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カオル21歳 ~風と旅する頃~  作者: あやの ちゆ
<第7章> ~オトナへの道~
7/10

全てが偽物に見えた時、真実の「自由」が目の前にー「大人ってなに?」「シアワセってなに?」自由に生きようとするカオルとともに、当たり前の日常をひっくり返してみませんか?

全てが偽物に見えた時、真実の「自由」が目の前に合ったー

「大人ってなに?」「シアワセってなに?」自由に生きようとするカオルとともに、当たり前の日常をひっくり返してみませんか?

今週も明るい風が吹き抜けるように、心が軽くなるはず。

「カオル21歳~風と旅する頃~」第7章を公開いたします。

<第7章> ~オトナへの道~



 日曜日の朝。昼近くに目が覚めた。土曜の夜は大学の友だちと遅くまで飲んでしまった。

 チエコ、そして彼女が連れてきたリュウくん。

 3人で悪ノリして飲みすぎた。


 目が覚めた瞬間、頭が割れそうに痛い。


 —— これが「二日酔い」ってやつか。妙に感慨深い。

 21歳。二日酔いも経験して、オトナになったんだな、と。


 耐えきれず、バファリンを探す。四つん這いで這っていって、薬箱を探す。冷蔵庫から水を取り出し飲もうとしたら―、ツルッ。白い粒が転がっていった。 


「イタタタ」


 頭を押さえ、冷蔵庫の横に落ちた白い粒を拾って飲み込んだ。

 そのままキッチンの床に大の字に。

 冷たいフローリングが気持ちよかった。




 チエコとは同じクラス。電車で何度も一緒になり、話すようになった。

 身長174センチ。細身、手足が長い、かなり人目を引く。

 ちょっと過激で、親の前で「いい子ぶる」なんてしない。

 媚びない。

 お世辞も言わない。

 ロンドンのロッカーみたいな服装で、いつも注目の的。


 リュウくんは、売れないクラシックのバイオリニスト。

 生活できないから、チエコが養っている。彼女はモデルのバイトで荒稼ぎしている。



 リュウくんは去年スペインから帰国。オーケストラに就職したけど、協調性ゼロでクビ。

 今は子供に教えたり、友だちのリサイタルに呼ばれたり、スタジオ演奏に参加したり。でも、ケンカして帰ってくることもある。

 一見おとなしそうだけど、常に静かに戦いながら生きている。

 その危うさが、チエコにはたまらないらしい。


 チエコは、リュウくんに夢中。

「尽くして、ボロボロになりたいの」

 そう言って笑う。


「どうぞ、ボロボロになってください」


 昨日、ビールを飲みながら言った。

 リュウくんの知り合いのお店で、スペイン産のビールを飲んだ。

 エストレージャ・ダム、すっきりした味で、まさしく「麦」「穀物」の風味。




「あんたみたいな女には分からないわよ、この気持ちは」


 長い髪を掻き上げながら、チエコはあたしを憐れむように笑った。

 美人は何をしてもサマになる。


「絵のモデル続けてるの?」


「うん」


「その人ってゲイじゃないの?」


「そう思ったこともあったけど、そうでもないみたい。どっちでもいいし」


「アンタに色気がないのかもしれないしね」


 あたしは空を見つめ、ビールを一口飲み込んだ。


「そこまでお金貯めて、何するの?」


 煙をプカーッと吐きながらチエコが聞いた。


「300万円たまったら放浪の旅に出るの。何度も言ったでしょ」


「高校時代のカレが南米に行っちゃったってヤツ?追いかけるのね」


 チエコの頭を無言で小突いた。リュウくんは、ただ笑っていた。




「今は恋人いないの?」


「別に必要じゃない」


「かわいそう。愛する人がいないなんて。そう思わない、リュウ?」


 リュウくんは髪を撫で上げ、あたしを見て笑う。


「必要ないの」


「どういう意味?」


「特定の相手はいらないってこと」


 2人は怪訝そうに、あたしを覗きこんだ。




 チエコが目を輝かせて、

「不特定ならいいの?」

 マシンガンのように質問を浴びせる。

 詳しくは語らなかったけれど、あたしはいつもこう思っている。


 人生は一回きり。世界は広い。

 たくさんの人が生きている。


 あたしは、出会いたい。

 たくさんの人と出会いたい。

 話して、見つめて、愛して、愛されたい。


 たくさんのことを知りたい。

 もっともっと、知りたい。

 世界を知れば、自分が見えてくる。

 自分が見えてくると、人が見えてくる。


 人は誰でも、自分を知った気になっている。

 でも、何一つ知らない。

 自分が無知であることを認識しなくちゃいけない。

「無知の知」—ソクラテスの言葉だ。




 みんな錯覚しているだけ。

 だからこそ、

 あたしは無知だからこそ、

 たくさんの人生の断片に触れてみたい。




 あたしは、まだ何も知らない。

 だから、触れたいー


 たくさんの人を、愛したい。




 —第8章へ続く―

 毎週土曜日の風にのせて、カオルの物語をお届けします。

 旅の続きをどうぞお楽しみください。


noteにて同日公開

 https://note.com/ayanochiyu/m/mb90e54b0da1d


—第8章へ続く―

 毎週土曜日の風にのせて、カオルの物語をお届けします。

 旅の続きをどうぞお楽しみください。


noteにて同日公開

 https://note.com/ayanochiyu/m/mb90e54b0da1d

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