第一章 第三話 ガイス=レブトル
現在までの登場人物
天野悠翔:主人公
クロリア=フィル:俺を転生させた女神
レナベル=アリステラ:異世界にきて初めに出会った女性。色々と案内をしてくれた
白崎美樹:天野悠翔の彼女
俺が地図を見初めてしばらくするとレナベルが帰ってきた。
「お待たせー!ちょっと買い物してたら遅くなっちゃった!ちゃんと手続きできた?」
「あぁ。ギルドカードを作る必要があるなら先に言ってほしかったがな」
「ごめんごめん、あ、それでさユウト、ちょっとついてきてほしいんだ」
「いいけどどこに行くんだ?」
「ついてからのお楽しみ!」
俺はレナベルの後をついていくことにした。
「ところでユウト、加護は何だったの?」
「言い忘れてたが俺は冒険者名をユウ=ヘブファルに変えて登録している。元の名前だと異世界人ってバレるかもしれないだろ?」
「あ、そうなんだ、じゃあユウでいいかな?」
「あぁ。好きに呼んでくれ」
「で、加護はどうだった?」
唐突に振り向かれ目の前に顔が来たことに動揺しつつ冷静になりながら俺は答えた。
「なんでそんなに気になるんだ?」
どう考えても怪しすぎる。さっき会った時にも加護の事を聞いてきたし何か悪だくみを考えているのか?
「異世界からくる人は珍しい加護を持っている場合があるんだって、ただそれが気になっただけ」
俺は少し迷ったが面倒ごとには巻き込まれたくないので、
「光の加護、食の加護の二つだ」
と嘘をついた。別に嘘をつく必要はないのかもしれないがどうしてかそれが正解なのだと感じた。
一瞬レナベルが考えこんで俺に問いかける。
「しょくの加護?なんの力があるの?」
「なんか料理が上手くなるらしい」
「何それ!めっちゃ面白いじゃん!」
レナベルは腹を抱えるほど大爆笑した。
「アハハハ!ひー、おなか痛い!じゃあ、外れの人だね」
嘘をついていたとはいえ、唐突な外れ枠宣言にイラっと来たが大人な対応を取ることにした。
「なぁ、レナベル、急に外れって言われると俺もショックがすごいんだが説明してもらえるか?」
レナベルは収まりそうもない笑いを我慢しながら俺に言った。
「さっき、異世界人が魔族に目を付けられるって言ったでしょう?それは強い人だけなの。戦闘向きでない異世界人は狙われることすらないわ」
そういうことだったのか、なら嘘をついて正解だったのかもな。正直加護を選んだ時戦闘ができなければ意味がないと思って光の加護と獅子の加護を貰ったからな。
「なるほどな、じゃあ俺は狙われる心配がないってわけだ」
「そういうこと!あー、面白かったわ」
「急に外れとか言われて俺はイラっとしたがな」
おっと、つい心の声が漏れてしまった。
「ごめんって、そんなつもりじゃなかったんだ、あ、目的の場所に着いたよ」
そう言われ着いた場所は武器屋だった。
「さっき笑ったお詫びってことでここで何か買ってあげるわ」
中に入るとスキンヘッドのいかついおっさんがそこにはいた。
「ここってヤクザか何かがやっている店なのか?」
「やくざ?何かわからないけどここの店のオーナーは元冒険者よ」
「あー、道理で貫録のある見た目をしているわけだ」
無知な俺をここに連れてきて金銭巻き上げようなんて魂胆じゃなくてよかった……。
「よう、いらっしゃい」
「こんにちは、この人に見合う武器を見繕ってほしいの」
「それは構わないが、兄ちゃん、武器は何を使うんだ?」
「武器?」
「この人は冒険者になりたてだからあんまりわかっていないのよ、戦闘向きの加護は光の加護らしいわ」
「おぉ、光の加護か、いいもん持ってんじゃねぇか。光の加護なら剣か短剣がオススメだな」
魔物と戦うなら武器は必須だし、軽くて扱いやすい武器がいいな。
