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6.再会『少女が倒れた、ある冬の日』

※2013~同人誌で各イベントにて発表済みの作品に加筆修正を加えています。

※他サイトに重複投稿を行います。

※更新は火・木・土にて定期的に行います。

挿絵(By みてみん)

「………逃げたか」

イースフォウ……いや、イースフォウの体を借りたクロは、抉れた地面を眺めながらつぶやいた。

相手の少女は、何度もこちらに攻撃を繰り出した。だが、クロの繰り出す炎は全ての風を弾き飛ばし、全てを燃やしつくす勢いで少女に襲いかかった。

何度か無理な攻撃を繰り返し、あの少女も理解したのだろうか。クロの攻撃の一瞬の隙を突いて、その姿を消した。

「セーフティがかかってたせいで、取り逃がしちまった」

「――……あのね、それでも限界ギリギリだったのよ? 実際のところ、イースフォウの身体に、それ相応の疲労が蓄積されたわ――」

「まあ、宿主が健康でいるのは、俺にとっても好都合だ。礼を言っておくぜ、ヒール」

「――……助かったわクロ。私じゃあフォウは救えないから――」

クロとヒール、二つの旧文明の遺産は、ひとまず戦闘が終わったことに安堵する。

「しかし、あれだけ騒いで誰も来ないってことは、結界でも張られていたってことか?」

「その可能性は十分だわ。フォウもこの公園に入ってから無防備だったし、おそらくそのくらいの時間はあったはずよ」

クロは腕組みをしながら思考する。

「となると、俺達じゃあここを脱出できねえな」

「――私たちからしてみれば、仙気術なんて未知の力だからね。やるとしたら、力技で次元をこじ開けるくらいしか……。クロ、あなたが無理やりこじ開ければいいんじゃない?――」

ヒールの問いかけに、クロは首を横に振る。

「いや、悪いがそれはできない。俺は大半の機能が封印されていて、ごく限られた場合にしか力を行使できない事は知ってるだろう?」

「――……ええ――」

「さっきは、『宿主に対し敵が居つつ、戦闘不能に陥る』って言う状況だから、一時的に俺の力の封印が解けたんだよ」

「――……ふうん。じゃあ、今は……――」

「敵が眼前にいないからな。ただ意識の無いフォウを操るくらいしか出来ねえよ」

「――……フォウが意識を取り戻すまで、動けそうに無いという事ですか――」

ヒールがため息交じりにつぶやく。敵は去ったが、いつまでもこのままでいるのも問題である。

出来るだけ早く、イースフォウの身体を休ませなければならない。

とその時、イースフォウが立っている場所から少し離れたところで、バキバキバキと爆発が起きた。

「ん? なんだ?」

「――また敵!?――」

何もないところでの爆発、ヒールは慌てこそしたが、クロは冷静に分析する。

「敵じゃないな。殺気もないし、大方何か気づいた近隣の仙気術者が、結界をこじ開けたんだろ」

黒がそう言ったすぐ後、こじ開けられた空間のひずみから、大きな影が飛び出してきた。

「……ドラゴン? またずいぶん珍しい援軍だなぁ」

しかし、そのドラゴンの腕に抱かれている人物を見て、クロはつぶやく。

「……少し厄介だなぁ」

「――かもしれないわ――」

ヒールも全く同じ意見だった。

クロはすぐに気絶した振りでもしようかと考える。だがそれより先に、ドラゴンに抱かれた少女がこちらを見つけてしまった。

「イースちゃん!? イースちゃんじゃない!!」

梨本森野は、周囲の警戒をしながら、ドラゴンの腕からすり抜けると、イースフォウのもとに駆け付けた。

「なんなの、この結界!? それに、見るからに戦闘後みたいだけど」

結界内は、その外の公園と同じ情景をしている。が、地面は抉れ、器物は破壊され、木は折れ曲がっている。

結界とは、その空間コピーして並行世界を展開する術である。その為、結界内と外は全く同じ情景をしている。もちろん、結界内がいくら破壊されようとも、結界の外では器物は破壊されていない。

しかし、重要なのはそんなことではない。

クロは、どうしようか悩む。

『クロがイースフォウを操っている』などという状況は、知られてはならないのだ。

そのような事は、一般的な伝機の人工頭脳には出来る訳がない。いや、現代の仙気学をもって他の方法を考えたとしても、可能かどうか曖昧な現象である。

つまり、クロとヒールが『ただの伝機の人工頭脳ではない』事がばれてしまう。

ここは、なんとかイースフォウに成りきるしかない。クロはそう判断した。

「あー、えーと。ちょっと通り魔に襲われた」

「通り魔……!!」

その言葉に、森野は息をのむ。

「……ちょっと前も通り魔事件が相次いでたけど……、それはもう解決したはずよ。というか、通り魔っていうレベルじゃないでしょ、この戦闘跡は」

「ええと、そんなふうに言われてもそれ以上の話では無いんだが……」

と、そこで森野は怪訝な顔をする。

「……ねえ、なんかイースちゃん、しゃべり方が」

と、そこでヒールがあわてて口をはさむ。いくらなんでも、クロは演技がなってなさすぎる。話題を変える必要があった。

「――森野さん!! 今は悪いけど、フォウを病院に連れて行ってくれないですか!?――」

剣のつかから聞こえる声に、森野は訪ねる。

「ええと、イースちゃんの伝機の人工頭脳か。なに? 怪我でもしているの? 割とそうは見えないけど……」

「――見ての通り、かなり激しい戦闘だったんです!! フォウもかなり消耗しているし、今も立っているだけでいっぱいなんです!!――」

強引だが、周囲の状況だけみれば説得力もあった。ヒールの機転に、クロも合わせる。突然ふらりと、イースフォウの身体を倒れこませた。

「あ、わるい。力が入らない……」

「ちょっと!! イースちゃん!?」

あわてて森野はイースフォウを支える。そしてすぐに理解した。イースフォウは気絶していた。

そのままクロは、イースフォウの体から自分の意識をすり抜けさせる。

そして、いつものように、黒い石の部分から声を発する。

「――限界だったんだな。きっと、本人も半分無意識な状態で戦ってたはずだ。起きても、記憶が残っているかどうか……――」

「……そうだったの?」

「――ああ。ダメージもそれなりに大きいし、仙機術も使いすぎている。疲労困憊なはずだ――」

まるで、今までずっと意識をその黒い石の中に入れていたかのように、クロは語る。

イースフォウの体を支えながら、森野は背後で待機しているレテルに声をかける。

「レッテちゃん。どうもこの子病院に運んだほうが良いみたい!! 気絶しちゃったわ!!」

「え!? 大変じゃないですか!! すぐにドラゴンの背中に乗せましょう!!」

「解ったわ、手伝って!!」

森野とレテルは、イースフォウを抱えながら、流の背中に乗る。

「この子が、森野ちゃんが話してくれてた、補習の子なんですか? ……でも、いったい何があったんでしょう」

「ん~。この子は確かに、いきなり勝負を吹っかけられる理由はあるんだけど……」

森野は、イースフォウが先日戦いで打ち負かした、赤毛の少女を思い浮かべる。

だが状況を見て、彼女は絡んでいないという結論に達した。

「……スカイライン関係なら、隠す必要もないわよねぇ? イースちゃんが『通り魔』と言ったのなら、きっと別件かな」

森野は、イースフォウの伝機に向かって声をかける。

「病院に着くまでの間、あなたたちの記録していること、全部教えてもらうからね」

そう、クロとヒールに森野は言った。

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