表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カオル21歳 ~風と旅する頃~  作者: あやの ちゆ
<第8章> ~「死」は、すぐそこに~
8/10

「生きている」ことの疼きを感じ取るー 風が吹く頃、何かが変わり、自分を生きる。 自由に生きて、自分を許す、 そんなメッセージが誰かにそっと届きますように。 「カオル21歳~風と旅する頃~」第8章を公開

「生きている」ことの疼うずきを全細胞で感じ取るー

風が吹く頃、何かが変わり、自分を生きる。

自由に生きて、世界を知って、自分を知る、そして自分を許すこと、

そんなメッセージが、今週も誰かにそっと届きますように。

「カオル21歳~風と旅する頃~」第8章を公開いたします。

 第8章

 ~「死」は、すぐそこに~



 その後の記憶が、ぱったり途切れている。

 フィルムがそこでスパッと切れたみたいに。


 後で聞いた話では―—

 エストレージャ・ダムを五本、さらにマオウを3本飲み干したらしい。

 全く覚えていない。


 チエコによると、あたしは彼女に抱きついて、ワンワン泣いたそうだ。

 涙と鼻水で、チエコのプラダの黒いシャツをビチャビチャにしたらしい。

 リュウくんがタクシーに乗せようとした時、彼の頭を平手で叩き、バッグを振り回して向こう脛を蹴っ飛ばした。しかも、悪態まで。


「なにすんだよ!はなせ、ボケ!」

「もっと金稼いで来い!」

「お前はチエコのヒモだろ!金稼いで来い!」


 タクシー乗り場で吐きまくり、リュウくんの足の上にもぶちまけた、と。

 チエコとリュウくん2人は終電に間に合わなかった。

 あたしは何も覚えていない。


 友情は、危うく終わりかけた。

 でも、リュウくんはいい人だった。本当にやさしい、いい人だった。


 あたしの暴言にも暴力にも、顔色一つ変えず、能面のように無表情だったらしい。おかげで、友情は続いた。


「クリーニング代払ってよね。あとタクシー代」


「はい、来週までにお支払い致します」


 後日、チエコと会った時、さんざん説教された。


「今日のコーヒー代もお支払い致します」


「サンキュー。チョコレートサンデーも追加するわ」


「どうぞどうぞ」


 あたしは、ひたすらうつむいていた。


「世界放浪、本気なんだね。300万円早く貯まるといいね」


 チエコは煙草の煙をふ〜っと吐き出した。




 世の中ではよく言う。

「お金もらってるんだから、我慢しなくちゃ」

「仕事なんて嫌なもんだ。給料はガマン料だ」


 あたしはそう思わない。


 好きなことして、楽しんで、お金ももらえる。

 こんなハッピーなことはない。



 人は、誰でもいつか死ぬ。

 いつ死ぬかなんて、誰にも分からない。


 明日、車に跳ねられるかもしれない。

 来週、通り魔に刺されるかもしれない。

 来月、地震で生き埋めになるかもしれない。


 もしかしたら、今この瞬間も癌細胞が増殖していて、4ヶ月後には死ぬかもしれない。




 あたしは、20代で既に「死」を身近に感じている。

 理由は分からない。でも、確かに感じている。


 だから、何でもやりたい。

 思うように生きたい。

 死ぬ瞬間に後悔したくない。

 後悔は大キライだ。


「あぁ、もういいや。満足」


 そう思いながら死にたい。

 あたしは、いつもそう思いながら生きている。




 自由に生きることは、世間では親不孝と言われるかもしれない。

 でも、仕方ない。

 家族と噛み合わないことは、よくあること。


 そのことで傷つく人もいれば、受け流しながら自分の道を探す人もいる。


 両親と何一つ噛み合わない。

 面倒だから、表面的にだけうまくやるしかない。


 嘘をつき、騙し、要領よくすり抜ける。

 罪悪感なんてない。

 それも仕方がないこと。




 あたしの人生には、特別な不幸はない。

 両親の仲が悪いわけでもなく、お金に困ったこともない。

 勉強ができない、運動が苦手、不細工でいじめられた、そんなこともない。欲しいものが手に入らなかったこともない。


 それでも、家族とは噛み合わない。

 家族は苦手。

 居心地が悪い場所。

 仕方がない。

 人間だから—




 —第9章へ続く―

 毎週土曜日の風にのせて、カオルの物語をお届けします。

 旅の続きをどうぞお楽しみください。


 noteにて同日公開

 https://note.com/ayanochiyu/m/mb90e54b0da1d


—第9章へ続く―

 毎週土曜日の風にのせて、カオルの物語をお届けします。

 旅の続きをどうぞお楽しみください。


 noteにて同日公開

 https://note.com/ayanochiyu/m/mb90e54b0da1d

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