいのだろうか。何回も機械を見つけては動くかどうかを試している。

 ……誰だってそうだ。自分の記憶が戻る機械があるかもしれないとなったら、否が応でも探してしまうだろう。


「…………?」


 機械の隙間から、ほとんど焼け焦げてしまった写真が這い出てきた。咲夜歌はそれを手に取ってみる。

 写真に写っているのは、たったふたり。左側が燃えて無くなり、右側にいた白衣の研究者しか写っていない。

 一番右側にいる人物は、満面の笑みを浮かべている背が小さく丸っこい小熊猫獣人。その隣には、深い緑色の羽毛を生やした目つきの鋭い細身の鳥獣人。その隣は、誰かの腕が覗いて見えるが、機械のような形をしている。その先は、焼け焦げてもう見えない。


「……ここの研究チーム……?今頃どうしてるのかしら……。」


 このひとたちを心配する気持ちが、思わず表に出てしまった。ここに置いておくのも良くない、と思った咲夜歌は、リュックサックの小さなポケットに入れておくことにした。その拍子に、微妙に空いたチャックの奥から覗く魔法のカメラが目に入った。


 ……あ!すっかり忘れてた!


 咲夜歌はチャックを開け、勢いよくカメラを取り出す。堪らず、写真を撮った。それと同時に、この死んだ世界の写真を今まで撮ってこなかった事を後悔した。


「……カメラなんてあったのかよ……!」


 スケルトンが、やっと声を出した。少しカメラに対して嫌悪を抱いている様子が見えるが、怖がっているわけではないようだ。


「まあね。」


 一通り撮り終えると、カメラをバッグの中に入れる。結局ここの研究室には、あの機械は無かったようだ。咲夜歌とスケルトンは、他の研究室で機械を探していった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