第一章 第五話 裏切り
「クソッ!何度斬っても弾かれる!」
ゴブリンにダメージは入っていたのだろうか。今度はどういう風に戦えばいいのか、そんなことを考えているとゴブリンがまた動きだした。
どのくらいの時間がたったのだろう。体感では一時間くらい戦闘をしているように感じた。
「まだ終わらないのか!」
体力のゲージみたいなものはないのかと思いながら戦っていると急にゴブリンの力が弱まった。
「いまだ!」
一瞬生まれた隙を見逃さずに俺はゴブリンの首に剣を突き刺した。
「やっと倒せたか」
ゴブリンの体から黒いもやが出るのと同時に体が消滅していった。
「珍しいアイテムがドロップしたわね」
白色に輝く宝石は無属性の魔石という物らしい。これを使えば、無属性魔法の強化ができるという。
「ユウ、どのくらい経験値貰えた?」
俺はギルドカードを確認してみた。
「えっと、八百経験値もらええて、レベルが二個あがった」
これが多いのか少ないのかは俺にはわからない。獅子の加護と知の加護がどれだけ経験値に影響しているのかまだ知らないからだ。
「異世界人だからと言って経験値が増えるとかはないみたいね」
「異世界人はやっぱり何か影響があるのか?」
「特殊アイテムがドロップしたり、経験値が増幅していたりすることが多いの。それが加護の力なのか、また別の力なのかはわからないけどね」
「異世界人の事について詳しいんだな」
「昔調べたことがあるのよ」
レナベルは何か異世界人との関係があった人なのであろうか。いつの間にか消えてしまう異世界人と結構親密な関係性を築いていたのかもしれない。
「今日はあとどのくらい冒険するんだ?」
「まだまだ行くわよ、ユウのレベルが後十くらい上がる程度にはここで冒険する予定だから」
その後、レナベルの結界を頼りにしながら三階層まで進んだ。獅子の加護の事を伝えていないので目の前で使うことができないが、それでも戦闘能力は上がってきている気がする。
「ユウって結構戦闘のセンスあるかもね。最初の冒険でこんなに早く動けるようになるなんて思ってなかったわ」
「昔から運動は得意だったし、トレーニングだけは欠かさずにやってきたからな。まさかこんな形で役に立つとは思ってなかったけどな」
俺は昔にあったとある過去を悔やんで運動をすることを決心した。
「そろそろレベル十になるくらいだぞ」
時間も結構かかってしまった。一体ずつ倒しているとはいえ、その一体に費やす時間が長すぎる。レベルは確かに上がっているが、知の加護の影響で体力と攻撃力のステータスが上がり辛い。
「ゴブリンが来たわよ」
レナベルがそう告げると同時に俺の体はゴブリンの方へ向かっていった。
スキル・ライトニングソードを獲得しました
ゴブリンを倒した後、誰かが喋りかけてきた。
「ライトニングソード?」
俺がそう呟いたのを聞いたレナベルが反応してきた。
「何かあったの?」
「いや、今スキルを獲得しましたって誰かに言われたんだけど……」
周りにはレナベル以外にいないし、レナベルには聞こえていないところからみて、脳内に直接言葉が入ってきているのだと分かった。呼び方もわからないし天の声とでも呼んでおこうか。
「え!そんなことあるの!?」
レナベルは目が飛び出そうなほどに驚いている。
「なにかあるのか?」
「あのね、昨日も少し説明したけど普通はギルドに行ってから獲得したスキルとか魔法を確認するの。だからこんなところでスキルを獲得できる何てことは絶対にないの!」
そういえば昨日ガイスのところでそんな説明を受けた気がするな。
「一応イレギュラーっぽいしギルドとかにこのことを言わないで貰ってもいいか?異世界人ってことバレたらやばいんだろ?」
「こんなこと誰にも言えるわけないじゃない!知られたらギルドから怪しまれるわ!」
レナベルはそれにと付け加えて、
「こんなこと異世界人にしかできないことよ。この世界に住む全種族がどこかしらで魔法を取得しているの。魔族ですらね」
「魔族はどうやって魔法を確認しているんだ?ギルドに来るわけにもいかないだろうし」
魔族がのうのうとギルドにきてしまえば簡単に正体がバレて捕まってしまうだろう。捕まるだけならまだしも、いざこざが起きて町ごと消されてしまう可能性すらある。
「それは私たちも欲している情報なのよ」
こんなことを今話していてもわからないものはわからないよな。
「ま、それはさておき、今日は帰るか」
「そうね」
何か悩んでいる表情をしているレナベルに俺は帰ることを提案した。ドロップしたアイテムを確認しようとした瞬間、俺の周りに魔法陣が浮かび上がった。
「残念ね。本当はあなたと仲良くしたかったわ」
「どういうことだ」
俺は起こっていることに理解ができず混乱しているとレナベルが口を開いた。
「ユウ、いえ天野悠翔。私の目的を達成するためにあなたを利用しようとしていた。でもあなたの能力は恐ろしすぎるわ。獅子の加護を持っている人間なんてこの世界に数人しかいない。それに戦いながら成長できるなんてイレギュラーな存在を放置できるわけがないわ」
何が起こっているか理解ができないが、俺に何かしようとしている事だけは分かった。
「殺すのか?」
「いえ、殺しが発覚したら私は町にいられなくなる。だからあなたをとある場所に飛ばす」
「自分の経歴に傷を付けたくないってわけだな。何があるか分からない。だからギルドにもついてこなかったのか」
「そうね、私と一緒に行動していることがバレたらあなたが死んだときに真っ先に怪しまれるからね。でも、知っているのは武器屋の親父さんだけ。あの後勝手にダンジョンに潜って帰ってこなかったとでもいえば何とでもなるわ」
「初めから俺をだましていたのか」
「いえ、さっきも言ったけど本当は仲良くするつもりだったわ。でも、あなたが思ったよりも強すぎる素質を持っていた。それだけ」
俺は言葉が出なかった。この世界に勝手に転生させられて助けてくれたと思っていた子に利用されて、すぐに殺される。またかよ。
「てか、なんで俺の獅子の加護の事を知っているんだ?」
「さぁね、どうせ死ぬんだからどうでもいいでしょ?」
さっきまでのレナベルの表情はどこに行ったのだろう。かわいらしくて天然で、でもしっかりしているかっこいい人だと思っていた。ふざけるな。
「さぁ、もういいかしら?せめてもの選別にこれをあげるわ」
レナベルは俺に小さい袋を投げつけてきた。中には微光石が少量入っていた。
「これ、もう使わなくなって捨てるのも面倒だったからあなたが処分しておいて」
俺を殺せてゴミも処分できて、自分には得しかないってか。クソが、ふざけるな、ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな。
「ふざけるなぁぁぁぁ!!」
俺はもっていた剣でレナベルに切りかかる。だが魔法陣の外に出ようとした瞬間、体に電流が走った。
「うぐっ!」
俺はもう何もできずに死んでいくのだろうと悟った。
「ははっ、はははっ、あーっははははははははははは!!!!そうかそうか、この世界もクソみたいなやつらしかいないのか!あーあ、せっかく楽しく生活できると思っていたのにな!もういいや、早く殺してくれ」
「それじゃ、転移させるね」
レナベルは詠唱を始めた。俺はもう何も考えたくなかった。異世界にきてまで騙されるなんて。もう疲れた。
「運命の糸を操りし精霊よ、我が声に答え愚者を牢へと導け。強制転移!」
すると魔法陣が勢いよく光始めた。
「あーあ、死んだな」
俺はそう呟き、光に身を包まれ転移した。
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