臆病な僕は君に囚われる
彼女の名を呼ぶ自身の声で目が覚めた。飛び起きて辺りを見回すと、何のことはない。ここは俺の部屋だ。
内容など欠片ほども記憶していないというのに、その夢からの極度の緊張から解かれた俺は、思わず安堵の溜め息を漏らした。
火照り汗ばんだ身体が、どうも心地良くない。
「……夢」
一人呟き、壁の時計を横目に見る。時刻は午前4時を回ったばかり。
初夏なだけあり、時節柄窓の外はもう明るくなり始めているが、床を離れるにはまだ早い。
しかし、だからといってこうも寝起きが悪いと、もうひと眠りという気になれるはずもない。仕方なく生ぬるい布団から出た。
寝間着は思った以上に汗に濡れており、このままいては風邪をひきかねない。少しばかり早いが、俺は制服に着替えてしまうことにした。
「…………」
しかし、寝間着のボタンを中程まで取り去ったところで、ふと、視界の隅にあるものをとらえた。俺は着替えの手を止め、それが鎮座する机へと足を運ぶ。
それは古い木製のバイオリンケース。中には勿論バイオリンが眠っている。
ケースの前に立った俺は、何を考えるでもなく自然に、ごく自然に開錠し蓋を開いた。
長年愛用しているそのバイオリンは、窓から差し込む淡い光を受け独特の光沢を放つ。木目による部分的な色の違いや演奏者の癖で付いた表面の細かい傷。何もかもが折り重なりあって作りだされるその光は、幾多の音を奏でてきた楽器にしか生まれない。
俺はぼんやりとバイオリンに手を伸ばした。
弦にそっと指を這わせる。
と、再び漏れ出る溜め息。今度は先程よりも大きなものだ。
先のコンクールが終わり、早一週間。
結果は特に気にしていない。結果が良かったからといって、諸手を挙げて喜べるはずもない。コンクールというものはただ将来への踏み台にすぎないのだから。
俺は幼いころから、音楽のことだけを考えて生きてきた。物心つく前から耳にしていた音楽、手にしていたバイオリン。今も昔も、俺という存在は音楽によって構成されているようなもので、また音楽によって守られてきた、と言っても過言ではない。その存在が当前であり必須。それくらいに俺の周りは音楽に満ち満ちていた。
――――はずであった。
はずであったのだが、しかし、である。
恥ずかしながら、ここ一週間ばかり、どうも練習に身が入らないでいるのだ。
音楽だけをまっすぐに見てきたはずの俺としたことが、貴重な練習時間に集中することができない。まったく考えるのもおこがましいことである。
勿論、その原因は熟考に熟考を重ね、結論を捻出済みである。まずは結論から言おう。
『矢式嘉乃』
それがこの溜め息の嵐と、いたたまれない焦燥感の原因である。
練習中、食事中、就寝前、あるいは夢の中までも……。この一週間。何をしている時もこの矢式嘉乃なる人物の顔が、声が、面影が、浮かんできては俺の邪魔をするのだ。
もうここまで明かしてしまったのなら仕方がない。不本意ではあるが、事実を述べよう。
実をいうと、俺はその矢式嘉乃から告白をされたのだ。勿論、告白というのは、秘密の暴露といった意味合いではない。――そこは語らずとも察してほしい。
先日、コンクール終わりの帰り際。時刻にして午後6時20分。
それは彼女からの突然の告白だった。
「先輩のことを好きになってしまいました。この責任、私とお付き合いをすることで、きっちり果たしてみませんか?」
と、まあこんな風に。
言い回しが独特。しかも限りなく強制的且つ高圧的な物言いではある。
しかし、正直言ってしまえば俺は嬉しかった――のかもしれない。いや、嬉しかったんだ。
矢式は俺より一学年下の後輩で、チェロ奏者だ。小柄な体躯には少々大ぶりな楽器を背負う姿が印象的な彼女は、学年の中でも一、二を争う秀才で上級学年の間でも知らない者はいなかった。俺もその例にもれず、彼女の噂は耳にしていた。
