イケメンに告白されたけど生徒会立候補
今回は短め。
女装なんぞやっているが、俺はそれが特殊で世間から白眼視されるものである事は自覚している。
だから女装するのは休日だけ。地元の知り合いと会わないような、少し離れた場所でしか女装はしてこなかった。
だというのに……何故俺は学校で女装。しかもメイドの格好をしているのでしょうか。
「きゃー、可愛い!」
「本当! 先輩たちの言ってた通り!」
「写メ撮っていい!?」
「勘弁してください」
休日開けの学校。メイド服を届けたはいいが、女子の一人が「着るとどんな感じ?」と疑問を発し、「誰か着てみれば良いんじゃない?」と誰かが提案し、「じゃあ古雅くんに着てもらおっか」という結論に達した謎。
メイド教育もそうだが、何故に男子の俺がクラスのメイド最前線を突っ走っているのか。
女装は隠れてするものだよ。学校でカミングアウトするものじゃないよ。
「大丈夫。可愛いから」
可愛いは正義。一つの真理によって俺の葛藤は無視された。
いや、まあ、ここまで人気あるのは女装子としては嬉しいよ。だけど普段の俺は目立たない男子筆頭なわけで、男としては悲しい。
「……可愛い。可愛いけど……!」
「……俺はノーマル俺はノーマル俺はノーマル」
「本当女子みたいだよねぇ」
遠慮をどこかに置き忘れた女子とは違い、男子の反応は様々だった。
可愛いと認めつつも違和感を捨てきれない人。アブノーマルな扉を開きそうな人。そして普通に受け入れちゃってる人。
うん、何かもう明日から普通に男子の輪に入る自信ない。
「おまえたち何を騒いで……」
灰色の髪が素敵なナイスミドル担任登場。俺を見て硬直。
そりゃクラスの男子が一人減って女子が一人増えてたら固まるだろう。
女装趣味は内申に影響するのだろうか。内申書に「備考:女装癖あり」とか書かれたら軽く死ねるんですが(社会的に)。
「……文化祭のだしものか?」
意外に冷静だった。失礼だが歳もいってるし、こういうのに理解は得られないと思っていたのだが。
「文化祭の話題とりに女装はまあ在るからな。……男子校だと洒落にならんから禁止したが」
どう洒落にならないのかは言わなくていいです。もしここが男子校だったら、女装趣味がばれた瞬間えらいことになっていたのでは。
具体的には今周りを囲っている女子が男子に変わる。……何その地獄!?
「それと古雅。生徒会の方に立候補届けを出しておいたぞ」
「何故に!?」
この悪評の中(クラスメート除く)生徒会に立候補しろとな。壇上に上がった瞬間「あれが女装好きの……」とか「変態……」とかざわつき出すのが目に見えるわ!?
「前に聞いたときは立候補すると言ってただろう」
「……言ったかも」
うん。アオイ先輩に推薦されたので、断わりきれずに押し切られたような。……女装ばれした後に辞退するのを忘れてたね。先生のせいじゃ無くて私の自業自得だね。
「生徒会長は色々大変かもしれないが、古雅はやるべきことはしっかりやるタイプだから大丈……」
「何故に生徒会長!?」
流石にそれは聞いてない。私が渋々押し切られたのは、平役員だと思ってたからなんですけど。
「三年は引退するんだ。二年は一年を引っ張るためにも平ではいかんだろう」
「なら会計や書記でも……」
「九重からの推薦だ」
アオイせんぱーい!?
私の事を高く評価してくれるのはありがたいですが、生徒会長は荷が重いです。
「古雅さん。大丈夫。みんなで応援するから!」
「どうせなら演説も女装でしようよ古雅さん! 当選確実だよ!」
ないわ。私が投票する側でもないわ。仮にそれで当選しても、他の役員との軋轢が恐いわ。
というかさっきから女子の私の呼び名が「古雅くん」から「古雅さん」にさり気なくシフトしてるよ。逆に男子との距離が遠いし、自分の立ち居地が分からなくなってきたよ。
「話は聞かせてもらったわ!」
「どこから!?」
いつぞやと同じようにスパアァンと教室の扉を開け放って現れるアオイ先輩。
いや、本当にどこから話を聞いてるんですか。……メイド服に盗聴器ついてないよね?
「古雅くんが生徒会長に立候補するなら、私は現会長として全面的にバックアップさせてもらうわ」
「それ職権乱用……」
「権力は使うためにあるの」
断言した!?
「……それに指導という口実で古雅くんと一緒に居られるし」
ボソッと本音漏らした。仮に生徒会長をやる羽目になったら、アオイ先輩の指導は確かにありがたいが、別の指導が始まりそうなのは考えすぎではあるまい。
「……どうしてこうなった」
口癖になりつつある呟きは、本人を置いて盛り上がる女子たちの声にかき消された。