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秩序と言う名の混沌

作者: パンター

 君は戦いのために作られた。確かにこれは確定した事象だ。君は兵器としてこの世に生まれた。

 しかし僕は思う。君は移ろい易い人間が絶対的な永遠を封じ込めるために作られたのではないのかと。

 君が人の形をしているのは、運動追従感知センサーによるアクティブ(AC)トレーサー()システム()を使い人間が遠隔操縦で君を操る為なのだが、僕はそう思わない。

 君は人の形を与えられて生まれる必然性があったからだ。この世界に。

 でなければ、君のその姿はこれ程美しい形状を与えられなかった。

 君のその姿ははギリシアの女神を模して作られたかと思ったほどだ。いいやそれ以上、本当の女神を見た設計者があらん限りの想像力を駆使して再現しようとしたのかもしれない。それを聞き出そうにも設計者であるヨアキム・クシュバーンはもういない。半自立人型戦闘機体開発の第一人者だったヨアキム・クシュバーンは人類屈指の天才であり、芸術家であったと思う。本来破壊と殺戮を目的とした兵器のデザインに高尚な芸術性は必要ないからだ。これほど美しいデザインはただの芸術品にさえ見出すことは出来ない。

 いや彼女こそが真の芸術品なのだ。

 硝煙と血にまみれた君は戦いの女神カーリーを模して作られた芸術品。戦闘芸術と呼びたい。

 戦場という混沌を生み出す君という秩序。この形而上的矛盾存在である君を愛さずにいられない。

 ああ。君を抱き締めたい。今すぐ。

 行こう、あの戦場へ。君をこの手に抱きしめるために。

 さ、い。あれ、気が遠くなる。頭が、痛い…

「錯乱した一等兵を沈黙させました、中尉殿」古参の曹長は小隊長に報告した。彼の一撃が新米の一等兵を失神させたのだ。

「ふん。このクソのおかげで我々まで発見されるところだったぞ」鼻を鳴らして小隊長は右足つま先で新兵の腹を軽く蹴った。

 ここは塹壕の中。中尉率いる小隊は軍が開発したある兵器対策用の特殊なシートの下で息を潜めていた。そのシートは敵のセンサーを撹乱するのだ。

「全くです。電磁場撹乱シートの中で暴れられてはセンサーに引っかかりますからね。あの殺戮(マーダー)乙女(メイデン)に発見されたら、お終いです」

「おれは前にもこいつのようなクソを部下にしていたが、やはりあのキラービッチにやられた。つくづくあの殺人ロボットはある種の非モテ男を惹きつけるようだな」

「ええ。私ももう少しで危なかったです。私は☓☓好きなので助かりました」

「おれはそういう趣味は分からないからさっぱり理解出来ないがな。確かにあれだけ生々しい全裸の女性を再現した敵軍の開発者の変態的才能と、それを兵器に運用しようとした敵司令官のロ◯コン趣味には驚かされる」

「そうですね。意表を突かれました。日本侵攻にまさかあんな兵器を投入してくるなんて」

「そうでもないぞ曹長。この日本へ侵攻するにこれほど恐ろしい兵器はない。日本がオタク大国だと認識しての侵攻作戦は確かに成功しつつあるからな。既に秋葉原は敵のあれに占領されてしまったからな。しかも一発の銃弾を撃つことなく降服したらしい」

「所詮は民兵ミリシャ。しかもオタクですからね」

「だがいよいよわが軍も対抗兵器の開発に成功したらしい。第一号機が来週には投入されるぞ」

「おお。それはすごい。それで中尉殿、その対抗兵器とはなんです?」

「ああ。ネ◯耳メ◯ド型アンチロイドキラー『萌女ネ式二型』というそうだ」

「…想像を絶する戦いになりそうですね、中尉殿」

「おれは想像したくもない。おれ達のような人間には悪夢のような地獄の戦場だぞ、曹長」

「ええ、生き延びて故郷に帰りたいです」

「おい!それは死亡フラグだぞ曹長!」

「え?」

 その時、空から風を切って何かが落下してくる音を二人は聞いたのだった。

 

オチは考えずに書きました。まさかこんなオチになるとは。

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