全てが偽物に見えた時、真実の「自由」が目の前にー「大人ってなに?」「シアワセってなに?」自由に生きようとするカオルとともに、当たり前の日常をひっくり返してみませんか?
全てが偽物に見えた時、真実の「自由」が目の前に合ったー
「大人ってなに?」「シアワセってなに?」自由に生きようとするカオルとともに、当たり前の日常をひっくり返してみませんか?
今週も明るい風が吹き抜けるように、心が軽くなるはず。
「カオル21歳~風と旅する頃~」第7章を公開いたします。
<第7章> ~オトナへの道~
日曜日の朝。昼近くに目が覚めた。土曜の夜は大学の友だちと遅くまで飲んでしまった。
チエコ、そして彼女が連れてきたリュウくん。
3人で悪ノリして飲みすぎた。
目が覚めた瞬間、頭が割れそうに痛い。
—— これが「二日酔い」ってやつか。妙に感慨深い。
21歳。二日酔いも経験して、オトナになったんだな、と。
耐えきれず、バファリンを探す。四つん這いで這っていって、薬箱を探す。冷蔵庫から水を取り出し飲もうとしたら―、ツルッ。白い粒が転がっていった。
「イタタタ」
頭を押さえ、冷蔵庫の横に落ちた白い粒を拾って飲み込んだ。
そのままキッチンの床に大の字に。
冷たいフローリングが気持ちよかった。
チエコとは同じクラス。電車で何度も一緒になり、話すようになった。
身長174センチ。細身、手足が長い、かなり人目を引く。
ちょっと過激で、親の前で「いい子ぶる」なんてしない。
媚びない。
お世辞も言わない。
ロンドンのロッカーみたいな服装で、いつも注目の的。
リュウくんは、売れないクラシックのバイオリニスト。
生活できないから、チエコが養っている。彼女はモデルのバイトで荒稼ぎしている。
リュウくんは去年スペインから帰国。オーケストラに就職したけど、協調性ゼロでクビ。
今は子供に教えたり、友だちのリサイタルに呼ばれたり、スタジオ演奏に参加したり。でも、ケンカして帰ってくることもある。
一見おとなしそうだけど、常に静かに戦いながら生きている。
その危うさが、チエコにはたまらないらしい。
チエコは、リュウくんに夢中。
「尽くして、ボロボロになりたいの」
そう言って笑う。
「どうぞ、ボロボロになってください」
昨日、ビールを飲みながら言った。
リュウくんの知り合いのお店で、スペイン産のビールを飲んだ。
エストレージャ・ダム、すっきりした味で、まさしく「麦」「穀物」の風味。
「あんたみたいな女には分からないわよ、この気持ちは」
長い髪を掻き上げながら、チエコはあたしを憐れむように笑った。
美人は何をしてもサマになる。
「絵のモデル続けてるの?」
「うん」
「その人ってゲイじゃないの?」
「そう思ったこともあったけど、そうでもないみたい。どっちでもいいし」
「アンタに色気がないのかもしれないしね」
あたしは空を見つめ、ビールを一口飲み込んだ。
「そこまでお金貯めて、何するの?」
煙をプカーッと吐きながらチエコが聞いた。
「300万円たまったら放浪の旅に出るの。何度も言ったでしょ」
「高校時代のカレが南米に行っちゃったってヤツ?追いかけるのね」
チエコの頭を無言で小突いた。リュウくんは、ただ笑っていた。
「今は恋人いないの?」
「別に必要じゃない」
「かわいそう。愛する人がいないなんて。そう思わない、リュウ?」
リュウくんは髪を撫で上げ、あたしを見て笑う。
「必要ないの」
「どういう意味?」
「特定の相手はいらないってこと」
2人は怪訝そうに、あたしを覗きこんだ。
チエコが目を輝かせて、
「不特定ならいいの?」
マシンガンのように質問を浴びせる。
詳しくは語らなかったけれど、あたしはいつもこう思っている。
人生は一回きり。世界は広い。
たくさんの人が生きている。
あたしは、出会いたい。
たくさんの人と出会いたい。
話して、見つめて、愛して、愛されたい。
たくさんのことを知りたい。
もっともっと、知りたい。
世界を知れば、自分が見えてくる。
自分が見えてくると、人が見えてくる。
人は誰でも、自分を知った気になっている。
でも、何一つ知らない。
自分が無知であることを認識しなくちゃいけない。
「無知の知」—ソクラテスの言葉だ。
みんな錯覚しているだけ。
だからこそ、
あたしは無知だからこそ、
たくさんの人生の断片に触れてみたい。
あたしは、まだ何も知らない。
だから、触れたいー
たくさんの人を、愛したい。
—第8章へ続く―
毎週土曜日の風にのせて、カオルの物語をお届けします。
旅の続きをどうぞお楽しみください。
noteにて同日公開
https://note.com/ayanochiyu/m/mb90e54b0da1d
—第8章へ続く―
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