しかし、実力とは反対に、その人物評価はお世辞にも良いと言えるものではなかった。先述のごとく独特な言葉選び。そしてどこか人を寄せ付けない極地の氷を思わせるような冷たい雰囲気。それが起因してか、確実に彼女は孤立しているようだった――当人はあっけらかんとして無関心であったが。
まあ、その点は俺も他人のことは言えない立場ではあるのだが。
その彼女が昨年の学年終わりの3月初頭。俺のところを訪ねてきたのだ。
練習室の扉から覗く、丸い瞳。肩で切りそろえられた上質の黒髪。背にはチェロ、手には楽譜の束。
『清かに澄んだ先輩のその高音の響きには、甘く震わす私の低音が良く映えると思いませんか?』
それが俺と彼女との関係性の始まりであった。
始めはさすがに抵抗もあったが、その日から何故か毎日のようにやってくる後輩に、いつしか音を心を開いていた。
というわけで、告白された俺。
返事はまだしていない。ならば嬉しいなどという言葉を使うな、という声がどこかから聞こえてきそうな気もするが、していないのである。
そこがまた、悩みの一つでもあるのだ。
どうしたものか俺はあの日から、彼女にどう接するべきか、どう声をかけるべきか分からず、考えあぐねている。彼女の姿を目すると、途端に逃げ出してしまうのである。それも自然と無意識に。
「好き」という感情は俺には難しすぎて、筆舌に尽くしがたいというのが事実である。しかし、何度も言うが俺はあのとき嬉しかったのだ。ならば、俺は彼女のことを……。
はっきりとしない俺を彼女は嫌いになってしまっただろうか。そして、一向にやむことのない深い溜め息。
「……っ!?」
そして、次の瞬間。俺ははっとして、我に戻った。
またしても、彼女のことを考えている自分に気が付いてしまったのだ。
「痛っ!」
その上、左手指に走る鈍痛。気持ちを上ずらせてしまい、焦りに自身の指さえ目に入らずにケースの蓋を乱暴に閉じてしまったのだ。
目に見える怪我などはしなかったが、じくじくと指から伝う痛み。
「まったく。仕様もない……」
自分自身に恥ずかしさを感じ、それと共に顔がどんどん熱を帯び、熱くなっていくのが分かる。
――少し頭を冷やそう。俺は自室を後にし、浴室へと向かった。
* * * * *
放課後。夕日に染まる大学構内の練習室で、俺は一人居残って音譜を追う。
しかし。
「……駄目だ」
バイオリンは俺の思うように音を奏でてはくれなかった。
集中しようとすればするほど、頭の奥に描かれるのは音楽ではなく――やはり、彼女なのだ。
音楽以外のことに、こんなにも心奪われることなど、これまであっただろうか。
俺はどうすれば良いのだろう。いっそのこと彼女を突き放してしまえば、これまで通り音楽に溢れた生活を送ることができるのでは? そもそも彼女が現れなければ、俺は……。
「いや、そうではないんだ」
音楽を通して掴み得た出会いを根本から否定することなど、俺にはできなかった。いや、そんな言い方で片付けるのは卑怯だ。
俺はもう、彼女への思いに気が付いているのだから。
だが、今まで音楽という視覚では捕え得ない不安定なものを見てきた俺にとって、自覚したところでそこから先が問題なのだ。
俺はこれから先、必ず音楽と彼女を天秤にかけてしまう。それが嫌なのだ。
そして、選び取るのは一つだけ。今はまだ、それがどちらかなどと明言することなどできないけれど、必ずその時はやってくるだろう。
悶々とした思考を断ち切るように、音を立てて譜面を閉じた。今日はもう帰ろう。
と、俺はバイオリンをしまおうとケースに手を伸ば――――
「や、矢式っ!?」
「なんです?」
心臓、いや体内の臓器という臓器が喉から飛び出してしまうかと思った。――少々大げさか。
一体いつからいたのだろうか。一人きりだと思っていた練習室の隅。そこに話題の人物、矢式嘉乃が立っていた。それも、チェロを背負っているため壁には凭れかからず、仁王立ちの状態で。俺とは正反対に静かな表情で。
