「生きている」ことの疼きを感じ取るー 風が吹く頃、何かが変わり、自分を生きる。 自由に生きて、自分を許す、 そんなメッセージが誰かにそっと届きますように。 「カオル21歳~風と旅する頃~」第8章を公開
「生きている」ことの疼うずきを全細胞で感じ取るー
風が吹く頃、何かが変わり、自分を生きる。
自由に生きて、世界を知って、自分を知る、そして自分を許すこと、
そんなメッセージが、今週も誰かにそっと届きますように。
「カオル21歳~風と旅する頃~」第8章を公開いたします。
第8章
~「死」は、すぐそこに~
その後の記憶が、ぱったり途切れている。
フィルムがそこでスパッと切れたみたいに。
後で聞いた話では―—
エストレージャ・ダムを五本、さらにマオウを3本飲み干したらしい。
全く覚えていない。
チエコによると、あたしは彼女に抱きついて、ワンワン泣いたそうだ。
涙と鼻水で、チエコのプラダの黒いシャツをビチャビチャにしたらしい。
リュウくんがタクシーに乗せようとした時、彼の頭を平手で叩き、バッグを振り回して向こう脛を蹴っ飛ばした。しかも、悪態まで。
「なにすんだよ!はなせ、ボケ!」
「もっと金稼いで来い!」
「お前はチエコのヒモだろ!金稼いで来い!」
タクシー乗り場で吐きまくり、リュウくんの足の上にもぶちまけた、と。
チエコとリュウくん2人は終電に間に合わなかった。
あたしは何も覚えていない。
友情は、危うく終わりかけた。
でも、リュウくんはいい人だった。本当にやさしい、いい人だった。
あたしの暴言にも暴力にも、顔色一つ変えず、能面のように無表情だったらしい。おかげで、友情は続いた。
「クリーニング代払ってよね。あとタクシー代」
「はい、来週までにお支払い致します」
後日、チエコと会った時、さんざん説教された。
「今日のコーヒー代もお支払い致します」
「サンキュー。チョコレートサンデーも追加するわ」
「どうぞどうぞ」
あたしは、ひたすらうつむいていた。
「世界放浪、本気なんだね。300万円早く貯まるといいね」
チエコは煙草の煙をふ〜っと吐き出した。
世の中ではよく言う。
「お金もらってるんだから、我慢しなくちゃ」
「仕事なんて嫌なもんだ。給料はガマン料だ」
あたしはそう思わない。
好きなことして、楽しんで、お金ももらえる。
こんなハッピーなことはない。
人は、誰でもいつか死ぬ。
いつ死ぬかなんて、誰にも分からない。
明日、車に跳ねられるかもしれない。
来週、通り魔に刺されるかもしれない。
来月、地震で生き埋めになるかもしれない。
もしかしたら、今この瞬間も癌細胞が増殖していて、4ヶ月後には死ぬかもしれない。
あたしは、20代で既に「死」を身近に感じている。
理由は分からない。でも、確かに感じている。
だから、何でもやりたい。
思うように生きたい。
死ぬ瞬間に後悔したくない。
後悔は大キライだ。
「あぁ、もういいや。満足」
そう思いながら死にたい。
あたしは、いつもそう思いながら生きている。
自由に生きることは、世間では親不孝と言われるかもしれない。
でも、仕方ない。
家族と噛み合わないことは、よくあること。
そのことで傷つく人もいれば、受け流しながら自分の道を探す人もいる。
両親と何一つ噛み合わない。
面倒だから、表面的にだけうまくやるしかない。
嘘をつき、騙し、要領よくすり抜ける。
罪悪感なんてない。
それも仕方がないこと。
あたしの人生には、特別な不幸はない。
両親の仲が悪いわけでもなく、お金に困ったこともない。
勉強ができない、運動が苦手、不細工でいじめられた、そんなこともない。欲しいものが手に入らなかったこともない。
それでも、家族とは噛み合わない。
家族は苦手。
居心地が悪い場所。
仕方がない。
人間だから—
—第9章へ続く―
毎週土曜日の風にのせて、カオルの物語をお届けします。
旅の続きをどうぞお楽しみください。
noteにて同日公開
https://note.com/ayanochiyu/m/mb90e54b0da1d
—第9章へ続く―
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