~プロローグ~
これは、平凡な生活を送っていた俺こと五十嵐 碧とある日現れた美しい悪魔の物語です。
じりじりと照りつける八月の日差しを浴びながら、俺は日常に飽き飽きしていた。
そんな時、そいつは現れた。
ーねぇ、五十嵐 碧くん。
「ボクと世界を滅ぼさないかい?」
あまりに驚き、目を見開く。
なんだ、こいつは。
いわゆる電波っつーやつだろうか。
腰まで伸びた蜂蜜色の金髪や青い炎のような瞳。どうやら、外国人のようだ。
おおかた、日本のアニメなどに影響されたのであろう。
「君はこの世界に満足してる?
いや、していないだろうね。
ボクだって、満足などしていないさ。このボクだってね。」
そんなふうに、彼女は如何にも芝居じみた口調で続ける。きめ細やかな肌に、悪魔のごとき美しさ。なのに電波とは……もったいないね。
はいはい、と受け流そうとした時。
表情に獣のような怒りがやどり、そして、彼女の目はーー真っ赤に燃え盛っていた。
嗚呼、いけないいけない、ボクまたやっちゃったよ、と溜息を吐く。
なんだこいつは。なんなのだ。
「まぁ驚くのも無理はないね。人の目の色が変わるなんて驚いた?そう、ボクは人ではないのさ。」
俺の日常が壊れていく。こいつは、関わってはいけないやつだったのだろう。本能がそう言っている。
今までこれ程日常が恋しかったことがあっただろうか。
女はいたずらっ子のようなあどけない顔で笑っている。
「さぁ、五十嵐 碧くん。今からボクに殺されるのと、ボクと世界を滅ぼすこと。どっちがいい?」
しかし、女の表情は真剣そのもの。
はは……。と乾いた笑いを浮かべる。
「断る訳ないだろう。俺がこの退屈な世界を滅ぼす。」
急き立てるように感情が高ぶっていく。
嗚呼 嗚呼 俺自身で世界を滅ぼせるこの嬉しさ。我ながらおかしいと思うほどに感情が高ぶっていた。
あははははははははははは
狂った笑い声が空に響く。
あの頃の俺は、これからの出来事を予想もしていなかったのだったーーーーー。
お読み下さり誠にありがとうございました