イケメンに告白されたけどポスター製作
放課後。場所は変わって学校近くの洒落た喫茶店。
学校から最寄り駅への通り道にあるこの喫茶店は、学生にも優しいリーズナブルなお値段も合わさり、毎日学校帰りの書生さんで賑わっている。
そんな喫茶店に、私はクラスの女子数名(+パソコン部員)と共に来ていた。……女装で。
「……もうあえて何も言うまい」
「うわあ、古雅さんの目が死んでる」
「それでも損なわれない美少女っぷりマジパ無い」
こんなこともあろうかと(あってほしくなかったけど)持ってきていた化粧品とウィッグで自らを飾り立て、何処からか調達されてきた女子の制服を着こんで見た目は完璧に女子。
胸はタオルで盛ってます。具体的なやり方は聞かないで。準備してると微妙に虚しくなるから。
「……居心地悪い」
そして女子(と女装男子)に囲まれたパソコン部の目も死んでる。
そりゃそうだろう。私も女装しないで女子の群れに放り込まれたらそうなる。
「じゃあ、改めて選挙ポスターをどうするかなんだけど」
そして目が死んでる男子二人を放置して話を進める委員長。
最近なんかいい性格になってない委員長。何があなたをハジケさせたの委員長。
「はい、パソコン部説明」
「了。まずはコンセプトを決めます。というかそれを決めないと、写真もどんなのを撮ったらいいのか分からん」
「コンセプト?」
「分かりやすくキャッチフレーズを決めるとか。ポスターにどんな文章を入れるか。それで方向性も決まるし」
「はい! それなら良いのがあります!」
パソコン部の説明を聞いて元気よく挙手する女子。
というか意外に真面目だねパソコン部。男の娘を求めてシャウトしていたとは思えないよパソコン部。
「ずばり『清く正しく美しく!』」
「待てや」
何その合ってるけど間違ってるキャッチフレーズ。
「最後のいらないだろ!?『美しく』とか絶対本人の自称だと思われるだろ!?」
「え? でも九重先輩の選挙ポスターの文章これだったよ?」
アオイせんぱーい!?
最近貴女が何を考えてるのか分かりません。
「そんなことより古雅さーん。その格好で男言葉はやめてー」
「え、男言葉でも声は女の子だからありじゃない?」
そんなこと扱いされたでござる。
良いの? 女装男子が『美しく』とか、ある意味女子に喧嘩売ってるんじゃないの?
「採用」
「待てや」
そしてこっちも最近何を考えてるのか分からない委員長。
「九重先輩のキャッチフレーズを使うのは良いと思うよ。古雅さんが九重先輩の後継だって分かりやすいし」
「何より古雅さんに『美しく』とか言われたら、女子は八割膝を屈するから」
私のせいで八割の女子のプライドが折れる!?
「キャッチフレーズはそれでいくとして」
「いくの!?」
「他にも一文欲しいよね。こう、古雅さんの在り方じゃなくて、生徒会長としての方針みたいな」
私のポスターなのに私の意見が通らない件。
うん、もういいよ。煮るなり焼くなり好きにすればいいよ。
「はい。『自由な学園を目指して』」
「自由過ぎるわ!?」
前言撤回。
一見問題無いけど、女装男子がそんな発言したら十中八九誤解される。
『あ、この人学校でも常に女装したいんだな』とか思われる。
「採用」
「何故に!?」
そして少しのブレも無い委員長。むしろそこはブレてください委員長。
「じゃあパソコン部。写真の方向性は『全校生徒が平伏す美しさ』で」
「ガッテン」
「承知するの!?」
何その方向性!? 私を学園の女王にでもする気か!?
「どうしてこうなった……」
最近口慣れてきた呟きは、喫茶店のBGMにまぎれて消えた。