「なんですって、いやそうではなくてだな。いつから……しかも、何故君がここに」
「いつから? 何故? そうですねえ」
矢式は可憐とも妖艶ともとれる笑みをうかべながら、俺のいる方へと近付いてきた。
「私がここへ来たのは、先輩が入室して間もなくかと。それからずっと、ここにいたのですよ。始めは声をかけようかとも思ったのですが、ずいぶんと熱心に練習されているようでしたので。ただ、時折揺れる音程と運指の遅れ、それから先輩らしくない固い音。他のことを考えていましたね?」
どきり、と高鳴る胸の音。あまりにも的確な指摘に、反論することができない。唯一反論できるとするならば、他のこととは君のことだよ矢式嘉乃。
目の前までやってきて、見上げてくる矢式。俺は動揺を悟られないように平静を装った。
「ああ、済まない。少し考え事をしていたかもしれない。俺にも考え事の一つや二つ……」
「まあ良いです。そんなこともあるでしょう」
言い訳を終える前に、勝手に納得されてしまった。
矢式は腕を組み、挑むように俺の顔を覗きこんでくる。あまりにも真っ直ぐに見つめてくるものだから、俺は思わず一歩後ずさった。射すくめられるとはこのことか。というかその言い様にこの態度、彼女は本当に俺のことを好きなのだろうか。
「や、矢式?」
「なんでしょう?」
練習室で二人きり。これは絶好のチャンスではないか。
今この場で、答えをだそう。今しかない!
俺は、彼女に威圧されながらも、大きく空気を吸い込んだ。そして、
「あの……」
「……?」
「ええと。お、俺はもう帰るから、ここを使いたいのなら使ってくれて構わない」
ああ、駄目だ。また俺は彼女を忌避するのか。
「先輩」
「ほら、まだ部屋を空けるまで30分近くある。個室を予約するのは大変だからな。下級生になると尚更だろう」
「先輩?」
「それでは、失礼する」
俺は手早く荷物をまとめると、矢式の脇をすり抜け向かいにある扉へ急ぐ。
「先輩っ!!!」
「――――っ!?」
一瞬、何が起きたのか分からなかった。
気がつけば、俺は背後から押さえつけられていた。
「な、何をするんだ。離しなさい」
背中から感じる矢式の存在。
彼女自身は細身であるから、男の俺がそれを跳ねのけることなど造作もないことだ。通常ならば。
しかし、彼女が背中に背負うものには、物質的にも精神的にも相当の重みがある。
そして不運なことに、押し付けられた練習室のドアは内開き。つまり、逃げ場はどこにもなかった。
「この状況で、離せと言われて素直に離す人がいると思いますか」
こんな状況でも矢式は普段と何ら変わらず冷静だ。それが余計に俺の動揺を、焦燥をかきたてる。
「いいから、離せって」
「離しません」
どちらも譲らない。言葉の応酬はしばらく続く。
かと思いきや、矢式の言葉とは裏腹に、彼女の俺を圧迫する力が少々弱まったことに気がついた。
「離せません。だって、まだ私は質問に答えていませんもの」
「質問?」
「ええ。先程の質問です。私が何故ここにいるのかと聞いたではないですか。……でも、その前に」
ここまで、その平坦な語調を変えることのなかった矢式であったが、最後は何か少し違った感情が混ざっていた気がした。漠然とそう感じた俺は、彼女の体が少し離れたことでいつでも逃げ出せるのを良いことに、その後の言葉を待ってしまった。
それがいけなかった。と、後から俺はそう思うことになる。
突然、荷物でふさがった俺の腕に絡みつく矢式の細くしなやかな指。瞬間の出来事とその感触に気をとられ、俺はいとも簡単に彼女に身を翻されてしまった。
気がつけば目の前には彼女の透き通るように白い相貌。そして、超至近距離で見開かた眼は、眩暈がしそうなほどに綺麗だった。
と、冷静に彼女を形容してみたものの、現在俺はかなり動揺している。しているからこその観察眼とでも言っておこうか。
