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イケメンに告白されたけど友達ができました

 校舎裏の雑木林で出会った怠系男子。名を宮小路零と言うらしい(委員長情報)。

 名前の読みはレイじゃなくてゼロ。……親は何を考えてそんな名前をつけた!?


「空手部のエースだね。全国大会にも出たらしいよ」

「え? あれで?」


 すんごいトロそうな人だったんだけど。

 スイッチ入ったら人格変わるタイプか? たまに居るんだよね、普段おっとりなのに試合とかになるといきなり素早くなる人。


「それで、その宮小路先輩がどうしたの?」

「えーと、昨日少し話して、応援ついでにクラスメートにも私を推してくれるって」


 というか先輩だったのか。癖とはいえ、敬語で話しといて良かった。

 まあ怠系男子……宮小路先輩はあんまそういうの気にしなさそうだけど。


「つまり私の作戦は当たりなわけね。よし、今日も女装日和だよ古雅くん!」

「そんな日和は存在しねえ!?」


 笑顔で人の鞄から女装セットを取り出す委員長。だがこれ以上は俺も流されないぞ。


「君に拒否権は存在しない」

「クラスの女子24名を敵に回して逃げられるとでも?」


 即座に女子の包囲網完成。うちの学年は女子の方が多く、クラスの男子は16名しか居ない。

 そしてそそくさと教室から出ていく男子15名。

 ……待てや。


「助けろよ!?」

「だって古雅を差し出さないと俺たちにもメイドやらすって委員長が!?」


 いつの間にそんな取引が!?


「すまん古雅! おまえの犠牲は五分くらいは忘れない!」

「お、俺が生徒会長になったら男子の制服スカートにしてやる!」

「いや、無理だろ」


 苦し紛れの脅しは冷静に正論で返された。……ちくせう。



「……もう嫌だ」


 校舎のすみにある自販機前。その前に置かれたベンチに腰かけ、私は鬱っていた。女装で。


 女装は嫌いじゃない。むしろ好きだ。好きじゃなきゃ趣味でやったりしない。

 だけどここは学校で、女装というのは奇異の目で見られる趣味なのだ。面と向かって何かを言われなくても、奇妙なものを見るようなそれに晒されるのはストレスがたまる。


「女の子に生まれてれば……というのも違うしね」


 それだと女の子と付き合えない。いや、世の中には女の子同士のカップルも居るけども、やはりそれは一般的価値観からすればおかしな事だ。


「あー、隠れてやってるだけならこんな悩まなくても良いのに」

「それは少し残念ですわね」

「はい?」


 突然声をかけられ振り向けば、そこには金髪縦ロールさんがお財布片手に自販機に向かっていた。


「……藤絵さん?」

「ミルクティーで良いかしら? いえ、古雅さんも一応は殿方ですし、コーヒーかしら」


 なんの話ですか。

 私が反応できずに固まっていると、藤絵さんは無言で自販機から飲み物を取りだし、流れるような動作で隣に腰かけた。


「どうぞ」

「……どうも」


 そしていきなり缶コーヒーを渡してくる。

 ……いらないというのも失礼なので受け取ったけど、これは一体どんな状況ですか?


「この間は無礼を……申し訳ありません。私の周りの方々が古雅さんに反感を抱いておりまして、ああいう態度を取らざるを得なくて……」


 要は自分の派閥の女子に考慮して宣戦布告をしただけで、藤絵さん自身は私に思うところは無いらしい。

 ……その割りにはえらい勢いで逃げてたけど。


「あ、あれは古雅さんが突然話しかけられたので、心の準備ができず……」

「何故に私と話すのに心の準備がいるの?」


 綾月先輩やアオイ先輩と違って、私はただの一般人ですよ。

 ……一般人ですよ?


「……その」

「はい?」

「じ、実は私……男性恐怖症で……」

「……わお」


 まさかの男性恐怖症。

 え、高飛車キャラには致命的じゃないそれ? 周りにばれないの?


「それで……見た目女性な古雅さんなら大丈夫なのではと、ポスターを見ながら自己暗示を……」

「……」


 何も言えない。男性不振のアオイ先輩に惚れられたと思ったら、今度は男性恐怖症か。

 私の周りには私を男と認めない人が集まる臭いでも漂ってるのか。


「……で、今は大丈夫だと?」

「そうなんです! 私男性が半径五メートル以内に近付くと冷や汗が出るのに、古雅さんは全然平気で……」


 輝くような笑顔で、嬉しそうに言う藤絵さん。

 しかしそれはつまり、藤絵さんの深層意識内において、私は完璧に女子と認識されているわけで。

 ……女装子としては嬉しいけど、男としては納得いかん。


「それで、その、図々しいとは承知しているのですが……」


 頬を染め、何やらもじもじしながら言葉を紡ぐ藤絵さん。

 うん可愛い。可愛いけどなんか納得いかん。


「お友達に……なってはいただけませんでしょうか?」

「……」


 不安そうに、上目遣いで聞いてくる藤絵さん。

 うん可愛い。可愛すぎて私の男脳も女脳も完全敗北です。

 男の矜持なんて女の子の可愛さの前ではプチトマトのヘタ程度の価値もありません。


 そうして私は生徒会選挙の対立候補とお友達になりました。

 ……あれ?

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