天獄
これは学校の帰り道、いつも通りの日常、他愛のない話。
私の友人である彼女は口を開く。
「ねえ、知ってる?」
「え?何を?」
「死んだ後の世界には天国っていう場所と地獄っていう場所があるっていう話」
「そんなの子どもでも知っているよ~変なの」
「ふーん、じゃあこれは?死んだ後の世界には天国でも地獄でもない場所があるんだよ」
彼女は自信ありげに笑う。
「へーどういうところ?」
「天獄」
「え?天国?え?どういうこと?」
私は首を傾げる。
彼女はそれを見てさも満足そうな笑みを浮かべる。それが少し悔しい。
「天国の天に地獄の獄って書いて天獄だよ」
聞いたことのない単語だった。
「天獄…どういうところなの?」
「うーん…それにはまず天国と地獄ってどういう場所なのかおおざっぱでもいいから分かる?」
「え、えーと天国は神様のいる場所で…いい人たちが行く場所?で、地獄は閻魔様や鬼とか悪魔がいて、悪い人たちが行く場所で、悪いことをしたからお仕置きをたくさん受ける場所かな?」
先程「そんなの子どもでも知っているよ~」などと言ってしまったことを後悔する。いざ説明してと言われると自分の知識に自信がもてない。己の浅はかさと知識のなさに赤面しながらしどろもどろに話した。
「うーん、まあだいたいそんな感じなのかな…?色々混ざってる気はするけど…。」
「ごめん…」
「あははは、何で謝るのよ。まあ宗教家の人にいったら怒られそうだけどね。ふふ」
「うっ」
私は顔を青ざめる。
「大丈夫よ。気にする必要なんかないよ。私宗教家でもなんでもないもの」
「そうだよね。うん」
「じゃあ、さっきの続きだけどね、天獄っていう場所は天国でも地獄でもない場所なの。」
「うん」
「で、ちょっと前置きね。死んだ後の世界には色々な可能性があるんだよ。生きる人には死んだ後の世界なんてわかりっこない。当たり前の話だよね。だからこそ無限の可能性があるんだよ。ふふ」
「ん、うん」
話がちょっと難しい…。
「で、天国と地獄があるでしょ。あれって神様の使いが教えを広めたんだよ、だからみんな知ってるんだよ」
「あーそうだね?」
「いい神様がいるなら悪い神様がいてもおかしくない。だって無限の可能性があるから。」
「うん」
「神は御使いを使って人間に教えを広め、人間はその教えを守る。教えを守れば死後守によって報われる」
「それただの天国じゃない?」
「まだ話の途中っ!」
彼女は頬を膨らませ声を上げる。ちょっと可愛い…。
「で、今のが天国の話。これからするのが天獄の話」
「ややこしい…」
「確かに…。まあ天国の話は終わりだから大丈夫だよ」
ややこしすぎる…。
「天獄は見る人によって天国にも地獄にも映る場所。神は御使いを使って教えを広め人を操り、教えを貫いた者には報いを、守らない者には罰を…。」
「…変わらなくない?」
「まだだよ。報いとは永遠の報いなんだよ。それは永遠の幸せで恐怖も何もないんだよ。でも恐怖を生み出す行為を無くす事は出来ないの。だって何を恐怖と感じるか、何を不幸と感じるかは人の勝手だもの。だから神様は考えた。脳を弄くっちゃえばいいんだ!!」
「へ?」
「あらゆる苦痛や恐怖を最上の喜び、幸福に変えちゃったんだよ。だから、天獄にいる人たちはみんな永遠の幸せを手にいれたの。それは新しく来た人達からすれば阿鼻叫喚の絵図だろうね。神様はそれを見て微笑んでるんじゃないかな?。まあ、神のみぞ知るっていうやつだね。そして天使の言葉に嘘はない。教えを守れば幸せになれる。みんな報われるってね」
「へ?へ?落ち着いて、落ち着いて」
「どうしたの?」
「○○ちゃんの話怖すぎだよ。やだよ私そんな世界に行くの。絶対嫌だ」
「ああ大丈夫よ。ただの例え話だから」
「でも、でも…。うん」
「ハハ」
「もっと楽しい話しよ…」
「私は楽しかったよ?○○の怖がる可愛い顔見れて」
「ムー」
彼女は鮮やかに笑いそれに対して頬を膨らませる。
「可愛いな!!この!この!」
「もう!あんな怖い話やめてよね」
「えー○○の可愛い顔もっとみーたーいー」
「もう、全く」
こんなこと言われたら怒るに怒れない。もどかしい気持ちだ全く。
そして、私達はまた他愛のない話をしながら自分達の家へ帰っていった。




