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イケメンに告白されたけど親方! 空からイケメンが!

 さて。藤絵さんがカモシカのような足をチラリズムしながら去った後。私は改めて手の中のポスターの処遇について悩んでいた。

 考えてみれば、私には現生徒会長であるアオイ先輩という頼りになる味方が居る。

 ポスターの一枚や十枚、貼る場所くらい提供してくれるかもしれない。


「いっそ木に貼って回るとか」

「……駄目だろ」

「はい?」


 独り言に返答あり。首をかしげながら声のした方を向けば、そこには樹齢百年(多分)のくぬぎの幹が。

 ……木が喋った!?


「いや、無い無い」


 世界観的に無い。最近世界観がおかしい気がするけどそれは無い。

 そう思いながら幹の裏に回ってみたけど、やはり誰もいない。

 ……あれ?


「……上だ」

「はい?」


 言われて見上げれば、そこには太い枝が一本。

 そしてその枝の上に、ふわふわとした銀髪の男子生徒が、両手を頭の後ろで組み幹にもたれるように座っていた。


「……何故に!?」


 無理でしょ。その体勢は無理あるでしょ!?

 昼寝? 昼寝なの!? 木の上で昼寝ってあんたはどこの不良気味な友人キャラだよ!?


「……どけ」

「へ……きゃあ!?」


 何か言ったと思ったら、いきなり降ってくる怠そうな男子。

 はっきり喋れよ!? 低い上にくぐもってて聞き取りづらいわ!?


「何やってる……古雅?」

「はい?」


 いきなり名前を呼ばれ、はて知り合いだったかと思い返す。

 猫っ毛な銀髪に、眠そうな半開きの目。身長は羨ましくなるくらい高い。

 うん。こんな目立つ人知りません。

 この学校生徒数が多いからね。私が人の顔を覚えないわけではない。……多分。


「生徒会立候補者……だろ?」

「あーはい、そうですが」


 首をコテンと傾けながら聞いてくる怠系男子。見上げるくらいでかいのに、その仕種が可愛いのはどんな不思議マジックだ。


「クラスでも……騒いでるのがいる。……美少女対決」

「あー」


 やはりそういう方向で盛り上がってるのか。半ばそちらに誘導したとはいえ、どちらが生徒会長に相応しいかとかは話されて無さそう。

 まあ未だはっきりとした方針を伝える場が無いから、仕方ない面もあるのだけど。


「因みに私と藤絵さんどちらが人気ですか?」

「……多分……藤絵」


 ですよねー。


「一部が……『古雅はありえない』って……何でだろうな」


 男だからだと思います。

 うん、まあ話の筋が『美少女対決』ならそうなるわ。同程度の美少女と女装子なら美少女が勝つわそりゃ。


「でも……俺は藤絵みたいなのは苦手……だ」

「でしょうね」


 話し方からしてのんびりというかのろいというか、キッチリシャッキリな性格の藤絵さんとはさぞ相性が悪いだろう。


「古雅は……生徒会長になったらどんな学校にしたいんだ?」

「……私?」


 思わず聞き返せば、怠系男子はコクりと頷いた。


 はて、私が生徒会長になってどうしたいか。

 ぶっちゃけ考えてなかった。生徒会はともかく生徒会長に立候補するつもりは無かったし、立候補が決まっても周りに振り回されてそんなことを考える余裕も無かった。


 私は、俺は、どんな学校にしたいのだろう。


「活気のある……なんて目指しても、ついてこれない人が居ますよね」


 目の前の怠系男子とか。

 行事やらイベントを盛り上げるのは良いこと。だけどそういうお祭り騒ぎが嫌いな人間だっている。踊る阿呆に見る阿呆と言っても、躍りが嫌いな阿呆は損してばっかりだ。

 盛り上げるために全体を巻き込めば、居心地の悪い人も出てくる。要は思いやりと相互理解があれば、そういう摩擦は減るとおもうんだけど……。


「……みんな仲良く?」


 頭にピンと来たので、人差し指をピンと立てながら言ってみる。

 うん、それだ。それならイベントは盛り上がるし、控え目な人へのフォローもみんなでするようになるだろうっ……て小学生か!?


「無し! 今の無しで!」

「……いや」


 前言を撤回したら否定された。……何故に!?


「……良いと思う。グダグタ言われるより……分かりやすい」


 それはあんたが長い話をアボイドスリープするからではないのかと。

 こいつ絶対校長先生の話で寝るタイプだ。世の中には立ったまま寝るという特殊スキルを完備した変人が割と居るし。

 しかも上級者は歩きながら寝る。眠りながらも障害物は避けるその様は、人類の新たな可能性を感じさせるほどだ。真似したら高確率で死ぬけど。


「……おまえ面白い」


 変人に面白い奴認定されたでござる。……解せぬ。


「むぅ。まあ良いです。ともあれ選挙の際は清き一票をお願いします。不本意な立候補であれ、やるからには全力が私のモットーなので」

「……応援してる」


 片手を上げて言えば、怠系男子も手を上げてハイタッチ……せずに頭をぺしっと叩かれた。


「乙女の頭を触るのは二次元だけにしてください!?」

「……え?」


 え、じゃねえよ。髪型が乱れるんだよ!? 私の場合はウィッグだけども!


「おまえ……やっぱり面白い」


 顔を背けクツクツと笑う怠系男子。

 うわぁ、殴りたい。


「悪い……クラスの奴らに宣伝するから……許せ」

「……まあ良いですけど」


 こやつペースが独特すぎる。そのせいで怒りが持続しない。


「じゃあな……古雅」


 軽く手を振ると、怠系男子は去っていった。

 ……あ、名前聞くの忘れた。


 昔とある少年漫画のヒロインが実は男だと判明して、全国の少年たちの心に傷やら何やら刻み込んだとか。

 ……つまりはそういうことです。

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