「そうだな、なら剣がいいな、軽くてあんまり邪魔にならない程度の大きさで頼む」
「任せときな、兄ちゃん、名前は?」
「ユウ=ヘブファルだ」
「俺はガイス=レブルトだ」
「よろしくな、ガイス」
「あいよ」
そういうとガイスは店の奥にある倉庫に向かっていった。顔はアレたが、凄くいい人だと感じた。
「レナベルはこの店によく来るのか?」
「いいえ、私はいろいろな武器屋を回って装備を集めているわ。ここは最近噂になっていたから来てみたかったの」
「そうなんだな、まぁ、見た目はあれだがいい人そうだったな」
レナベルはそうねと言った後店内を見て回っていた。とは言ってもそこまで大きい店ではないので店内の武器を細かく見ているだけだが。
「ふーん、結構いい武器を作っているじゃない」
「そうなのか?」
俺は武器なんてものは見たこともないし触ったこともない。何がいいかなんて全く分からないのだ。
「うわっ重いなこれ」
俺が手にしたのは大きく長い大剣と呼ばれる物だった。剣を置いたあと、俺は近くに合った防具を手に取ってみた。
「こんなに重い防具を着ながらあんな大剣を振り回している連中がいるのかよ……」
俺のステータスはレベル一で力も体力もないため、そんなことができるはずもなかった。
「ちなみにレナベルはどんな武器を使っているんだ?」
「私は杖を使っているわ」
「杖?」
「そう、私は魔法専門なのよ」
「魔法専門?補助的に使うだけじゃないのか?」
「魔法に関してもよくわかっていないのね、いいわ、レナベルお姉さんが教えてあげよう」
「俺より年下に見えるが……」
「失敬ね、私はこれでも十七よ!」
「残念、俺は十八だ」
「よく聞きなさいよ、まず魔法はね……」
「無視かよ」
レナベルが説明するにはこうだった。
この世界には空気中にマナがあり、それを体や武器に取り込んで魔法を発生させる。ただ、例外的にマナを使わない無属性魔法があるとのこと。この魔法の取得方法は明らかになっていないらしい。魔法を発動するときには詠唱が必要で、詠唱は魔法を取得した際にギルドカードに表示されるが、ギルドにて更新を行わないとみることはできないらしい。ちなみに俺はまだ何も魔法を取得していなかったが、獅子の咆哮というスキルがあった。
「ってな感じかな、ユウはまだ魔法を持っていないみたいだけど、しばらくモンスターと戦ってたらそのうち手に入るから気にしなくていいよ」
そうは言われたが、俺も男だ。早く魔法を使ってみたい。
「おう、兄ちゃん、この武器なんてどうだ?」
手渡された剣は腰から下げれば剣先が地面につく程度の大きさでとても軽かった。
「この剣はな、魔法の伝導率がすごくいいんだ」
そう言ったガイスは清々しいほどのどや顔をしていた。
「この剣はガイスが打ったのか?」
「ああそうだぜ、俺にとっては自慢の作品なんだがな、軽すぎて使いにくいって理由で買い手がつかなかったんだ。だから兄ちゃんが来てくれて助かったぜ」
「こっちこそ、駆け出し冒険者にこんな一級品を持たせてくれてありがとうな」
「ちなみに金額の方も一級品だぜ」
ガイスはいやらしい顔をしてにっこりと笑う。
「まけることは?」
「もう一回だけ言うぜ、金額も一級品だ」
俺はレナベルの方を見た。
「ま、買ってあげるって言ったし、しょうがないわね」
「金貨三十枚だ」
レナベルは財布と思わしきポーチを取り出して中身を見た後少しため息をついた。
「ねぇユウ、明日から一緒に冒険に行かない?」
俺にとってはとてつもなくありがたい申し出だった。
「俺はいいけどレナベルはいいのか?俺と一緒だと足手まといにならないか?」
「私が誘ってるんだからいいの!それともユウはいや?」
軽い上目遣いで言われたら男として誘いを断るわけにはいかなかった。