とにもかくにも、である。
今度は正面から向かい合う形で、矢式と背後の扉の間に挟まれた俺は、身動きすることを再び封じられてしまった。
少しでも動けば触れてしまいそうな絶妙な距離の中、俺は息をすることすらままならず、ただ彼女の眼の中に映る自分の情けない顔を見ていた。
「先輩、私のことを避けてはいませんか?」
そんな状況を矢式は気にもとめずに口を動かす。唇が触れてしまうかと思った。
彼女の暴挙と自分が年下の女の子に圧されているというまさかの状況、そして緊張。勿論俺は彼女の言ったことに何の反応も示せなかった。
ここ数日、彼女を避けていたことは事実である。意図的にも、そうでなくとも。
何も言わずにいる俺から、矢式は眼を離さない。俺はといえば、そんな彼女から目線をはずすことすらできなくなっていた。何もかもが彼女に籠絡され、彼女の許しがなければ何もしてはいけないのではないかという錯覚まで起こりそうだ。
「いけない。まだ先程の質問の答えを申し上げていませんでした。何故、とおっしゃいましたね。今お答えします」
前置きが長い。これは彼女の特徴でもあるのだが、結局何をしたいのだ。
「…………」
「……?」
前置きどころか今度は沈黙か。矢式は瞳に困ったような色を浮かべ、微かに身をよじった。良く考えれば、彼女も彼女で、俺に凭れかかるような体勢でありながらも、背中のチェロの重みと俺の背に合わせつま先で立っているため、きついといえばきついのだろう。
早いところ離れてくれれば良いのだが。というか、いい加減離れてくれなければ、俺がどうにかってしまいそうだ。
やがて、矢式は口を開いた。
「……私は目を瞑るべきなのでしょうか。それとも、開いたままでも?」
「…………?」
――――――何のことだ?
だから彼女の言うことは、いつも何かが欠けていて、遠回りで、言葉の優先順位というものを把握していなくて。それから――。
「……ん!?」
それから、なんてこんな状況下でそのようなことを羅列している場合ではなかった。
そもそも彼女の目の前――文字通り目の前で、彼女のことを考えて気を散らすなど、あってはならないことだったのだ。
完全に隙をつかれた。いつも彼女は、元から隙だらけな俺の、さらにその間隙を縫ってくる。
唇にはやわらかな感触。
彼女は目を開けたまま。
そして、俺も目を開けたまま。
その一瞬が何十秒にも感じられた。しかし、一瞬は一瞬だった。やがてその感触はそっと離れていく。
「な、何を、して!!」
手にしたバイオリンケースを取り落としそうになるのを寸でのところで持ちこたえ、俺は動揺たっぷりな調子で声をあげた。もう距離など気にしてはいられなかった。
矢式は元の至近距離に戻り――もう少し離れてくれれば良いものを――、そして、くすりと小さく笑った。
「何を? だから、私のことが嫌いかと聞いているのです」
だからも何も、前後の発話につながりが見られないではないか。二言三言欠けている。俺は矢式に好きか嫌いかなど、ここまでの会話の中で問われた覚えなどない。
ない、のだが。そんなことは問題ではない。
「“すき”か“きらい”か、2文字か3文字。要するに、先日の答えをもらいに来たのです」
面と向かってそんなことを問われても、何と答えたらいいのか言葉が見つからない。俺はただ彼女から目をそらすことしかできなかった。
「私としては2文字のほうが望ましいのですが、3文字であったとしてもやむを得ません。受け入れます」
彼女の澄んだ鈴の鳴るような声は、微妙な陰を持って俺の耳を突いた。いつも何を思っているか掴めない彼女だけれど、こうして耳を澄ませれば必ず聞こえてくる。俺はここ数カ月間の付き合いの中でそれを知っていた。
「……確かに」
このまま黙っていては埒があかない。俺は目をそらしたままで、重い口を開いた。
「……確かに、俺は最近君のことを避けていたかもしれない。けれど、き、きら……嫌いだなんて……」
