表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/26

イケメンに告白されたけどごめんなさい

「思わぬ過程だったけど、うまくおさまったわね」


 本家からの帰り道。行きと同じく無駄に長いリムジンに揺られながら、私はアオイ先輩に絡まれていた。

 いや、比喩じゃなく物理的に。


「……何この状態!?」

「疲れた古雅くんを癒してるのよ」

「癒されねぇ!?」


 憧れの先輩に膝に乗せられて体まさぐられてどう癒されろと!?

 相手が綾月先輩じゃないだけマシというかご褒美だけども!?


「古雅くん。胸にも拘りを持ちましょう。弾力が足りないわ」

「無造作に揉むなし」


 布をつめた私の胸元を揉みしだくアオイ先輩。

 癒されては無かったけど、ちょっとドキドキしてたのに一気に冷めた。


「でも良かったの?」

「後継のことですか? 昔はともかく今は本心から継ぐつもりですよ」

「そうじゃなくて、ユミコさん」

「はい?」

「本家の誤解を煽ったのはユミコさんでしょう?」


 当たり前のように言われて、私はアオイ先輩の膝の上で固まった。


「……何で見てきたように確信してるんですか」

「女の勘」


 あらゆる反論を許さないリーサルウェポンきた。


「……まあ悪意からでは無いと思うので。いつも泣いていた私を、逃がそうとしたんだと思いますよ」

「それが善意だとしても、貴方は許せるの?」

「爺様にも言いましたけど、逃げたかったのは本当でしたし」


 もしあのまま、負荷に耐えられるかも分からない子供のまま修行を続けていたら、私は潰れずにいられただろうか。

 逃げ出したからこそ私は歌舞伎を見つめ直し、その業を継ぐ決意ができた。


「むしろ裏切られたのはユミコさんじゃないですか? 折角逃がしたやつがノコノコ戻ってくるんだから」

「……どちらにせよ、複雑な関係になりそうね貴方たち」

「ですねー」


 一度よく話し合うにしても、今後どんな付き合い方になることやら。

 少なくとも、昔みたいな関係には戻れないだろう。そうするにはお互いに大人になったし、大人にならなくてはならない。


「それにしてもこれから大変ね古雅くんは」

「確かにブランクがありますし、しばらくは歌舞伎修行に専ね……」

「古雅くん。貴方自分が生徒会長だって忘れてないかしら?」

「………………」


 ……忘れてた!?


「……一身上の都合で生徒会長を辞任」

「北条さんに殺されるわよ」


 うわぁマジで? 容赦ないなぁうちの生徒会書記。


「大車輪な高校生活頑張りましょうね」

「わーい、頑張りまーす」


 あまりの前途の多難さに、私はアオイ先輩に抱かれたまま現実逃避した。



「ごめんなさい」


 週明けの学校。私は人気のない校舎裏の雑木林で、深く頭を下げていた。


「……どういうことかな?」


 頭を下げられた相手――綾月先輩は、わけがわからないとばかりに目を丸くしていた。

 まあ当然の反応か。


「しばらく……多分これから数年、私は忙しくて恋なんてする暇も無くなります。だから綾月先輩の気持ちには応えられません」

「……その断り方じゃ五十点だね」

「手厳しい!?」


 相手がありえない相手とはいえ、一応誠意を見せようとしたのにまさかのダメ出し。

 え、何? もっと辛辣にいくべきだった?


「どうせ応える気なんてないんだから、希望なんて持たせずにキッパリ断らないと。その断り方だと数年ストーカーばりに待たれるかもしれないよ」

「……待つ気ですか?」

「いいや。リョウちゃんの事情は知ってるしね。わざわざ重荷になるようなことはしないさ」


 そう言って綾月先輩は朗らかに、見惚れるほど綺麗に笑う。

 まったく。告白の相手が男でなければ、簡単に想いは実っただろうに。


「私が女だったら、綾月先輩を好きになってたかも知れないんですけどね」

「それだったら、僕はリョウちゃんを好きになって無かったね」


 ああ、何だろう私たちのこの関係は。

 結局の所、私たちは。


「とことん噛み合わない運命だったわけですね」

「そうだねぇ、残念だけど」


 そう言って、私たちは笑った。


「ありがとうございました。告白自体は迷惑でしたけど、一連の騒動はそれなりに楽しかったです」

「こちらこそ。楽しかったよ」


 差し出された手を握り返す。触れた手には、もう嫌悪感を覚えなかった。


「……私が一人前になる頃には、是非舞台を見に来てください」

「……ああ。『友人』の晴れ舞台を楽しみにしてるよ」


 そう言うと、私たちは笑って手を離した。


 これが最後。そして始まり。

 おかしな告白から始まった関係は、ようやくまともに回り始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