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イケメンに告白されたけどトラウマ襲来

 メイド喫茶と言っても、メイドさんは二年C組の女子の皆さんなわけで、その口調は非常に怪しい。

 学生のお遊びという言い訳もあるので、最終的にはお客さんを「旦那様」「お嬢様」と呼ぶだけで妥協した。

 ……私の身を削るメイド教育の意味は!?


「……あら、紅茶も美味しいわね」

「ありがとうございます」

「ケーキは手作りみたいだけど、リョウちゃんが作ったのかい?」

「いえ、そのような暇はありませんでしたので」


 午後に入りメイドとして働き始めて第一発。いきなり現れたアオイ先輩と綾月先輩コンビに指名され、私はほぼ専属メイドと化している。

 指名制度とか無かったよね!? 何で私だけ!?


「三角関係キター!!」

「うわー、絵になるわあの三人」


 そして他のお客さん大注目。というか一部メイドも職務放棄して注目。

 仕事しろや。グリグリされたいのか。


「お二人は何故一緒に?」

「古雅くんが出てくるのを待っていたら鉢合わせしたのよ」

「最初は別に入るつもりだったんだけどね。僕たち二人でお願いしたら、リョウちゃんを独り占めできるかもって思い直したんだ」


 めんどくさい二人が結託しやがった。

 確かにこの二人が組んだら逆らえる人間は居ない。私と藤絵さんが全力を出しても無理だろう。


「……」


 そしてその藤絵さんが捨てられた子犬のような目でこちらを見ている。隣には冷めた目の北条さん。

 ……何でいるんですか。

 二時にくるんじゃなかったの? まさか我慢できなかったの?


「……あの、友人が来ているのでそちらに行きたいのですが」

「ふふ、そのお願いは聞けないなぁ」


 言った瞬間見た目そっと、実際にはガシッと私の手を握ってくる綾月先輩。


「その友達は僕より大事なのかい? もしそうなら妬けちゃうね」


 穏やかに言ってはいるが、捕まれた手首がミシミシいってる上に目が笑ってない。ぶっちゃけ恐い。

 あかん。邪険にしすぎたせいかヤンデレ覚醒しかけとる。

 好きな子がヤンデレなら全力で受け止めるのもやぶさかではないが、男のヤンデレなんぞ受け入れる懐は私にはありません。


「あらあら、ダメよマサト。古雅くんが困ってるわ」

「ごふぅあぁっ!?」


 アオイ先輩笑顔で喉チョップ。奇妙な悲鳴を吹いて崩れる綾月先輩。

 容赦無ぇ!? つーか恐ぇ!?


「こっちは良いから行ってらっしゃい。マサトは私が棄て……面倒を見るから」

「……」


 良い笑顔で言うアオイ先輩。

 あかん。この人も一歩間違えたらヤンデレ化しそうだ。

 本気で彼女作って、この訳のわからん三角関係終わらせた方が良いかもしれない。

 ……それはそれで血を見そうだ。私はどうすれば。



「お帰りなさいませお嬢様」

「おか……? ああ、そういう設定ですのね」


 私の挨拶に戸惑った様子を見せた藤絵さんだったけど、すぐに状況を飲み込むと笑顔を向けてきた。


「流石古雅さん。メイド姿も素敵ですわ。古雅さんは流行の服よりもクラシックな衣装が似合いますわね」

「まあ体格を隠すなら露出が少ない方が良いしね」


 工事かドーピングでもしない限り、どうやったって男女の骨格の違いによる体格差は埋められない。

 仮に埋まったらそれはもう男じゃない、男の娘だ。

 女装は好きだが男の娘になる勇気は私には無い。


「生徒会の方も問題は無さそうですわね。九重先輩の手伝いをしていらしたから、あまり心配はしていませんでしたけど」

「いや、やっぱり手伝うのと自分でやるのは違うよ。まあ人前に出るのは慣れてるから、まだマシだけど」

「そうなのですか? でもキミカも誉めてましたわよ?」

「ほ、誉めてないわよ!?」


 ツンデレ乙。とか言ったら間違いなく睨まれるので飲み込んだ。


「北条さんもしかして私嫌い?」

「嫌いに決まってんでしょうが!?」


 ガアッと吼えながら言う北条さん。これほど分かりやすい人も珍しい。

 からかったら面白そうだけど、間違いなく好感度が下がるので自重しよう。


「もう。素直じゃありませんわねキミカは」

「レイカ様!? 大体レイカ様は古雅に負けて悔しくないんですか!?」

「お友達ですもの。悔しくはあれど祝福して差し上げるのが当然でしょう?」


 花の咲くような、見惚れそうな笑顔で言う藤絵さん。

 多分取り巻きは居ても友達は居なかったんだろうなぁ。友達という部分が強調されてる気がする。


「それで……あら、何かしら?」


 不意に廊下が騒がしくなり、人垣が波のように割れていく。

 するとその間から、他校の制服を着た一人の女子生徒が現れる。

 他校の、誰もが見知らぬはずの女子生徒を見て、私は頭の血がひくような、言いようのない不安感に包また。


「……姉さん」

「……え?」

「……ええ!?」


 藤絵さんと北条さんが呆気にとられているのにも気付かず、私はそのよく見知った人を呆然と見つめていた。



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