思いきってはみたものの、また言葉に詰まってしまう。こんなことを口にするのは、恥辱に等しい。
視線を戻せば、俺を見る彼女は余裕の笑みを浮かべていた。非常に憎らしくも魅力的なその顔に一瞬息を飲む。
「はっきりしない人ですね。では、どうして避けたりするんです?」
「……君に、どう接して良いかわからないんだ」
まっすぐに俺から目を離さない矢式に、正直にそう答えるしかなかった。
しかし、口にし終えてしばらくしても、何ら言葉が返ってこない。
それどころか、これまでにないほど目を見開いて、矢式はぽかんと呆けたような表情を浮かべている。
「……?」
何故黙っているのか、そんな顔をするのか、俺には分からなかった。もしかすると、俺の小心ぶりに呆れてしまったのかもしれない。
続く沈黙。
「……あの」
俺は沈黙に耐えられず、今度こそ彼女を引き剥がすべく身動きをとろうとした。
が、しかし。それを果たすより先に、突然矢式が噴き出した。顔に彼女の吐息がかかり、若干緊張を覚える。
「先輩、そんなことを?」
そんなこと? そんなことを考えていて何が悪い。というかそんなこととは何なのだ。
言われて少し腹が立った。俺がどれだけ悩んでいたと思って――
「なっ、んんっ――――!?!?」
反論してやろうと矢式の方に口を開きかけた瞬間、再び俺を襲う衝撃。
カツンと口元でしたのは固い音。
今、何が起こっっている? 事態を上手く飲み込めない。頭が真っ白だった。
「今度は目を閉じてみました。どうです?」
俺が再び硬直状態でいると、矢式は満足げにそう聞いてきた。首を傾げて聞いてくるそんな姿が、少し可愛らしい。
「む。反応がありませんね。もしかして、嫌、ですか?」
いたずらをする子供のように愛らしい表情で、俺の眼を、何もかもを覗きこもうとしてくる矢式。
そんな顔で言われてしまったら嫌だとなんて言えはしない。いや、実際嫌だなんて思っていないのだ。
まあ、恥ずかしさやら何やらで言葉すら紡げない俺には、何も言うことなど叶わない。
「どうして何も言わないんです。仕方がありませんね」
完全に遊ばれている。そう、自覚はしているが何もすることができない俺は罪な奴だろうか。
そして、彼女は再びつま先で立って俺に唇を寄せてくる。
――そうはさせない! させはしない!! 俺は持てる力を振り絞って声を上げる。
「やめなさい。こ、こんなところ、誰かに見られたりしたら……」
しかし、俺の努力は非常に儚く、彼女の前ではその効力など無いに等しいものだった。
塞がれた唇は言葉を発することを許されない。触れた場所から言葉も、思いも、悩みも、すべてを吸い取られる。
再び距離を追いた矢式は、不敵な笑みを浮かべ俺を見上げる。
「それで。先輩は私のことを好きなのですか? 嫌いなのですか? はっきりきっちり教えてください。先輩の“音”ではなくて“言葉”で」
「…………嫌い、ではない」
「意気地なし」
「ちょっ、だから! やめろ、矢式っ!?」
再びにじり寄ってくる矢式。それに抗おうともがく臆病者の俺。
「やめられるわけがないでしょう。やめません。好き、と言ってくれるまで。何度でも」
抵抗する意志とは対照的に、湧き上がる熱に心も体も溶かされて。
俺は、彼女という檻に閉じ込められる。
固い男の子と柔らかくも掴めない女の子。そんな二人のお話でした。
その後の彼らはどうなるのでしょう。続きを書きたい気もしますが、今はひとまずここまでです。でもまあ。この先の二人なんて、容易に想像がついてしまいそうですね。
爽やかな青春もの。甘い恋愛もの。目指すはそこだったのですが、気がつけばこの仕上がり。読んだ方の思われるようにジャンル分けをしていただくのが一番なのではないかと思います。(タイトルと本編で一人称が異なっているのはわざとですので、お気になさらず)
お読みいただき、ありがとうございました!