「わかった、俺はできるだけ足を引っ張らないように動くが、何かあったら助けてくれ」
「もちろんよ」
レナベルはウインクをしながら上機嫌に店を出ようとしていた。
「ガイス、ありがとうな。また来る」
「おうよ、武器のメンテナンスとかもやってるから気が向いたらいつでも来いよ。ま、金をためてからの話だがな」
ガイスはガハハと笑って俺たちを見送った。
「レナベル、高かったのにすまないな」
「いいのよ、でも、その分一緒に働いてね」
「できる限りのことはする」
「そういえばさ、今日泊まる宿はどうするの?」
俺はこっちに来たばかりで金が一銭たりともない。
「今日は野宿だな」
「また命を無駄にするような行動ね、いいわ、今日だけ私の家に泊めてあげる」
「それはできない。さすがに今日ここに来たばかりで知らない人の家にはあがれない」
「知らない人って何よ、てか今日私の家に来たじゃない」
そうだった。俺は昼間にレナベルの家に半ば強制的に入ったんだった。
「どうしてもいやなら私が宿代出すけど、明日から中級冒険者が入るようなダンジョンに潜らせるわよ」
「わかった、好意は受け取ろう。レナベルは俺を家に入れることに不安はないのか?」
「え?あなたから手を出して来たら吹っ飛ばすだけよ?」
レナベルは光のない瞳と杖を俺に向けながらにっこりと笑う。
「わかった、俺もそのつもりはないしついて行かせてもらう」
昼間通った道を歩き、レナベルの家に到着した。
「ちょっと散らかってるけど、まぁ、気にしないでね」
昼間は急なことで問い詰められてたし全く気が付かなかったが、とてつもなく綺麗な家だ。そして女の子のいいにおいがする。
「変なことは考えないでね?」
また光のない瞳と杖を突きつけられた。今度は詠唱を始めるんじゃないかと思うほどに殺気が伝わってきた。
「さて、冗談はこのくらいにして……」
冗談だったのかよ、少しビビったぞ。
「ユウは何か食べれないものはある?」
「いや、とくにはないが……って料理まで作ってくれるのか?」
「えぇ、いいわよ」
レナベルには頭が上がらないな。武器を買ってもらって、家にまで泊めてもらう。しかも料理まで作ってくれるとは、異世界恐るべし。
「じゃ、適当に作るね」
レナベルの作る料理はとてもおいしかった。正直日本の食材では出せないのではないかというレベルの味だった。
「ごちそうさまでした」
ここまで至れり尽くせりだった俺はさすがにということで皿洗いをした。
「あ、そういえば荷物玄関に置きっぱなしでしょ?ここら辺に適当に置いておいていいわよ」
レナベルの言われた通り俺は部屋の入口から一番遠い角に置かせてもらうことにした。
その後お風呂を借り、就寝するときにとあることに気が付いた。
「あれ、ここ俺が泊まれるスペースなくない?」
二階は三部屋あるが、二部屋は泊まれるスペースがなく、残りの一部屋はレナベルの寝室だった。
「あのー、レナベルさん?俺はどこに泊まればいいですか?」
「あー、そういえば大体の部屋が物置になってるから泊まれるところがないわね。私の部屋で一緒に寝る?」
「いやいや、そんなことはさすがにできない。俺はこの部屋で寝るから気にしないでくれ」
「そう?私はいいけど……」
「襲われても文句を言わないなら一緒に寝るが、それでもいいのか?」
「んー、無理かな」
俺は自分で言っておきながら相当なショックを受けた。そんなに即答しなくても……
「それじゃ、おやすみなさい」
レナベルがそう言って二階に上がっていく。俺は自分の荷物を枕にして眠りにつくことにした。
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